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第九章 カワウソカフェ KOTSUME

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それから程なくして美鈴さんが戻ってきた。
「ただいま」
 彼女はそう言うと「どうぞ」と言って一人の女性を部屋に通した。そしてその女性は「こんにちは」と短く挨拶すると口元を緩めた。――篠田楓子。母の大学時代の友人にして人気少年漫画家だ。
「こんにちは。お久しぶりです。今日はお忙しい中ありがとうございます」
「いえいえ。大丈夫だよ。絢子ちゃんは変わりない?」
「母は……。変わらないですね。マイペースなままです」
「フフッ。そっか。ま、元気そうなら良かったよ」
 篠田さんはそう言うと私の隣の席に腰を下ろした。そしてチェリーちゃんを抱きかかえる弥生さんに「初めまして。篠田です」と挨拶した。弥生さんは……。「こ、こ、こんにちは。初めまして! 春日弥生です」とつっかえながら挨拶を返した。やはり弥生さんはかなり緊張してているようだ。
「ハハハ、そんなに緊張しないでも大丈夫だよ。だって私ただのおばさんだよ? ねぇ聖那ちゃん?」
「いやいや……。まぁ」
 篠田さんに話を振られて私も言葉に詰まった。流石に『はいそうです。ただのおばさんです』なんて返せるわけがない。
 そうこうしていると店員さんが『スーパーカワウソセット ちっちゃなお姫様と仲良しランチ』と飲み物を持ってきてくれた。『スーパーカワウソセット ちっちゃなお姫様と仲良しランチ』はすごいボリュームでまるでビュッフェをそのまま持ってきたような見た目をしていた。正直カワウソ相手にこの料理はやり過ぎでは? と思う。
「すごいの注文したね」
 篠田さんはそう言うとバッグからスマホを取り出した。そして「ちょっと撮らせて」と言ってその『スーパーカワウソセット ちっちゃなお姫様と仲良しランチ』を撮り始めた。
 弥生さんはそんな篠田さんを緊張した面持ちで見つめていた。美鈴さんは『早く終んねーかなぁ』みたいな顔をしていた――。
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