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第七章 水郷会児童福祉施設 あけぼし
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それから私たちはステージ中央でポーズを決めた。そして手を繋いで子供たちに頭を下げると舞台袖に下がった。時間にして約一五分。いざやってみるとかなり短い舞台だと思う。
それでも園庭に集った子供たちは私たちに大きな拍手を送ってくれた。とりあえず成功。そう考えて良さそうだ。まぁ……。私はただポーズを決めて美鈴さんにヒーリング魔法を掛けただけなのだけれど。
「ナイス聖那ちゃん! 初回なのにめっちゃ良かったよ!」
舞台袖に下がると弥生さんは私の手を握ってそう言ってくれた。彼女の額には玉のような汗が滲んでいる。
「ありがとー。弥生さんのお陰だよぁ。……それに私ただポーズ決めただけだしね」
「いやいや。すごいって! 初ステージであれだけできれば上出来だよ! ねぇメイリン?」
弥生さんはそう言ってハルバートを布で拭いている美鈴さんに話を振った。
「だねー。私の初回なんかマジで酷かったよ? 聖那ちゃんって本番強いんだね」
「ハハハ。マジでね。メイリンのデビュー戦よりだいぶ良かったよ。ま、あんときは二人だったからってのもあるけどさ」
弥生さんはそう言うと畳んであったパイプ椅子を立てて座った。舞台が終わったせいか随分と表情が柔らかく見える。
「……とりあえず大きな失敗しないで良かったよ。二人ともありがとね」
私は彼女たちにお礼を伝えるとふっと身体の力が抜けるのを感じた。そして本当に身体の力が抜けてしまった。そして私の意識はそこで暗転した――。
どれくらいの時間が経っただろう。私はソファーの上で意識を取り戻した。
「お、聖那ちゃん気づいた?」
私がどうにか目を開けると視界にぼやけた美鈴さんの顔が浮かんできた。チャイナドレスの胸元にある宝石の光が目に染みる。
「あれ? 私……。どうして」
私はそう言いながら身を起こそうとした。するとすぐに逢川さんが「あーあ、無理しちゃダメだよ!」と言って私の身体を抱き起こしてくれた。どうやら私はソファーの上に寝かされていたらしい。
「いやぁ。ビックリしたよぉ。聖那ちゃん急に倒れるんだもん! 相当疲れてたんだろうねぇ」
美鈴さんはそう言うと私の頭を撫でた。そして「よく頑張った!」とまるで本当のお姉ちゃんみたいに私を褒めてくれた。心なしか普段の美鈴さんよりだいぶ穏やかに見える。
「ごめんね……。迷惑掛けちゃったみたいで」
「ああ、良いんだよ。聖那ちゃんが無事なら問題ないからさ」
美鈴さんはそう言うとニッと笑った。これが占いで言われた失敗かな……。私はそんなことを思った。
そうこうしていると部屋に熱田さんがやってきた。そして「気がつきましたか」と言って私の前に立膝をついて座った。
「念のため失礼します」
彼はそう言うと私の左手首を軽く握った。そして脈を測ると「うん」と頷いて部屋のキャビネットから血圧計と聴診器、あと非接触型の体温計を持ってきた。
「念のため血圧と体温だけ測らせてください」
そう言うと彼は慣れた手つきで血圧計のベルトを私の腕に巻いた。そして血圧計のポンプを手で揉み始めた。その様は本物の医者や看護師みたいだ。
「うーん……。一〇五の七七ですか。ちょっと血圧低めですね」
熱田さんはそう言うと聴診器を血圧計のベルトに差し込んだ。そして「脈拍は正常……か」と独り言のように呟く。
「えーとですね……。とりあえずは問題ないです。ただ……。血圧がだいぶ低いので今日はゆっくり休んでおいた方がいいですね。滋養に良い食べ物を食べてよく寝れば治ると思うので」
「はい……。ありがとうございます。すいません。ご迷惑お掛けして」
「いえいえ。お大事にしてください。……では逢川さん。私はまだやることがありますので」
熱田さんは逢川さんにそう伝えると会釈して部屋から出て行った。園庭からは子供たちの声が聞こえている。おそらくまだイベントの最中なのだろう。
「何事もなくて良かったよ。……まぁ、でも一応医者に診せておいで。近くに土曜でもやってる町医者あるから連れてってあげるよ」
逢川さんはそう言うとどこかに電話を掛け始めた。そして少し話すと私に向き直る。
「んじゃ行こうか。そんで問題ないなら今日は解散にしよう」
「はい。すいません……」
それから私はササッと普段着に着替えた。そして逢川さんに連れられてあけぼしからほど近い診療所に向かった。そしてそこで簡単な問診を受けた。診断は……。貧血だ。どうやら私の身体には鉄分が不足しているらしい。
そして診察を終えるとすぐにあけぼしに戻った。時間にして二〇分程度。本当に簡単な問診だけなので薬も出ない。ただおじいちゃん医者に「魚食え。魚」と言われただけだ。まぁ……。大したことなくて良かったとは思うけれど。
