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第十二章 航空自衛隊 百里基地

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 採寸が終わって少しすると香澄さんは帰った。どうやら彼女は幕張に帰ったらすぐに私の衣装の仕立てを始めるようだ。来週から私がその衣装を着るのだから当然といえば当然なのだけれど。
「あの子もいい子ねぇ。コレ見てよ」
 母はそう言うと香澄さんの持ってきた手土産の袋からお菓子と和柄の化粧ポーチを取り出した。その化粧ポーチはまるで成人式の振り袖みたいな見た目をしていた。地味すぎず派手すぎず。そんな彼女のセンスそのものみたいな柄に見える。
「何か気を遣わせちゃったみたいだね……」
 私は化粧ポーチを母から受け取るとその手触りを確かめるみたいに軽く撫でてみた。さわり心地は思いのほかざらざらと指先に引っかかる。どうやらこれは普通の生地ではないようだ。
「それきっと正絹よ」
「しょうけん?」
「そう。上質な絹……。まぁシルク製ってことね」
 母はそう言うと私に化粧ポーチを返すように催促した。私はそのまま化粧ポーチを母に返す。
「買ったら結構高いんじゃないかな? 知ってるでしょ? 絹って物によっては車より高いんだから」
 それから母はその化粧ポーチを点検するみたいにジッパーを開けて、中の仕切りに指を滑り込ませた。そして「ん?」と少し驚いたような声を出すと中から折りたたまれたピンク色の便せんを取り出す。
「何か入ってるね」
 母はそう言うとその便せんを広げた。そして一通り目を通すとそれを私に差し出す。
「何?」
「いいから見てみなさい」
 私は母に促されるまま便せんを受け取るとその中身に目を通した。そこには『聖那さんのお母様へ 化粧ポーチ作ってみました。拙い品ですが良ければ使ってください』と書かれていた。実に香澄さんらしい実直な手紙だ。必要以上のことはしない。そんな彼女の人柄が表れているように感じる。
「鹿島さんって……。なんか奥ゆかしい子ね」
 不意に母がそう呟いた。私はそれに対して「だね」と軽く返した。実際、香澄さんはかなり奥ゆかしい女の子なのだ。大和撫子を絵に描いたような少女。素直にそう思う。
「……本当にエレメンタルの子たちってみんないい子だよね。香取さんは礼儀正しいし、春日さんも地頭良さそうな子よね」
 母はそう言うと化粧ポーチをソッとキャビネットの中にしまった。……って待って待って! お母さん今何て言った? エレメンタルの子たちって言わなかった? なんでそのこと知ってるの……。と私は二秒ほど混乱した。
 どう思い返しても母に魔法少女のことは愚かアルバイト先の名前さえ教えた覚えがないのだ。まぁ……。その口ぶりから察するに母は何もかも知ってるみたいだったのだけれど。
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