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第九章 カワウソカフェ KOTSUME

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 そうこうしていると私のスマホに香澄さんからメッセージが届いた。内容は『今日から私も魔法少女になります。よろしくお願いします』というものだった。字面だけ見るとかなり可笑しい。まぁ……。彼女は大真面目にこのメッセージを打ち込んだのだろうけれど。
「香澄さん律儀だねぇ。メッセージくれたよ」
「だねぇ。あの子ってけっこうマメだよね。私にもさっき送ってくれたからね」
 美鈴さんはそう言うと「マジでいい子」と続ける。
「……そういえば香澄さんはどんな衣装なんだろうね?」
「あー。それな。確かに気になるね。たぶんあの子自分でデザインしたんだろうしね」
「そっか。香澄さん服飾デザインできるんだもんねぇ」
 そこまで話して私は香澄さんの新衣装がゴスロリなんじゃないかと思った。まぁこれは私が最初に見た彼女の姿そうだったからなのだけれど。
「一応私はもう見たよ」
 不意に弥生さんがそう呟いた。そして「まぁ楽しみにしてなよ。すっごく良い衣装だからさ」と言って鼻を鳴らした――。
 
 それから私と美鈴さんはひたすらチェリーちゃんと戯れた。抱っこしたりご飯を一緒に食べたり。そんな時間が最高に幸せだった。やっぱりカワウソは可愛さの化身なのだ。これほど可愛い生き物は他にいないんじゃないか? そう思うほどに。
 そうやってチェリーちゃんと遊んでいる私たちを余所に弥生さんは篠田さんと真剣に話し込んでいた。専門用語が多すぎて私にはその話理解できなかったけれど、どうやら漫画の話をしているらしい。
「実は……。原稿持ってきたんです」
 弥生さんはそう言ってバッグを漁ると中から原稿用紙を取りだした。
「すごく厚かましいですが……。良かったら見ていただけませんか?」
 弥生さんは絞り出すように言うと両手でその原稿用紙を篠田さんに差し出した。それに対して篠田さんは「いいよ」と軽く返すとその原稿用紙を受け取った――。
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