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第十一章 成田国際空港 北ウイング
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それから程なくして私たちは撮影現場に戻った。そして室内での会話シーンと私と椎名さんとの戦闘シーンの撮影が行われた。今回は天音ちゃんとバネちゃんのシーンは少ない。まぁ……。それは『アポカリプティックガールズ~終末魔法少女~』という作品のシナリオ的な問題なのだけれど。
作中で私と椎名さんの演じるキャラクターは幼なじみという設定なのだ。だから映像だけで見た人からすればかなり仲良しに見えると思う。ちなみに天音ちゃんとバネちゃんの役はライバル兼戦友のような関係のキャラクターだ。コレに関してはリアルでも同じようなものだと思う。
撮影中。私は自分でも珍しいぐらい多くNGを出した。台詞の間違いや立ち位置のミス。さらには衣装の乱れまで。ありとあらゆる理由で撮り直しになった。普段ならこうはならないのだ。もちろんNGを出すことだってあるけれど、ここまで連発するのはかなり希有なことだと思う。
「諏訪ちゃーん。勘弁してよ」
六回目のNGを出したとき。助監督にそう文句を言われた。
「すいません。次は決めます」
「本当に頼むよ」
助監督はため息交じりに言うと監督に目配せした。次は失敗できない。自ずとそんな緊張を覚える。
「あの……。一旦休憩入れません? 私も喉が渇いちゃって」
不意に椎名さんがそう口を挟んだ。そして「諏訪さんも一旦リセットしてからの方がやりやすいでしょうし」と続ける。
「そう? 椎名さんがそう言うなら……」
助監督はそう答えると「じゃあ一〇分休憩入りまーす」と叫んだ。どうやら椎名さんに助け船を出させてしまったらしい――。
休憩中。私は台詞の読み込みとイメージトレーニングに時間を割いた。流石にこれ以上NGを出すわけにもいかないのだ。それに……。もし時間が押してしまったら食事会も流れてしまうかも知れない。天音ちゃんの気持ちを無碍にしてしまうかも。そう思うと自然と手が震えた。天音ちゃんの気持ちだけは裏切りたくない。本心でそう思う。
簡単なシーンじゃないか。何をこんなにミスるんだ? これ以上失敗したら次の仕事貰えないかも……。そんな思考が脳内を駆け巡った。まぁ、どんなに苦悶したところで次成功するとは限らないのだけれど。
「諏訪さん」
私がそうやって必死に台詞読みを反復していると椎名さんに声を掛けられた。
「は、はい。あ、ごめんなさい。次は決めます」
「いや……。まぁそうだね。次で決めてくれた方がいいけど。でもそんなに気負わなくても大丈夫だよ? あの助監督には釘刺してきたからもう言われないだろうし」
椎名さんはそう言うと助監督に視線を送った。彼女の視線の先には助監督と白峰さんがいて、何やら白峰さんが助監督を詰めているように見える。
「私ね。自分が偉いと勘違いしてる奴が大嫌いなんだ」
椎名さんは声のトーンを変えることなくそう言った。
「へ?」
「あの男はそういうタイプみたいだからね。その証拠に天沢さんと私にはあんま文句言わないでしょ? まぁ……。天沢さんはそもそも卒がないからってものあるだろうけど。たぶんアイツ自分より下に見た奴には強く出るタイプなんじゃない? ほんと、死ねばいいのに」
椎名さんはずっと穏やかな口調そう言うと今度は口元を緩めた。そして「アイツはアメリカまで来れないだろうね」と付け加えた――。
作中で私と椎名さんの演じるキャラクターは幼なじみという設定なのだ。だから映像だけで見た人からすればかなり仲良しに見えると思う。ちなみに天音ちゃんとバネちゃんの役はライバル兼戦友のような関係のキャラクターだ。コレに関してはリアルでも同じようなものだと思う。
撮影中。私は自分でも珍しいぐらい多くNGを出した。台詞の間違いや立ち位置のミス。さらには衣装の乱れまで。ありとあらゆる理由で撮り直しになった。普段ならこうはならないのだ。もちろんNGを出すことだってあるけれど、ここまで連発するのはかなり希有なことだと思う。
「諏訪ちゃーん。勘弁してよ」
六回目のNGを出したとき。助監督にそう文句を言われた。
「すいません。次は決めます」
「本当に頼むよ」
助監督はため息交じりに言うと監督に目配せした。次は失敗できない。自ずとそんな緊張を覚える。
「あの……。一旦休憩入れません? 私も喉が渇いちゃって」
不意に椎名さんがそう口を挟んだ。そして「諏訪さんも一旦リセットしてからの方がやりやすいでしょうし」と続ける。
「そう? 椎名さんがそう言うなら……」
助監督はそう答えると「じゃあ一〇分休憩入りまーす」と叫んだ。どうやら椎名さんに助け船を出させてしまったらしい――。
休憩中。私は台詞の読み込みとイメージトレーニングに時間を割いた。流石にこれ以上NGを出すわけにもいかないのだ。それに……。もし時間が押してしまったら食事会も流れてしまうかも知れない。天音ちゃんの気持ちを無碍にしてしまうかも。そう思うと自然と手が震えた。天音ちゃんの気持ちだけは裏切りたくない。本心でそう思う。
簡単なシーンじゃないか。何をこんなにミスるんだ? これ以上失敗したら次の仕事貰えないかも……。そんな思考が脳内を駆け巡った。まぁ、どんなに苦悶したところで次成功するとは限らないのだけれど。
「諏訪さん」
私がそうやって必死に台詞読みを反復していると椎名さんに声を掛けられた。
「は、はい。あ、ごめんなさい。次は決めます」
「いや……。まぁそうだね。次で決めてくれた方がいいけど。でもそんなに気負わなくても大丈夫だよ? あの助監督には釘刺してきたからもう言われないだろうし」
椎名さんはそう言うと助監督に視線を送った。彼女の視線の先には助監督と白峰さんがいて、何やら白峰さんが助監督を詰めているように見える。
「私ね。自分が偉いと勘違いしてる奴が大嫌いなんだ」
椎名さんは声のトーンを変えることなくそう言った。
「へ?」
「あの男はそういうタイプみたいだからね。その証拠に天沢さんと私にはあんま文句言わないでしょ? まぁ……。天沢さんはそもそも卒がないからってものあるだろうけど。たぶんアイツ自分より下に見た奴には強く出るタイプなんじゃない? ほんと、死ねばいいのに」
椎名さんはずっと穏やかな口調そう言うと今度は口元を緩めた。そして「アイツはアメリカまで来れないだろうね」と付け加えた――。
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