日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの

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第十一章 成田国際空港 北ウイング

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 そんなコントみたいなやりとりをしてから逢川さんが奥座敷の襖を開けた。そして「お疲れ様です。お待たせいたしました」と言って部屋の中へ平然と入った。さっきまで弥生さんに叱られていたのが嘘のようだ。
「お、来たねー。待ってたよ」
 蔵田店長は赤ら顔でそう言うと「さ、さ! みんな座りな」と私たちに座るように促した。その様子は……。控えめに言ってただの酔っ払いだ。正直これじゃ逢川さんと美鈴さんが嫌がるのも分かる気がする。
「じゃあ……。失礼します。みんなも適当なとこ座って」
 逢川さんは少し顔をこわばらせながらそう答えると氷川社長の隣に腰を下ろした。そしてその隣に諏訪さんがスッと腰を下ろす。
「弥生ちゃん! 香澄は?」
「今女将さんの手伝いに行ってます。すぐ来ると思いますよー」
「そっか。いやぁ、マジであいつはいい姪っ子だよ。よく手伝ってくれるし気がつくし」
 蔵田店長はそう言うと「うぇヘヘヘ」といらやしく笑った。どうやら彼は酔っ払うと笑い上戸の褒め上戸になるらしい。
「本当にそうですねぇ。私もいつもお世話になっちゃって」
「いやいや。こっちこそ世話掛けるね。香澄あれで結構人見知りだから弥生ちゃんが友達してくれてて俺も嬉しいんだ」
 蔵田店長はそう言うとコップに残ったビールを一気に飲み干した。そして「氷川くん飲んでる?」と氷川社長にウザ絡みする。
「ええ。いただいてます」
「そう? もっとじゃんじゃん飲んでよ! ここの払いは姉さん持ちだしねー」
 蔵田店長はそう嘯くと視線を出雲社長に送った。それに対して出雲社長は「まぁね」と軽く返す。
「蔵田くんには普段から迷惑掛けてるからたまにはいいよ。でも……。今日の蔵田くんは飲み過ぎだよね」
「えー! マジッすか? これでも控えてんですけど?」
「いやいや。飲み過ぎも飲み過ぎだから。子供ら来る前にできあがってどうすんの?」
 出雲社長は蔵田店長をそう窘めると私たちに向かって「みんなはこんな大人になっちゃダメだよ」と言って笑った――。

 そうこうしていると女将さんと香澄さんが料理を運んできた。ローストビーフと揚げ物のオードブルと豪勢な舟盛り。あとはやたら大きな皿に盛り付けられたシーザーサラダ。そんな宴会を絵に描いたような料理がテーブルいっぱいに並ぶ。
「お待たせしちゃってすいません」
 女将さんはそう言うとペコリと頭を下げた。そして蔵田店長に対して「少しは手伝ってくれてもいいんだよ?」と嫌味を言った。当然だ。自分がこれだけ忙しそうにしているのに亭主がこれじゃ嫌味の一つも言いたくなると思う。
「ごめんごめん。美也ちゃんにはあとで埋め合わせするから」
「はぁ……。調子いいんだから。香澄ありがとね。もう大丈夫よ」
 女将さんは呆れながらそう返すとスッと立ち上がった。そして「では皆さんごゆっくり」と言って下がっていった。
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