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第六章 ヘリオス幕張

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 ――太田さんはそこまで話すと両手で顔を覆った。そして「ごめんなさいごめんなさい」と誰に言うでもなく謝った。その姿はあまりもの痛々しくて……。私のイメージするお嬢様とはまるで別人のようだ。
「……マリーの話はここまでだね。ともかく今回香澄ちゃんたちが調べてたいじめ問題はマリー主導ってわけじゃなかったんだよ。ま、この子の言う通り全くの無関係ってわけでもないんだけどね」
 澪ちゃんは隣に座る太田さんの背中を擦りながらそう言った。そして「ここからは私が話すよ」と続ける。
「えーと。ちょっと話を整理させて……」
 私は澪ちゃんの話を聞く前にそう断った。そして「つまり今回のいじめは太田さんが指示したことじゃないってことでいいかな?」と確認した。もちろんこれはダメ押しの質問だ。話の流れ的に太田さんが今回無関係なのは明らかだし、主導した人間は別にいると考えた方が自然だと思う。
「うん。その認識で間違いないよ」
 澪ちゃんは私の質問に短くそう答えた。そして「やっぱり香澄ちゃんはいいね。話が早くて助かるよ」と続ける。
「でも……。正直今の話だけじゃ何も分からないね。たぶんB組の……。あの三人の中の誰かがいじめの主犯なんだろうけど」
 私はそう言うと目の前に置かれたコーヒーカップを何の気なしに覗き込んだ。カップの中には三日月型に固まったコーヒーのシミがあった。どうやら下に溜まったコーヒーが乾くほど太田さんの話に聞き入ってしまっていたらしい。
「ああ……。そうね。じゃあそのことも含めて話すわ」
 澪ちゃんはそう言うと「ふぅ」と軽いため息を吐いた。そして「ここからは香澄ちゃんにも覚悟して聞いて欲しい」と怖いことを言った――。
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