113 / 136
第四章 月の墓標
36
しおりを挟む
「透子、最近宗一郎には会ったか?」
宗玄さんはさっきまでの流れを遮って透子さんにそんな風に話を振った。透子さんは「いいえ。しばらく会ってないです」と興味なさげに答える。
「ふむ……。京介。お前も知っていると思うが浦井の本家は後継者がいなくてな」
「はい、そうですね」
京介はまるでこれから何を言われるか知っているような口ぶりで答えた。話から察するに透也さんの家には子供がいないということらしい。
「まぁ……。それは構わんのだ。私はずっと創業家が経営しなければいけないとは思っているからな。ただ……。宗一郎はそういう考えではないらしい。あいつは私の息子ながらなかなか狡猾な男だよ。私から引き継いだ麻葉をあっという間にここまで大きくしてしまったんだからな」
宗玄さんはそこまで言うとゆっくり立ち上がった。そしてサイドボードの上の木箱から葉巻を取り出すと口にくわえた。すかさず透也さんがライターでその葉巻に火をつける。
「それでだ……。宗一郎の考えとしては京介を後継者にしたいらしい。まぁ当然だろう。一族の血の入った男児は浦井家にお前と惣介しかいないのだからな」
「そう……。らしいですね。社長からは昔何回か打診を受けました」
京介はそう言うと首を横に振った。
「そうか。まぁあの男のやりそうなことだな……。で、だ! お前に頼みたいことってのはその宗一郎のもくろみを潰して貰いたいんだ」
「え?」
京介は会長の発言が予想外だったのかあまりにも素っ頓狂な声を上げた。
「あいつはな……。宗一郎はこの世の支配者にでもなった気でいるのだと思う。その証拠に奴は節操なく企業買収に走っていてな。今以上に麻葉を大きくしようとしている。……。私から見ればそれは酷く愚かな行為だ。身の丈に合わん。まぁ……。それだけならまだ許せたんだがな」
宗玄さんはそこまで話すと葉巻を灰皿でもみ消した――。
そこで話は一時中断した。そしてすぐに料理が運ばれてきた。細長い皿の上に野菜と刺身が盛られている。どうやらこれが前菜らしい。
「まぁ話はあとだ。陽子さん。せっかくなので楽しんでいってください」
宗玄さんはそう言うと再びあの皺の寄った笑顔になった。
宗玄さんはさっきまでの流れを遮って透子さんにそんな風に話を振った。透子さんは「いいえ。しばらく会ってないです」と興味なさげに答える。
「ふむ……。京介。お前も知っていると思うが浦井の本家は後継者がいなくてな」
「はい、そうですね」
京介はまるでこれから何を言われるか知っているような口ぶりで答えた。話から察するに透也さんの家には子供がいないということらしい。
「まぁ……。それは構わんのだ。私はずっと創業家が経営しなければいけないとは思っているからな。ただ……。宗一郎はそういう考えではないらしい。あいつは私の息子ながらなかなか狡猾な男だよ。私から引き継いだ麻葉をあっという間にここまで大きくしてしまったんだからな」
宗玄さんはそこまで言うとゆっくり立ち上がった。そしてサイドボードの上の木箱から葉巻を取り出すと口にくわえた。すかさず透也さんがライターでその葉巻に火をつける。
「それでだ……。宗一郎の考えとしては京介を後継者にしたいらしい。まぁ当然だろう。一族の血の入った男児は浦井家にお前と惣介しかいないのだからな」
「そう……。らしいですね。社長からは昔何回か打診を受けました」
京介はそう言うと首を横に振った。
「そうか。まぁあの男のやりそうなことだな……。で、だ! お前に頼みたいことってのはその宗一郎のもくろみを潰して貰いたいんだ」
「え?」
京介は会長の発言が予想外だったのかあまりにも素っ頓狂な声を上げた。
「あいつはな……。宗一郎はこの世の支配者にでもなった気でいるのだと思う。その証拠に奴は節操なく企業買収に走っていてな。今以上に麻葉を大きくしようとしている。……。私から見ればそれは酷く愚かな行為だ。身の丈に合わん。まぁ……。それだけならまだ許せたんだがな」
宗玄さんはそこまで話すと葉巻を灰皿でもみ消した――。
そこで話は一時中断した。そしてすぐに料理が運ばれてきた。細長い皿の上に野菜と刺身が盛られている。どうやらこれが前菜らしい。
「まぁ話はあとだ。陽子さん。せっかくなので楽しんでいってください」
宗玄さんはそう言うと再びあの皺の寄った笑顔になった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる