9 / 16
第9話 待ち合わせ。
しおりを挟む
ある日の朝。
突然、凛が言った。
「それでプレゼント、何にするの?」
え。なんのことだろ。
プレゼントのおねだりか?
「は? 何言ってんの。おまえ」
凛はため息をつく。
「はぁ……。らいお父さんが可哀想」
ちなみにライとは親父の名前だ。
雷と書いてライ。個性的な名前だよな。
俺が分かってないと気づいたのだろう。
凛は続ける。
「だから、もうすぐ貴方のお父さんの誕生日でしょ?」
あぁ。そうか。すっかり忘れてた。
すると、凛はお姉さん口調になる。
「と、いうことで。次の週末は、買い物にいくから空けておくように」
え。それって。
気づいたときには、口から言葉が出ていた。
「それって、デート?」
すると、凛は。
足を蹴りのように持ち上げて、俺を威嚇した。
「んなわけないでしょ!! 死んでしまえ!!」
当日。
凛は用事で先に家を出るらしいので、駅前で待ち合わせをした。
あんなこと言われたけれど、駅前で女の子と待ち合わせなんて生まれて初めてだし。やっぱり、楽しみでドキドキしてしまう。服もすごく悩んだし。
凛のやつ。
遅いな。
俺は何度も腕時計をみる。
もう待ち合わせ時間を随分過ぎている。
なにかあったのかな?
そう心配になりだした頃。
凛がきた。
あれは……。
前に本屋さんに来た時のワンピースだ。
今日も胸元と髪留めに紫のリボンを結んでいる。
ただ、今日の凛は。
サイドテールで後ろ髪を肩のあたりから前に回していて、少しだけ大人びてみえる。
白くて大きなツバの麦わら帽子をかぶっていた。
風が吹き、帽子が飛ばされそうになる。
凛は帽子の端を押さえながら、タタッと軽い足取りでこっちに駆け寄ってきた。
「ごめーん。待たせちゃった?」
その声は、いつもの刺々しい口調じゃなくて、優しげで女の子然としていて。口元を綻ばせ、にこにこしている。
風のせいで、凛の片目が閉じてウィンクのようになっていた。
凛は、俺の目の前までくると、首を傾げて見上げるような体勢になる。
「へぇ……。今日はちょっとだけカッコいいじゃん」
彼女らしくないことを言うのだった。
そして、切れ長だけれど、くっきり二重の大きな目で見つめてくる。
改めてみると、まつ毛長いなぁ。白目のところが真っ白で、瞳がさらに綺麗に見える。
凛は不思議そうな顔をした。
「どうしたの?」
しまった。つい見惚れてしまった。
やっぱ、5位じゃなかった。
こいつ、俺が生まれてから出会った女性の中で、1番可愛い。
凛はしっかりしていて、きっと俺よりもたくさん苦労しているのだろう。色々なことをよく分かっている。だから、世間知らずの俺には、時々、彼女が眩しく見えてしまう。
凛は性格が悪くてキツいはずなのに、気づけば、こいつを肯定する理由を探している自分がいる。
……男子高校生とか、世界一ちょろい生物なんだからさ。勘弁してくれ。
その瞳で見つめられると、ドキドキしちゃうよ。
突然、凛が言った。
「それでプレゼント、何にするの?」
え。なんのことだろ。
プレゼントのおねだりか?
「は? 何言ってんの。おまえ」
凛はため息をつく。
「はぁ……。らいお父さんが可哀想」
ちなみにライとは親父の名前だ。
雷と書いてライ。個性的な名前だよな。
俺が分かってないと気づいたのだろう。
凛は続ける。
「だから、もうすぐ貴方のお父さんの誕生日でしょ?」
あぁ。そうか。すっかり忘れてた。
すると、凛はお姉さん口調になる。
「と、いうことで。次の週末は、買い物にいくから空けておくように」
え。それって。
気づいたときには、口から言葉が出ていた。
「それって、デート?」
すると、凛は。
足を蹴りのように持ち上げて、俺を威嚇した。
「んなわけないでしょ!! 死んでしまえ!!」
当日。
凛は用事で先に家を出るらしいので、駅前で待ち合わせをした。
あんなこと言われたけれど、駅前で女の子と待ち合わせなんて生まれて初めてだし。やっぱり、楽しみでドキドキしてしまう。服もすごく悩んだし。
凛のやつ。
遅いな。
俺は何度も腕時計をみる。
もう待ち合わせ時間を随分過ぎている。
なにかあったのかな?
そう心配になりだした頃。
凛がきた。
あれは……。
前に本屋さんに来た時のワンピースだ。
今日も胸元と髪留めに紫のリボンを結んでいる。
ただ、今日の凛は。
サイドテールで後ろ髪を肩のあたりから前に回していて、少しだけ大人びてみえる。
白くて大きなツバの麦わら帽子をかぶっていた。
風が吹き、帽子が飛ばされそうになる。
凛は帽子の端を押さえながら、タタッと軽い足取りでこっちに駆け寄ってきた。
「ごめーん。待たせちゃった?」
その声は、いつもの刺々しい口調じゃなくて、優しげで女の子然としていて。口元を綻ばせ、にこにこしている。
風のせいで、凛の片目が閉じてウィンクのようになっていた。
凛は、俺の目の前までくると、首を傾げて見上げるような体勢になる。
「へぇ……。今日はちょっとだけカッコいいじゃん」
彼女らしくないことを言うのだった。
そして、切れ長だけれど、くっきり二重の大きな目で見つめてくる。
改めてみると、まつ毛長いなぁ。白目のところが真っ白で、瞳がさらに綺麗に見える。
凛は不思議そうな顔をした。
「どうしたの?」
しまった。つい見惚れてしまった。
やっぱ、5位じゃなかった。
こいつ、俺が生まれてから出会った女性の中で、1番可愛い。
凛はしっかりしていて、きっと俺よりもたくさん苦労しているのだろう。色々なことをよく分かっている。だから、世間知らずの俺には、時々、彼女が眩しく見えてしまう。
凛は性格が悪くてキツいはずなのに、気づけば、こいつを肯定する理由を探している自分がいる。
……男子高校生とか、世界一ちょろい生物なんだからさ。勘弁してくれ。
その瞳で見つめられると、ドキドキしちゃうよ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる