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第八章 成田山新勝寺 表参道

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「んじゃウチらも行こっか」
 美鈴さんはそう言って立ち上がると飲み終わった缶をゴミ箱に突っ込んだ。そして「まずはたこ焼きからね!」と言って私の手を引いた。これじゃまるでデートみたいじゃないか。と思わずツッコみそうになる。まぁ……。盗み聞きした感じだと美鈴さんには彼氏がいるのだけれど――。

 それから私たちは参道に立ち並ぶ露店を見て回った。たこ焼きやら焼きそばやら光る玩具やら……。そんな夏祭りの思い出になりそうな店をを何件もハシゴした。我ながら子供っぽいことをしていると思う。
「来週は東京かぁ」
 一通り露店を見終わると美鈴さんはそう呟いた。そして大げさに欠伸すると石段横のベンチに腰を下ろした。
「だねぇ。私、下北沢行くの初めてだよ」
「私も! あーあ、どうせ行くなら遊んできたいよねぇ。……ま、こんなこと弥生に聞かれたらめっちゃ怒りそうだけどさ」
 美鈴さんはそう言うと続けて「あの子は仕事となると厳しいかんね」と苦笑した。確かに弥生さんは仕事に関しては厳しい人なのだ。子役時代から何年も経ってるのに今でも演じるときの表情はプロの役者だと思う。
「なんか……。ちょっともったいないね。弥生さん元々は役者さんだったのに……」
「うーん。まぁ……ね。何て言うのかなぁ。弥生って難しい子なんだよね。激烈に漫画オタクだし、基本根暗だし、口うるさいしさ!」
 美鈴さんは思い切り弥生さんを悪く言うと「フフッ」と笑った。そしてフォローするみたいに「でも努力家で優しくて気遣いができる子」と付け加える。
「だよねー。弥生さんって本当に優しいって思うよ。一緒に幕張泊まったときなんか手取り足取り面倒見てくれたもん」
「そうそう! あの子めっちゃ面倒見良いんだよねぇ。それに子供好きだしね。安直だけど保育士とか向いてると思うよ」
「あ! 分かるー! しっかり者の先生になりそうだよね」
「うんうん。で! 怖がられながらも慕われちゃう感じ」
 美鈴さんはそこまで話すと「ハハハ」と嬉しそうに笑った。思わず私も釣られて笑う。
「……だからさぁ。あの子には幸せになって欲しいんだよね。今は色々大変だけどさ」
 美鈴さんはそう言うと左目を擦った。そしてポツリポツリと弥生さんとの思い出を話してくれた――。
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