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第三章 アンダーグラウンド幕張

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 高速を二〇分ほど走ると幕張市内に到着した。やはりというか何というか……。成田とは比べものにならないくらい大きな街だと思う。
「そういえば私の武器も完成したんだっけ?」
 美鈴さんは背伸びしながら逢川さんにそう尋ねた。
「出来たってよ。動画送って貰ったけど悪くなかったね。ありゃウケると思う」
「ふえぇー。マジか! めっちゃ楽しみなんだけど」
 二人はそう言って盛り上がっていた。どうやら美鈴さんと逢川さんは気が合うらしい。
 一方、私は弥生さんと普通に話していた。先週も思ったけれどやっぱり私と弥生さんは家庭環境が似通っている気がする。両親の仕事の都合で一緒にいる時間が少ないところなんか本当にそっくりだ。
「あのさ。お母さんが篠田さんに連絡したんだけど……」
 私がそう言うと弥生さんは急に目を大きく見開いて「それで? それで?」と身を乗り出した。その姿は少し狂気的に見える。
「あ、うん。篠田さんちってカワウソ飼ってるみたいなんだけどさ。今そのカワウソがカワウソカフェでアルバイトしてるんだって」
 私はそこまで説明して自分が何を言っているのか分からなくなった。それは前の席の二人も同じようで二人して「え? 何それ?」とツッコミを入れてきた。当然だ。カワウソがカワウソカフェでアルバイト。何のことだか分からない。
 でも弥生さんだけは「あー。チェリーちゃんだよねー」とさも当たり前のように答える。さすが篠田楓子のファンだ。と思わず感心する。
「でね……。もし弥生さんが良ければ一緒にカワウソカフェ行かない? タイミング会えば篠田先生にも会えるかもしれないからさ」
「――!! うぅー!」
 私が話し終わると弥生さんが声にならない声で悶絶し始めた。そして過呼吸にでもなったみたいに胸を押さえる。
「だ、大丈夫!?」
「うん。ぜんぜん大丈夫じゃないよ。それで? いつ行くいつ行く?」
 弥生さんは支離滅裂なことを言うと急に両手で私の手を握ってきた。完全におかしな人だ……。と内心思う。
「とりあえずお母さんに聞いてみてからでもいい? 篠田さんとチェリーちゃんの都合もあるし……」
「うんうんうん。それでいいよ! やったー! 生で会えるなんて超幸せ! 生きてて良かったー!」
 その弥生さんの反応を見て私は思った。『これ、直接篠田さんに会ったらどうなっちゃうんだろ?』と。
 前の座席の二人はそんな弥生さんを生暖かい目で見ていた。余計な口は挟まない。どうやら二人とも弥生さんのこの性格を完全に理解しているようだ――。
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