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第十一章 成田国際空港 北ウイング

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 出雲社長との食事を終えると私たちは昨日と同じように歩いて第二ターミナルへ向かった。そして道すがら弥生さんが口を開く。
「ありがとね。聖那ちゃん」
 彼女はそう言うと「フフっ」と嬉しそうに笑った。
「いや……。なんかごめんね。社長怒らせちゃったかな……」
「まぁ、少しはイラッとしたんじゃない? でもたまにはあれくらい言ってもいいよ。ほら、あの人アレでなかなか強情だからさ」
「そ、そう……」
「うん。何て言うかね。ちょっとスーッとしたよ。最近私ずっと叔母さんの言いなりだったからさ。いくら私が女優業に戻るからって調子乗りすぎ……。って感じ? ま、だから気にしないで」
 弥生さんはそこまで言うと「うーん」と大きく背伸びをした。そして「聖那ちゃんが私の後任になってくれて素直に嬉しいしね」と付け加えた――。

 それから少し歩くと第二ターミナルに到着した。時刻は一三時前。そろそろ逢川さんたちが到着する頃だ。
「メイリンたちもうエレメンタル出たって」
「そっか。じゃああと三〇分くらいで着くね」
「だねー。なんかねぇ。今日は諏訪さんも来るってさ」
 弥生さんはそう言うとスマホでLINEのメッセージ画面を見せてくれた。その画面には女子三人が車内でピースしている様子が映っていた。香澄さんと諏訪さんは控えめな女子っぽいピース。美鈴さんは……。あえて口汚く言えば下品なポーズをしている。
「……美鈴さん今日も楽しそうだね」
「うん。マジであいついい加減にして欲しいよねぇ。昔っからずっと悪ふざけしかしないんだから」
「ハハハ、でも……。私は美鈴さんのそういうところ好きだよ。そのお陰で私もすぐにエレメンタルに馴染めたしね」
「うーん……。聖那ちゃんの言いたいことも分かるんだけどさ。でも! メイリンは色々とふざけすぎだよー。この前もさぁ――」
 弥生さんはそう言うと美鈴さんのやらかしを吐露し始めた。いつも通りに。これから先もずっとこの関係が続くみたいに。
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