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第二章 ニコタマ文芸部

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 辺りが暗くなってきた。日は傾き夜の気配が近づく。部室内の空気も幾分夜の空気に変わり始めていた。
「暗くなっちゃったね」
 私は独り言のように呟いた。楓子は「だね」とだけ返した。
「はぁあ……。にしてもみんな遅いね……。もしからした来ないかもだけどさ」
 楓子は大あくびすると背伸びした。まるで猫みたいな背伸びだ。
「うん……。でも仕方ないよね。水貴くんたちのクラスは大変だと思うし」
 水貴、浩樹、御堂さん、中原くん……。残念ながら全員が当事者なのだ。むしろ今回の事件の主要メンバー全員が文芸部員……。まぁ中原くんに関しては昨日部員になったばかりだけれど。
「にしたってさぁ……。中原くんもだいぶアレだよね」
「まぁね。どっちにしても今日から入部とか無理があったかもね」
 なぜ中原くんは入部したのだろう? 今更ながらそんな疑問が浮かんだ。元々、彼は変わっているので単に思いつきかもしれない……。どっちにしても真相は彼しか分からないだろうけれど。
「そろそろ帰……」
 と言いかけた瞬間、部室のドアが開いた。
「ごめんごめん。遅くなった」
 そう言うと申し訳なさそうに浩樹が部室に入ってきた。彼の後ろには水貴、御堂さん、そして中原くんの姿がある。
「お疲れ様……。けっこう掛かったね」
「うん……。いや……。本当にね」
 浩樹は「ふぅ……」とため息を吐くといつもの席に腰を下ろした。
「えーと……。中原くんは楓子ちゃんの隣にお願い」
「うん。ありがとう」
 とりあえず全員指定の位置に座った。奥に私、私の右手に楓子、中原くん。左手に水貴、御堂さん。向かいに浩樹。そんな配置だ。
「満杯だな……」
 浩樹が独り言のように呟く。確かに未だかつてないぐらい部室の人口密度が高い。
「えーと……。みんな! 知ってるだろうけど中原くんが今日から文芸部に入部してくれました」
 私は部長として杓子定規すぎる挨拶をした。状況が状況なだけにかなり浮いた言葉だと思う。でもまぁ。仕方ないだろう。形式ばった形とはいえやらないともっと分からない展開になってしまう気がする。
「じゃあ……。中原くん。一応、自己紹介を……」
 私はそんな開き直ったような気持ちで中原くんに話を振った。
「はい。今日から文芸部に入部させていただきました中原大地です。よろしくお願いします」
 中原くんが自己紹介を終えると部室の空気は最高潮に最悪になった。特に浩樹は眉間に皺を寄せて何か言いたげにしている。

 こうして私たち文芸部は本格的にスタートしたのだ。順風満帆の反対。嵐の中での船出のように。
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