「夏木さんが無事で良かったよ。あんまり無理しないでね」
逢川さんはそう言うとホッとしたみたいに笑った。今日はみんなに迷惑掛けてばっかだな……。心底そう思った。
それでも園庭に集った子供たちは私たちに大きな拍手を送ってくれた。とりあえず成功。そう考えて良さそうだ。まぁ……。私はただポーズを決めて美鈴さんにヒーリング魔法を掛けただけなのだけれど。
「ナイス聖那ちゃん! 初回なのにめっちゃ良かったよ!」
舞台袖に下がると弥生さんは私の手を握ってそう言ってくれた。彼女の額には玉のような汗が滲んでいる。
「ありがとー。弥生さんのお陰だよぁ。……それに私ただポーズ決めただけだしね」
「いやいや。すごいって! 初ステージであれだけできれば上出来だよ! ねぇメイリン?」
弥生さんはそう言ってハルバートを布で拭いている美鈴さんに話を振った。
「だねー。私の初回なんかマジで酷かったよ? 聖那ちゃんって本番強いんだね」
「ハハハ。マジでね。メイリンのデビュー戦よりだいぶ良かったよ。ま、あんときは二人だったからってのもあるけどさ」
弥生さんはそう言うと畳んであったパイプ椅子を立てて座った。舞台が終わったせいか随分と表情が柔らかく見える。
「……とりあえず大きな失敗しないで良かったよ。二人ともありがとね」
私は彼女たちにお礼を伝えるとふっと身体の力が抜けるのを感じた。そして本当に身体の力が抜けてしまった。そして私の意識はそこで暗転した――。
どれくらいの時間が経っただろう。私はソファーの上で意識を取り戻した。
「お、聖那ちゃん気づいた?」
私がどうにか目を開けると視界にぼやけた美鈴さんの顔が浮かんできた。チャイナドレスの胸元にある宝石の光が目に染みる。
「あれ? 私……。どうして」
私はそう言いながら身を起こそうとした。するとすぐに逢川さんが「あーあ、無理しちゃダメだよ!」と言って私の身体を抱き起こしてくれた。どうやら私はソファーの上に寝かされていたらしい。
「いやぁ。ビックリしたよぉ。聖那ちゃん急に倒れるんだもん! 相当疲れてたんだろうねぇ」
美鈴さんはそう言うと私の頭を撫でた。そして「よく頑張った!」とまるで本当のお姉ちゃんみたいに私を褒めてくれた。心なしか普段の美鈴さんよりだいぶ穏やかに見える。
「ごめんね……。迷惑掛けちゃったみたいで」
「ああ、良いんだよ。聖那ちゃんが無事なら問題ないからさ」
美鈴さんはそう言うとニッと笑った。これが占いで言われた失敗かな……。私はそんなことを思った。
そうこうしていると部屋に熱田さんがやってきた。そして「気がつきましたか」と言って私の前に立膝をついて座った。
「念のため失礼します」
彼はそう言うと私の左手首を軽く握った。そして脈を測ると「うん」と頷いて部屋のキャビネットから血圧計と聴診器、あと非接触型の体温計を持ってきた。
「念のため血圧と体温だけ測らせてください」
そう言うと彼は慣れた手つきで血圧計のベルトを私の腕に巻いた。そして血圧計のポンプを手で揉み始めた。その様は本物の医者や看護師みたいだ。
「うーん……。一〇五の七七ですか。ちょっと血圧低めですね」
熱田さんはそう言うと聴診器を血圧計のベルトに差し込んだ。そして「脈拍は正常……か」と独り言のように呟く。
「えーとですね……。とりあえずは問題ないです。ただ……。血圧がだいぶ低いので今日はゆっくり休んでおいた方がいいですね。滋養に良い食べ物を食べてよく寝れば治ると思うので」
「はい……。ありがとうございます。すいません。ご迷惑お掛けして」
「いえいえ。お大事にしてください。……では逢川さん。私はまだやることがありますので」
熱田さんは逢川さんにそう伝えると会釈して部屋から出て行った。園庭からは子供たちの声が聞こえている。おそらくまだイベントの最中なのだろう。
「何事もなくて良かったよ。……まぁ、でも一応医者に診せておいで。近くに土曜でもやってる町医者あるから連れてってあげるよ」
逢川さんはそう言うとどこかに電話を掛け始めた。そして少し話すと私に向き直る。
「んじゃ行こうか。そんで問題ないなら今日は解散にしよう」
「はい。すいません……」
それから私はササッと普段着に着替えた。そして逢川さんに連れられてあけぼしからほど近い診療所に向かった。そしてそこで簡単な問診を受けた。診断は……。貧血だ。どうやら私の身体には鉄分が不足しているらしい。
そして診察を終えるとすぐにあけぼしに戻った。時間にして二〇分程度。本当に簡単な問診だけなので薬も出ない。ただおじいちゃん医者に「魚食え。魚」と言われただけだ。まぁ……。大したことなくて良かったとは思うけれど。
「夏木さんが無事で良かったよ。あんまり無理しないでね」
逢川さんはそう言うとホッとしたみたいに笑った。今日はみんなに迷惑掛けてばっかだな……。心底そう思った。
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