日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの

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第七章 水郷会児童福祉施設 あけぼし

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 香澄さんはそこまで話すと「ふぅ」と小さなため息を吐いた。そして「まぁ……。だからって私と弥生ちゃんの関係が変わったわけではないんですけどね」と付け加えた。そしてさらに続ける。
「上手く言葉にできないんですが……。私、本当は弥生ちゃんの専属スタイリストになりたかったんですよね。それで世界中を一緒に飛び回りたかったんです。あの子が女優で私がデザイナー兼スタイリスト……。そしたらすんごい幸せだろうなぁって」
 香澄さんはそう言うと悲しそうな笑みを浮かべた。瞳は潤み今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「……そうだったんですね」
 私はそれだけ返すと言葉に詰まってしまった。相変わらず良い言葉が思いつかない。現代文は得意なはずなのにな。と心の中で自分をなじった。役立たずの優秀な成績にいったい何の意味があるのだろう?
「まぁ今更良いんですけどね。今の弥生ちゃんは幸せそうだし……。それに一応は弥生ちゃんの専属スタイリストできてますから」
 香澄さんは無理な笑顔を作りながら言うと長いツインテールの髪を指でなぞった――。

 香澄さんとそんな話をしているとお盆を持って美鈴さんが戻ってきた。
「ごめんごめん。親父って家事ができない人だからさ」
 美鈴さんはそう謝るとお盆の上からコップを取ってテーブルに並べた。そしてペットボトルからオレンジジュースを注ぐと「粗茶ですが」と言って私たちにそれを差し出す。
「あと……。簡単なもんで悪いんだけどコレでも食べて! 夕飯は食べに行くから軽めだけど」
 美鈴さんはそう言うと大皿に盛られたサンドイッチをテーブルの上に置いた。タマゴサラダ。ハムとマヨネーズ。あと……。赤っぽいソースのサンドイッチだ。
「ありがとー! 美鈴ちゃんの麻婆豆腐サンド久しぶりだね」
 香澄さんはそう言うとその赤いソースのサンドイッチを手に取った。どうやら赤いソースは麻婆豆腐らしい。
「ああ、そうだね。いや……。マジでこんなもんで悪いね。聖那ちゃんも食べて!」
「……ありがとう。いただきます」
 それから私は勧められるままその麻婆豆腐サンドを食べた。味は……。かなり美味しい。店で出しても良いレベルだと思う。一見すると食パンと麻婆豆腐は合わなそうなのに……。と心の中で驚く。
「すごく美味しい」
「へへっ! あんがと! これはねぇ。私の創作料理なんだ。っても麻婆豆腐にチーズトッピングしてサンドしただけなんだけどね」
 美鈴さんは私の反応が余程嬉しかったのか「こんなんで良ければいつでも作ってあげるよ!」と言ってくれた。どうやら弥生さんが料理上手というのは眉唾ではないらしい。
「ほんとほんと! 美鈴ちゃんって料理の天才だよねぇ。特に中華は本当に美味しいんだよぉ! 春巻きとか青椒肉絲とかすんごい美味しかったもん!」
 香澄さんがそう言って美鈴さんの料理を絶賛すると美鈴さんは「ハハハ」と照れ笑いを浮かべた。そして「鹿島ちゃんも口が上手いなぁ」と言って顔を赤くした――。
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