日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの

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第十章 下北線路外空き地

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 そうこうしているとテントにスーツ姿の女の人が入ってきた。彼女は真夏だと言うのにピシッとスーツを着こなしていた。その立ち姿は見るからにデキる女……。そんな風に見える。
「こんにちはー。お世話になっておりまーす」
 逢川さんはその女性に気がつくとそう言って彼女に歩み寄った。どうやら彼女は逢川さん知り合いらしい。……いや、よくよく彼女の顔を見れば私もこの女性を知っている気がする。そして一瞬考えてそれが誰だったか思い出した。おそらく彼女は私が初めてエレメンタルに行った日に来ていた人だと思う。
「お世話になっております。お忙しい中すいません」
「いえいえ。逆にすいません。本来であればこちらから出向くのが筋だとは思ったのですが……」
 逢川さんは酷く恐縮した風に言うとばつが悪そうにうなじを掻いた。どうやら逢川さんにとって彼女は大切な取引先の人間らしい。
「それでは……。お時間も押してますし始めましょうか」
 彼女はそう言うと穏やかに微笑んだ。その笑顔は最高にチャーミングで思わず私もドキッとした――。

 それから私たちは更衣スペースに移動した。そこはレジャーシートの周りをパネルで囲んだだけの空間で天井はなかった。要は目隠し付きの屋外。そんな場所だ。
 そしてそこで私たちは初めて香澄さんの衣装を見せて貰った。それは私の予想に反して純和風の振り袖のような衣装で一見すると魔法少女の服のようには見えなかった。まぁ……。それを言い出すと美鈴さんの衣装も一見ただのチャイナドレスなのだけれど。
「へー。いいじゃんいいじゃん! 鹿島ちゃんは振り袖っぽいのにしたんだね」
「うん。ほら、私って普段は店長のせいで洋装しか着せて貰えないからさ。だから今回は自分で好きに作ったんだぁ。……我ながら自信作だよ」
 香澄さんはそう言うとその衣装を嬉しそうに抱きしめた。余程その衣装を気に入っているのか彼女の表情はまるで恋人の腕を抱いているかのように見える。
「いいなぁ。……うっし、それじゃ変身しちゃおっか」
 美鈴さんはそう言うとシャツとデニムパンツを脱いだ。本日の変身タイムの始まりだ。
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