日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの

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第十一章 成田国際空港 北ウイング

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 私がそうやって展望デッキからの景色をボーッと眺めていると視界の端に見覚えのある人影が映った。下縁メガネに地味目なノースリーブシャツ。彼女はそんな格好をしていた。それは本来の彼女が持つ可愛らしい容姿を隠すための着ぐるみみたいに見える。
「おはよう」
 弥生さんはそう言うと小さく手を上げた。私も「おはよう」と手を上げ返す。
「今日は私も前乗りしたんだ。昨日の夜に春川さんから連絡貰ってね。ちょっと打ち合わせ」
 弥生さんはそう言って視線を出雲社長と春川さんの方に向けた。そして彼女たちにペコリと頭を下げる。
「そっか……。じゃあ美鈴さんと香澄さんだけ後から来る感じ?」
「だね。まだまだ時間あるから来るのはお昼過ぎだろうけどね」
 ……ということは久しぶりに弥生さんと二人きりになるのか。と私は思った。思えば彼女とこうして二人きりになるのは最初に幕張に行ったとき以来だと思う。
「お、二人の話終わったみたいだね」
 弥生さんはそう言うと春川さんのところに歩み寄った――。

 それから弥生さんは三〇分くらい春川さんと打ち合わせした。今日の弥生さんは昨日とは打って変わって明るい表情を浮かべていた。そしてそれはどことなく不自然に見えた。おそらく彼女は大人の前だから演技をしているのだと思う。彼女は……。信用しきれない大人の前ではほぼ確実に『女優』になるのだから。
「お待たせ!」
 打ち合わせが終わると弥生さんはすぐに私のところに戻ってきた。そして「ちょっと早いけどご飯にしちゃおう」と言った。時刻は一一時過ぎ。確かに公演開始の時間を考えると早めに昼食は済ませた方が良さそうだ。
「そうだね。じゃあ第二ターミナル行く?」
「うーん。……今日はこっちで食べようかな? 私も社長と話したいことあるし」
 弥生さんはそう言うと後ろにいる出雲社長に視線を送った。どうやら出雲社長に用事があるのは私だけではないらしい。
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