24 / 29
第24話 5人目のお客様(中編)
しおりを挟む週が明けて、また学校がはじまった。
相変わらず校門では足が止まるが、エマが一緒なので、なんとか通えている。
1時間目は魔法の授業。
今回も講師はエトスさんだ。
宿題の発表の時間になった。
次々に発表がされていく。
馴染みのないテーマなのに、皆それぞれ頑張っていて、中には、種族による魔力量の違いについてなんてものもった。
それによれば、猫耳族は上位1割に入っており、人間族は真ん中より少し下らしい。魔術が発展してきた経緯を考えれば、納得だ。
そして、わたしたちの順番になった。
エマに説明してもらう。
「ほとんど村人は、魔法なんて一生、縁がないものだと思っています。だけれど実際……」
実際には、必要な魔力量に達していないだけで、ハードルを下げれば使える人は少なくないのだ。
教室にざわめにが起きる。
そこかしこから、本当?、まさかぁ、という声が聞こえる。
すると、エマは事前に図形を描いた背丈の半分ほどの紙を床に敷いた。
そして、その前で両手の平を広げ、肩の高さまで上げると、ハッキリとした発音で唱えた。
「「一つ星の春風(シングルスター•スプリングブリーズ)」」
紙に描いた図形が一瞬光り。
フワッと暖かい風が、教室の中を吹き抜ける。
教室の窓は開いていない。
風が外から入ることはあり得ない。
すると、教室のざわめきは、歓声まじりのどよめきに変わった。
数名の生徒がエマに駆け寄る。
その全員が、キラキラした目をエマに向けて、エマを質問責めにしている。
わたしはその光景を見て安心した。
昨日の夜、お母さんに聞かれたのだ。
「最近、エマちゃんが良く来るけれど、あなた達そんなに仲良かったっけ?」
「いや、実は……」
わたしは、エマが学校でイジメにあっていること。そして、わたしはその解決を手伝っていることを話した。
「どうりでねぇ。いきなりあなたが学校に行くとか言い出したから、何かあるなとは思ってたのよね」
「でもね、わたしも、どうしたらエマが皆んなと仲良くなれるか分からないんだ……。それは、自分の時も解決できなかったことだから」
お母さんは、わたしが子供の頃にどんなことがあったのか、大体は知っているんだと思う。
お母さんは、少し考えると、わたしの前で膝を曲げた。
そして、わたしが小さな子供だった時の視線の高さまで腰をかがめると、わたしの手を握って話し始めた。
「これは、わたしの経験だけどね。勉強でも、運動でも。ムードメーカーになることでもいい。これはこの子には勝てない、と思われるものを作ることだよ」
「そんなものなの?」
「それで、必ず解決出来るわけではないけれどね。だけれど、目に見えない精神論に頼るよりは、試す価値はあると思うよ。現に、エマちゃんがあなたを見る目。最近のアナタを見て変わったんじゃないのかな?」
その時のわたしは半信半疑だったけれど。
今の目の前の光景をみたら、納得せざるを得ない。
あとは、エマの良さが皆に伝われば大丈夫だろう。また何かあっても、これからはクラスの皆が彼女を守ってくれると思う。
ところが。
「そんなそよ風、大したことないっしょ!」
スージーは、大声をあげて不満を露わにする。
さて、今度はあっちか。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる