17 / 21
第17話
しおりを挟む
「メグじゃなくて私だったのびっくりしたでしょ? かわいいメグちゃんは、本当はこんな姿でずっと生きてきたのよ」
「お姉さんのこと、ぼくは好きですよ。今の姿も、小さくなってる時の姿も」
千華が無事に退勤して、手をつないで帰りながらミコトがそう言った。それはからかっているわけではないのだ。
「こんなつまらない顔でも?」
「全然つまらなくなんてないですよ。ぼくの目から言うと……かわいいと思いますけど」
「ああ、そうか、キモカワとか愛嬌があるとかそういうやつね」
「じゃなくて……!」
ミコトは両手でしっかり千華の手を握り、まっすぐ彼女の目を見上げた。
「わかって。千華はかわいい、美しい」
「こ、子供のくせに何を……」
千華は顔を真っ赤にして目を逸らした。しかしミコトは逃がしてくれない。
「ぼくは子供で、しかも人間じゃないから、感覚が違うのは仕方ないけど、千華はかわいいよ。人間がどう思うか知らないけど、ぼくの言うことの方が正しい」
「うっく……その言葉……言ってくれる人が、10年前に現れていたら……嬉しかったわ……。ああ、でも人間だとそうは言ってくれないんだ。私は、魔法少女だったけど……人間なのよ、人間がよく思われたいのは人間からなのよ。だけどそれはもうどうしようもないのだわ」
「ぼくじゃだめなの?」
「ミコトくんの気持ちは嬉しいけど、子供なんだから、子供らしくしてなさい」
「分からず屋!」
「な、何よ……」
「ぼくがもっと強くなったら、きっと……」
ミコトが黙ってしまったので、千華もなんだか悲しい気持ちで歩く。そういえば、もうメグに戻ってもいいんだと思って、そうした。つないでた手が大きくなった。千華の姿から、変身解除してメグの姿になると、身体が小さくなり、相対的にミコトが大きく感じる。でも、やっぱり子供だ。女子中学生と5~6歳児くらいの差。
「あら、これじゃ補導されちゃうわね」とメグは冗談を言った。
「それはお昼にもうされたよ」
「えっ!」
家に帰るとミコトは今日のことを話した。
「なんか、街で急に変な感じになって、もやもやした怪物みたいなのが出てきたの。襲ってくるかと思ったら、また別の鎧みたいなのが出てきて、それを倒したら帰っていって元通りになったんだ」
「ああ、それは私の敵ね……それと十年以上も戦ってきたのよ。鎧っていうのは、ハルトくんが操ってるの、操ってるのか自動なのか知らないけど」
「ハルトか……」
「嫌い?」
「嫌いというんじゃないけど、なんなんだろう、よくわかんないや」
「私もわからない。いえもちろん好きよ! 感謝もしてるし。でも不思議な人よねえ」
「あれが本気になったら、世界を滅ぼすこともできるんじゃない?」
「まさか」
「なんでまさかと思うの?」
「だって、ハルトってすごく真面目な良い人よ。今までだって、なんか異世界で人のためにすごく大変な戦いをしてきたんだから」
「ああそれはぼくは知らないけど。人柄とか、経歴とか、わかんないけど、ただ普通じゃない力があるのは知ってる。そういうぼくの視点だと、怖い気持ちだけがあるの、わかってくれる?」
「……そうかもね」
ミコトの言葉に一応は同意したが、メグにはハルトをそういう風に見ることはできなさそうだった。
翌朝になったら、千華に変身してまた出勤しないといけない。昨日も働いたのになんと今日も仕事があるのだ。だからミコトに言い聞かせないといけない。
「いい? 家からあんまり出たらだめだからね。ミコトくんは私の思うよりはるかに頭が良いから、こんなこと言われてもうるさいかもしれないけど……危ないんだから」
正直、ミコト自身も危ないと思うけど、家の中も心配になる千華だった。万一にも鍵を開けたまま出られると困る。
「ぼく、扉開けずに出るから大丈夫だよ」
「どういうこと?」
「え、ほらこうやって」と、すっと外に出てまた戻ってきた。「最初に来た時もこうしてたでしょ?」
「そ、そうだったんだ……すごいね……」
泥棒し放題だなこれ……でも、ミコトくんはいい子だしそもそもそういう物欲はなさそうだから、悪いことはしないだろう。千華はそう信じることにした。
「じゃあ、自由にするのはいいけど(というか止めたくても止められないみたいだけど)、絶対に気をつけるのよ」
「うん、わかったよ」
千華はまだミコトが心を操れることを知らないので、こんなかわいい子が一人でいるのは危険極まると思っている。指切りまでして彼女は出勤していった。
ミコトは見聞を広めたいし人々に愛されもしたい。どちらも彼の力になるが、どちらかといえば後者がほしい。だが、さしあたって今日は大人しく本を読んだりすることにしよう。
千華の部屋は……教養の本もあれば自分を磨く本もあれば、雑誌もあれば小説もあってマンガもある。手当たり次第に読んだ。さらにはテレビも見たしネットもやった。大変勉強になった。特に、『SP』を読むことでハルトのことがわからなくなった。お姉ちゃんから聞いてたけど、本当にこれが、あのハルトなのかな?とミコトは不思議に思った。
その頃、ハルトはというと田舎の町へ熊を退治しに来ていた。ハルトからすると、いかに熊が強かろうとも、赤子の手をひねるようなものだ。実際にその手をつないで、人里から離れた山奥まで一緒に歩いて連れて行く。歩きながら彼は考える。
「ただ山奥に連れて行くだけじゃ、餌がなくて結局戻って来るだけなんじゃないかなあ。それにこの子は一人で生きていけるんだろうか」異世界のおぞましい魔物、モンスターと比べれば熊はかわいいものだ。「家族がいるんだろうか? 実は子熊がいて、帰ったら餌を待ってるなんてことだったらどうしよう。それはかわいそうだ。後で探してみようか、念の為。いや、まずは聞いてみるか。きみ、家族はいるのか?」
「いない」
いないらしい。別に、熊が喋ったわけではなく、そういう意思が伝わったのである。でも、熊の記憶力がどのくらいあるのか謎だ。別に木の股から産まれたというわけでもあるまいに、家族がいないものなのか。
「まあ、私のことだよなあ木の股から産まれたような人間ってのは。一応、神の子なんだけど」
「まじで?」
と言いたげな驚いたような目で熊がハルトを見る。なんだか、知能がそれなりに高いようだ。動物は喋らなかったらかわいいのだが、喋りだすとちょっと生意気に感じる。喋っているわけではないが。
余計なことを話すのはやめようと思い、ハルトはその辺の木の実や食べそうなのを手の上に集めて熊にくれてやる。食わせて黙らせておこう。所詮は動物なので、食べていれば幸せになれるのが羨ましい。かといってなりたいわけじゃないけど。こいつも餌さえあれば人と仲良くして、邪険にされることもなかったのだろうか。いや、この爪や人間を圧倒する体がある限りは、どんないい子でもだめか。馴染むには自由を捨てる必要がある。強いばかりに自由を捨てなくてはならない。ハルトくらいに強ければそれも逆転するだろうけど。あるいは、自由なんてものより安定した生活の方がほしいか?
熊のやつを無事、遠くの餌が結構ある場所まで誘導してやった。仲間の熊もいるようだ。念の為、3匹で記念撮影もして証拠を撮った。お陰で少しはお金が入った。動物愛護団体も喜んでくれるだろう。
まとまった金になったので、お布施に来た。いつもそうしている。近くにあった、芸術の神様が祀られている神社、特に小説の神様であるらしく、日本中で有名だとか。なんでそこにお布施しようと思ったのかはハルト自身にはよくわからないが、小説という縁はある。神の子としては、神に感謝するのはまあ自然の流れかもしれない。
その時、ロールキャベツも神社に来た。ハルトと違って、小銭を賽銭箱に入れ、しかし熱心に祈っている。若干気まずい気もするが、挨拶したかったので、ハルトはそれを待っていた。
「なによ?」
キャベツも気づいていたようで、祈りが終わると刺々しくハルトを睨んだ。身なりが乱れていて、家から発作的に来たような感じだ。
「いえ、あの……お元気そうで何よりです……」
この人に対してはどうも気持ちが弱い。まして相手から強く来られると、腰が引けてしまう。
「私を笑ってるんでしょ? 全然話が書けないから。いつまで待ったら俺の世界を救ってくれるんだって思ってるでしょ!」
「そ、そんなこと思ってないです。いえ、思っているといえば思ってますけどでもあなたのこと尊重してますから」
「ふん、あーそう! どうしたらいいのかな、あんたがもっと強ければいいのに……」
「強くしてもいいじゃないですか?」
「話が矛盾しておかしくなるでしょうが」
「じゃあ、何か不思議な力がどこかから現れるとか……」
「それは……やだ。あんたがハルトだったらそんなので嬉しいの?」
「神の力が目覚めてはだめですか?」
今、現実でそうなってるみたいに……とは言わなかった。
「神の力っていってもあんなの匂わせただけでなんにも考えてないもの」
「あ、そうなんですね……」
なんともいえないやり取りになってしまった。そっとしておくしかないのかもしれない。
「だけど、前にも申し上げましたが、自分で生み出したとはいえ、キャラクターへの愛や慈悲を忘れないでほしいのです。生きているんですから」
「創作の中くらい自由に書かせてよ……」
確かに自由に書けたらいいのだが、どちらにしてもキャベツ氏は先の展開がにっちもさっちもいかなくなって詰まっている。どうしてこれが自由といえるのだろうか。結局のところ、一度始まった物語は作者でありながらも、子供のように作者の手を離れている。そこで自由にするのは無責任であるかもしれない。
だが、無責任が悪いのかといえば、何も悪いことはない。本当に自由に書くのが許されるのなら、悪魔王に負けて死なせて終わりにしたいと考えてしまう瞬間もある。何が悪いというのか。そこに読者をがっかりさせる、失望させる、作品として駄作に落ちるという不安がある。キャベツはそれが怖い。まして何やら主人公っぽいやつが目の前に出てきて文句を言ってくるのである。
「そもそも、そもそもね。話の中であんたたちが勝手に動くから悪い。まあ一番勝手に動いたのは悪魔王だけど」
「あの悪魔王が人間と悲恋をしていたとは知りませんでした」
「まあ……そうなのよね……困ったものよね。ああいうトップの立場で個人的なそういう感情に囚われて暴走するのはどうかとも思うわ。まあそのおかげでものすごく強くなったから、結果あっちの陣営としては良かったけど、まあ部下もその暴走の八つ当たりでたくさん死んでるけどね笑」
※笑じゃないよ(ツッコミ作者注)
「お姉さんのこと、ぼくは好きですよ。今の姿も、小さくなってる時の姿も」
千華が無事に退勤して、手をつないで帰りながらミコトがそう言った。それはからかっているわけではないのだ。
「こんなつまらない顔でも?」
「全然つまらなくなんてないですよ。ぼくの目から言うと……かわいいと思いますけど」
「ああ、そうか、キモカワとか愛嬌があるとかそういうやつね」
「じゃなくて……!」
ミコトは両手でしっかり千華の手を握り、まっすぐ彼女の目を見上げた。
「わかって。千華はかわいい、美しい」
「こ、子供のくせに何を……」
千華は顔を真っ赤にして目を逸らした。しかしミコトは逃がしてくれない。
「ぼくは子供で、しかも人間じゃないから、感覚が違うのは仕方ないけど、千華はかわいいよ。人間がどう思うか知らないけど、ぼくの言うことの方が正しい」
「うっく……その言葉……言ってくれる人が、10年前に現れていたら……嬉しかったわ……。ああ、でも人間だとそうは言ってくれないんだ。私は、魔法少女だったけど……人間なのよ、人間がよく思われたいのは人間からなのよ。だけどそれはもうどうしようもないのだわ」
「ぼくじゃだめなの?」
「ミコトくんの気持ちは嬉しいけど、子供なんだから、子供らしくしてなさい」
「分からず屋!」
「な、何よ……」
「ぼくがもっと強くなったら、きっと……」
ミコトが黙ってしまったので、千華もなんだか悲しい気持ちで歩く。そういえば、もうメグに戻ってもいいんだと思って、そうした。つないでた手が大きくなった。千華の姿から、変身解除してメグの姿になると、身体が小さくなり、相対的にミコトが大きく感じる。でも、やっぱり子供だ。女子中学生と5~6歳児くらいの差。
「あら、これじゃ補導されちゃうわね」とメグは冗談を言った。
「それはお昼にもうされたよ」
「えっ!」
家に帰るとミコトは今日のことを話した。
「なんか、街で急に変な感じになって、もやもやした怪物みたいなのが出てきたの。襲ってくるかと思ったら、また別の鎧みたいなのが出てきて、それを倒したら帰っていって元通りになったんだ」
「ああ、それは私の敵ね……それと十年以上も戦ってきたのよ。鎧っていうのは、ハルトくんが操ってるの、操ってるのか自動なのか知らないけど」
「ハルトか……」
「嫌い?」
「嫌いというんじゃないけど、なんなんだろう、よくわかんないや」
「私もわからない。いえもちろん好きよ! 感謝もしてるし。でも不思議な人よねえ」
「あれが本気になったら、世界を滅ぼすこともできるんじゃない?」
「まさか」
「なんでまさかと思うの?」
「だって、ハルトってすごく真面目な良い人よ。今までだって、なんか異世界で人のためにすごく大変な戦いをしてきたんだから」
「ああそれはぼくは知らないけど。人柄とか、経歴とか、わかんないけど、ただ普通じゃない力があるのは知ってる。そういうぼくの視点だと、怖い気持ちだけがあるの、わかってくれる?」
「……そうかもね」
ミコトの言葉に一応は同意したが、メグにはハルトをそういう風に見ることはできなさそうだった。
翌朝になったら、千華に変身してまた出勤しないといけない。昨日も働いたのになんと今日も仕事があるのだ。だからミコトに言い聞かせないといけない。
「いい? 家からあんまり出たらだめだからね。ミコトくんは私の思うよりはるかに頭が良いから、こんなこと言われてもうるさいかもしれないけど……危ないんだから」
正直、ミコト自身も危ないと思うけど、家の中も心配になる千華だった。万一にも鍵を開けたまま出られると困る。
「ぼく、扉開けずに出るから大丈夫だよ」
「どういうこと?」
「え、ほらこうやって」と、すっと外に出てまた戻ってきた。「最初に来た時もこうしてたでしょ?」
「そ、そうだったんだ……すごいね……」
泥棒し放題だなこれ……でも、ミコトくんはいい子だしそもそもそういう物欲はなさそうだから、悪いことはしないだろう。千華はそう信じることにした。
「じゃあ、自由にするのはいいけど(というか止めたくても止められないみたいだけど)、絶対に気をつけるのよ」
「うん、わかったよ」
千華はまだミコトが心を操れることを知らないので、こんなかわいい子が一人でいるのは危険極まると思っている。指切りまでして彼女は出勤していった。
ミコトは見聞を広めたいし人々に愛されもしたい。どちらも彼の力になるが、どちらかといえば後者がほしい。だが、さしあたって今日は大人しく本を読んだりすることにしよう。
千華の部屋は……教養の本もあれば自分を磨く本もあれば、雑誌もあれば小説もあってマンガもある。手当たり次第に読んだ。さらにはテレビも見たしネットもやった。大変勉強になった。特に、『SP』を読むことでハルトのことがわからなくなった。お姉ちゃんから聞いてたけど、本当にこれが、あのハルトなのかな?とミコトは不思議に思った。
その頃、ハルトはというと田舎の町へ熊を退治しに来ていた。ハルトからすると、いかに熊が強かろうとも、赤子の手をひねるようなものだ。実際にその手をつないで、人里から離れた山奥まで一緒に歩いて連れて行く。歩きながら彼は考える。
「ただ山奥に連れて行くだけじゃ、餌がなくて結局戻って来るだけなんじゃないかなあ。それにこの子は一人で生きていけるんだろうか」異世界のおぞましい魔物、モンスターと比べれば熊はかわいいものだ。「家族がいるんだろうか? 実は子熊がいて、帰ったら餌を待ってるなんてことだったらどうしよう。それはかわいそうだ。後で探してみようか、念の為。いや、まずは聞いてみるか。きみ、家族はいるのか?」
「いない」
いないらしい。別に、熊が喋ったわけではなく、そういう意思が伝わったのである。でも、熊の記憶力がどのくらいあるのか謎だ。別に木の股から産まれたというわけでもあるまいに、家族がいないものなのか。
「まあ、私のことだよなあ木の股から産まれたような人間ってのは。一応、神の子なんだけど」
「まじで?」
と言いたげな驚いたような目で熊がハルトを見る。なんだか、知能がそれなりに高いようだ。動物は喋らなかったらかわいいのだが、喋りだすとちょっと生意気に感じる。喋っているわけではないが。
余計なことを話すのはやめようと思い、ハルトはその辺の木の実や食べそうなのを手の上に集めて熊にくれてやる。食わせて黙らせておこう。所詮は動物なので、食べていれば幸せになれるのが羨ましい。かといってなりたいわけじゃないけど。こいつも餌さえあれば人と仲良くして、邪険にされることもなかったのだろうか。いや、この爪や人間を圧倒する体がある限りは、どんないい子でもだめか。馴染むには自由を捨てる必要がある。強いばかりに自由を捨てなくてはならない。ハルトくらいに強ければそれも逆転するだろうけど。あるいは、自由なんてものより安定した生活の方がほしいか?
熊のやつを無事、遠くの餌が結構ある場所まで誘導してやった。仲間の熊もいるようだ。念の為、3匹で記念撮影もして証拠を撮った。お陰で少しはお金が入った。動物愛護団体も喜んでくれるだろう。
まとまった金になったので、お布施に来た。いつもそうしている。近くにあった、芸術の神様が祀られている神社、特に小説の神様であるらしく、日本中で有名だとか。なんでそこにお布施しようと思ったのかはハルト自身にはよくわからないが、小説という縁はある。神の子としては、神に感謝するのはまあ自然の流れかもしれない。
その時、ロールキャベツも神社に来た。ハルトと違って、小銭を賽銭箱に入れ、しかし熱心に祈っている。若干気まずい気もするが、挨拶したかったので、ハルトはそれを待っていた。
「なによ?」
キャベツも気づいていたようで、祈りが終わると刺々しくハルトを睨んだ。身なりが乱れていて、家から発作的に来たような感じだ。
「いえ、あの……お元気そうで何よりです……」
この人に対してはどうも気持ちが弱い。まして相手から強く来られると、腰が引けてしまう。
「私を笑ってるんでしょ? 全然話が書けないから。いつまで待ったら俺の世界を救ってくれるんだって思ってるでしょ!」
「そ、そんなこと思ってないです。いえ、思っているといえば思ってますけどでもあなたのこと尊重してますから」
「ふん、あーそう! どうしたらいいのかな、あんたがもっと強ければいいのに……」
「強くしてもいいじゃないですか?」
「話が矛盾しておかしくなるでしょうが」
「じゃあ、何か不思議な力がどこかから現れるとか……」
「それは……やだ。あんたがハルトだったらそんなので嬉しいの?」
「神の力が目覚めてはだめですか?」
今、現実でそうなってるみたいに……とは言わなかった。
「神の力っていってもあんなの匂わせただけでなんにも考えてないもの」
「あ、そうなんですね……」
なんともいえないやり取りになってしまった。そっとしておくしかないのかもしれない。
「だけど、前にも申し上げましたが、自分で生み出したとはいえ、キャラクターへの愛や慈悲を忘れないでほしいのです。生きているんですから」
「創作の中くらい自由に書かせてよ……」
確かに自由に書けたらいいのだが、どちらにしてもキャベツ氏は先の展開がにっちもさっちもいかなくなって詰まっている。どうしてこれが自由といえるのだろうか。結局のところ、一度始まった物語は作者でありながらも、子供のように作者の手を離れている。そこで自由にするのは無責任であるかもしれない。
だが、無責任が悪いのかといえば、何も悪いことはない。本当に自由に書くのが許されるのなら、悪魔王に負けて死なせて終わりにしたいと考えてしまう瞬間もある。何が悪いというのか。そこに読者をがっかりさせる、失望させる、作品として駄作に落ちるという不安がある。キャベツはそれが怖い。まして何やら主人公っぽいやつが目の前に出てきて文句を言ってくるのである。
「そもそも、そもそもね。話の中であんたたちが勝手に動くから悪い。まあ一番勝手に動いたのは悪魔王だけど」
「あの悪魔王が人間と悲恋をしていたとは知りませんでした」
「まあ……そうなのよね……困ったものよね。ああいうトップの立場で個人的なそういう感情に囚われて暴走するのはどうかとも思うわ。まあそのおかげでものすごく強くなったから、結果あっちの陣営としては良かったけど、まあ部下もその暴走の八つ当たりでたくさん死んでるけどね笑」
※笑じゃないよ(ツッコミ作者注)
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。~趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました~
シロ鼬
ファンタジー
才能、素質、これさえあれば金も名誉も手に入る現代。そんな中、足掻く一人の……おっさんがいた。
羽佐間 幸信(はざま ゆきのぶ)38歳――完全完璧(パーフェクト)な凡人。自分の中では得意とする持ち前の要領の良さで頑張るが上には常に上がいる。いくら努力しようとも決してそれらに勝つことはできなかった。
華のない彼は華に憧れ、いつしか伝説とつくもの全てを追うようになり……彼はある日、一つの都市伝説を耳にする。
『深夜、山で一人やまびこをするとどこかに連れていかれる』
山頂に登った彼は一心不乱に叫んだ…………そして酸欠になり足を滑らせ滑落、瀕死の状態となった彼に死が迫る。
――こっちに……を、助けて――
「何か……聞こえる…………伝説は……あったんだ…………俺……いくよ……!」
こうして彼は記憶を持ったまま転生、声の主もわからぬまま何事もなく10歳に成長したある日――
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画
円田時雨
ファンタジー
「あなたを幸せにするためにやってきた魔法少女みたいなもんですっ!」
異世界でもなんでもないのに突然やってきた自称魔法少女たち。
俺に隠された力があるとかなんとか言ってるが、頼むから俺の平凡な日常を奪い去らないでく……
「これからよろしくっ!マスターっ!」
こうして俺と3人の魔法少女たちのビミョーな非現実的日常生活が始まった!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる