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第十一章 成田国際空港 北ウイング
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私たちがそんなやりとりをしている間も大人たちはお酒を飲みながら歓談していた。そしてそんな中で逢川さんは社長二人にやたらいじられていた。おそらく社長たちからしたら逢川さんは可愛い後輩なのだと思う。
一方諏訪さんはそんな彼らにずっとにこやかに接していた。そしてその笑顔は普段彼女が作っている営業スマイルと違うように見えた。上手く言えないけれど……。普段よりはずっとリラックスしているように感じる。
「聖那のお兄ちゃんの写真とかないの?」
私が諏訪さんの笑顔に見とれていると美鈴さんにそう訊かれた。その口ぶりから察するにどうやら弥生さんの嫌味は通じなかったらしい。
「一応あるよ……。ちょっと待ってね」
私はそう返すとスマホを操作して家族写真のフォルダを開いた。そして一年前に百里で撮った写真を表示した。写真には凜々しい表情の兄が映し出されている。
「どれどれ……。うわ! やっぱカッコいいじゃん。さっすが聖那の兄貴」
美鈴さんは大げさなリアクションをするとにんまりと嫌らしい笑みを浮かべた。だから私は『お兄ちゃんやったね。彼女できるかもよ』と心の中だけで呟いた。幸か不幸かここしばらく兄に恋人はいないのだ。まぁ……。それは自衛官という少し特殊な職業のせいだと思うけれど。
「本当だね。綺麗な顔してる」
弥生さんが不意にそう呟く。
「だよね! 弥生もそう思うじゃん!?」
「うん。それに……。やっぱり聖那ちゃんに少し似てるね。口元とかそっくりだよ」
弥生さんはそう言うと私とスマホに映る兄を交互に見比べた。そして「カッコいいと思う」と続ける。
「うーわ。マジか。……本当にタクと別れようかな」
美鈴さんはそんな風に本気なのか冗談なのか分からないことを言うと「うーん」と唸った。いや……。たぶんこれは結構本気だと思う。これでも彼女の性格はある程度把握できているのだ。まぁ、そうは言っても美鈴さんでは兄の性格について行けないと思う。兄は一見穏やかそうに見えてかなり我が強いのだ。
そうこうしていると社長と逢川さんと蔵田店長が揃って立ち上がった。そして逢川さんが「ちょっとタバコ吸ってくるから」と言うと彼らは座敷から出て行った――。
一方諏訪さんはそんな彼らにずっとにこやかに接していた。そしてその笑顔は普段彼女が作っている営業スマイルと違うように見えた。上手く言えないけれど……。普段よりはずっとリラックスしているように感じる。
「聖那のお兄ちゃんの写真とかないの?」
私が諏訪さんの笑顔に見とれていると美鈴さんにそう訊かれた。その口ぶりから察するにどうやら弥生さんの嫌味は通じなかったらしい。
「一応あるよ……。ちょっと待ってね」
私はそう返すとスマホを操作して家族写真のフォルダを開いた。そして一年前に百里で撮った写真を表示した。写真には凜々しい表情の兄が映し出されている。
「どれどれ……。うわ! やっぱカッコいいじゃん。さっすが聖那の兄貴」
美鈴さんは大げさなリアクションをするとにんまりと嫌らしい笑みを浮かべた。だから私は『お兄ちゃんやったね。彼女できるかもよ』と心の中だけで呟いた。幸か不幸かここしばらく兄に恋人はいないのだ。まぁ……。それは自衛官という少し特殊な職業のせいだと思うけれど。
「本当だね。綺麗な顔してる」
弥生さんが不意にそう呟く。
「だよね! 弥生もそう思うじゃん!?」
「うん。それに……。やっぱり聖那ちゃんに少し似てるね。口元とかそっくりだよ」
弥生さんはそう言うと私とスマホに映る兄を交互に見比べた。そして「カッコいいと思う」と続ける。
「うーわ。マジか。……本当にタクと別れようかな」
美鈴さんはそんな風に本気なのか冗談なのか分からないことを言うと「うーん」と唸った。いや……。たぶんこれは結構本気だと思う。これでも彼女の性格はある程度把握できているのだ。まぁ、そうは言っても美鈴さんでは兄の性格について行けないと思う。兄は一見穏やかそうに見えてかなり我が強いのだ。
そうこうしていると社長と逢川さんと蔵田店長が揃って立ち上がった。そして逢川さんが「ちょっとタバコ吸ってくるから」と言うと彼らは座敷から出て行った――。
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