上 下
18 / 176
第三章 アンダーグラウンド幕張

しおりを挟む
 新入魔法少女歓迎会(?)が終わると美鈴さんが私を自宅まで送ってくれた
「よし! 今日は本当にお疲れ様! たぶん今週の金曜に衣装取りに行くと思うから予定空けといてね」
「うん! ありがとね。弥生さんにもよろしく伝えといて」
「あいよー。んじゃ!」
 美鈴さんはそう言うとバイクに跨がって大げさに手を振った――。

 家に帰ると両親がリビングで愛を語り合っていた。誇張じゃなくて本当に。
 母は『私のこと好き?』とか父に抱きつきながら聞いてるし、父は父で『もちろん』とか答えている。……本当に勘弁して欲しい。
「ただいまー!」
 私はわざとらしく大きな声を出してリビングに入った。まぁ……。そうしたところで二人の愛は止まらないのだけれど。
「あら、おかえりなさい」
 母は二人きりの時間を邪魔されたのが気に入らないのか素っ気なく答えた。母はこういうところが子供なのだ。普段あれだけ私のことを子供扱いするくせに……。と内心イラッとする。
「友達と遊んできたのか?」
 不意に父が口を挟んだ。私は「そうだよー」とだけ答える。決して『魔法少女の最終選考』だとは言わない。
「そうか。……礼儀正しくていいお嬢さんだったな。メロンまで貰っちゃって」
 父はそんな風に満足げに言うと「夕飯のあと出して」と母に催促した。
「ダメよ! まだ固いもん。明日切るから」
「そっかぁ……。じゃあ俺が食べられるのはギリギリか」
 母にそう言われて父は目に見えてしょぼくれてしまった。父も果物には目がないのだ。本当に似たもの夫婦だと思う。
 それから私たちは久しぶりに家族団らんした。手の込んだ母の料理と父のつまらない冗談。それだけで非日常に来たような気分になる。
「そういえば……。篠田楓子さんとは今でも連絡取り合ってるの?」
「何よ……。藪から棒に。そうねぇ。篠田さんにはもうしばらく連絡してないかな? 毎年年賀状は送り合ってるけどそれだけよ」
「そっかぁ……。実は友達が篠田さんのファンだって言ってたからさ。ちょっと気になってね」
「何? 香取さんって篠田さんのファンなの?」
「違う違う。美鈴さんの友達がさ」
「あ、そう。何か聖那急に友達増えたね」
 母はそう言うと立ち上がってサイドボードからハガキを何枚か持ってきた。
「ほら、これよ!」
 母はそう言うと私に篠田さんからの年賀ハガキを差し出した。ハガキには両親と同年代くらいの夫婦と小学生くらいの男の子。あと……。なぜかカワウソが写っている。
「あ! このカワウソ!」
「ああ、この子はチェリーちゃんって言うのよ。たしか聖那もサイン会のとき会ったよね」
 私の困惑を余所に母はさも当たり前のよう言った。どうやらカワウソがサイン会に居たのは私の勘違いではなかったらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...