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第四章 株式会社ニンヒアレコード 新宿本社

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 翌朝。私は千歳ちゃんと一緒に登校した。そして学校に着くとすぐに澪ちゃんの元へ向かった。昨日の事の顛末を訊かねば。そう思ったのだ。
「おはよう澪ちん!」
 千歳ちゃんは普段通りの口調で澪ちゃんにそう挨拶した。澪ちゃんもそれに「おはよう」と普通に返した。普段と変わったところは特にない。事情を知らなければいつも通りの二人だと思う。
「香澄ちゃんもおはよ。羽田さんから話訊いた感じだよね?」
 澪ちゃんは机に教科書をしまいながらそう言った。私はそれに「うん」とだけ返す。
「……とりあえずお昼休みに話すよ。ちょっと長い話になりそうだしね」
「そっか。分かった! じゃあお昼にね」
 それから私たちは午前中の授業を淡々と熟した。一限目は英語。二限目は数学。三限目は服飾デザイン……。そんな風に授業はつつがなく進んでいった。本当に何事もなく。私たち三人はホワイトボードに書かれた内容を板書していった。こうして授業を受けていると昨日の話が嘘みたい。そう思うほどだ。
 そして四限目の実技授業が終わると私たちは旧校舎の屋上に向かった。昨日の今日で向かうには不穏な場所だけれど仕方ない。花見川高校内であそこ以上に他人の目がない場所もないのだ。
「お、珍しいね。香澄ちゃん今日はコンビニ弁当?」
 屋上に着くと澪ちゃんにそう言われた。
「うん。今朝は色々と慌ただしくてさ」
「そっか。んじゃとりあえずご飯食べちゃおう」
 澪ちゃんはそう言うとピンク色のお弁当箱を取り出した。中身は玉子焼きとウインナーとプチトマトとマカロニサラダ。絵に描いたような手作り弁当だ。
「……それで? 昨日はあの後どうなったの?」
 みんながお弁当を食べ終わると千歳ちゃんがそう口を開いた。澪ちゃんはそれに「ああ、うん」と返事すると紙パックのレモンティーを一口飲んでから軽いため息を吐いた。そして続ける。
「とりあえずは何とかなったよ。夜中だったけど藤岡くんのご両親がウチまで来てくれてね。それでちょっとお話した感じかな? だからひとまず彼も落ち着いたよ。ま……。当面は学校休みになるけどね」
 澪ちゃんはそこまで話すと急に表情を固くした。そして大きく首を横に振ると「……にしても参ったね」と肩を落とす。
「ありがとね澪ちん。フジやんのこと助けてくれて」
「ううん。いいんだよ。気にしないで。私が勝手にやったことだからさ。……ただねぇ。これから先、藤岡くんが学校来るのは難しいかもね。しばらくは休学って方向で話まとまったし……」
「……やっぱりお嬢のせい?」
「うーん……。マリー一人が全部悪いとは思わないけど……。あの子も主犯の一人ではあるかな? まぁあくまで私の見立てではだけど」
 澪ちゃんはそんな風に含みのある言い方をすると軽くうなじを指先で掻いた。そして「ま、B組の子たちにも話訊かないと何とも言えないけど」と渋い顔をした。おそらく澪ちゃん自身フジやんくんと話して何か感じるものがあったのだと思う。
「まぁ……。ともかくこれでこの件はとりあえず落ち着いたって感じだよ。……解決はしてないけどね」
 澪ちゃんはそう言うと深いため息を吐いた。そして「何か動きがあったら教えるよ」と言って力なく笑った。
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