ねこ耳娘の異世界なんでも屋♪

おもち

文字の大きさ
上 下
16 / 29

第16話 王子様とデート

しおりを挟む

 部屋に帰って、天蓋のついたベッドに横になった。ゴロゴロしても落ちないしフカフカだ。

 このベッドいいなあ。
 さっきのことについて考える。

 王妃さまは、前のご主人が好きだけれど、今の旦那様のことも好きなのかな?

 きっと、そうなのだろう。
 時間を積み重ねた大人の恋愛は難しい。

 すると、またドアがノックされる。

 「はーい!」

 ドアを開けると、中年の男性がいた。

 なんだか、この後の展開が想像つく。
 正直なことをいうと、今すぐこの扉を閉めたい……。

 男性は名乗る。

 「夜分にすまんね。わたしの名は、ハルベルト・フォン・ラインライトという」

 ほら。やっぱり。
 絶対に王様だ。

 会食の前に全員と会っちゃったよ。
 ……わたし、このまま帰っていいですか?

 男性は、足から頭の先まで、品定めをするようにわたしを見る。

 「なるほど。セドルのやつ面食いだな。どうりで、お見合いを拒むわけだ。ところで、お願いがあるのだが……」

 なんだか、さっきも聞いた気がするよ。
 この会話。
 
 部屋から追い出したいけれど。
 相手は王様だ。やっぱり、まずいよね?

 お部屋に招き入れると良くなさそうなので、申し訳ないけれど、その場でお話を聞くことにした。

 すると、王様はトーンを落として話し出した。

 「実は、わが妃のマリアーヌが、大切なものを失くして困っているようなのだ……」

 ほらきた。
 わたしは即答する。

 「それ、解決しました。さっき、マリアーヌ様と見つけましたよ」

 すると、王様は少し驚いた顔をした。

 「そうか、さすがだな。では、もう一つお願いが……」

 ロクなことではないと思うが、無碍むげにもできない。

 「なんですか?」

 「私は、子供が息子しかいないから、娘に憧れててな。お義父さんと呼んではくれぬか?」

 予想どおりロクなことじゃない……。
 相手は王様だ。仕方ない。
 がんばれ! わたし。

 「おとうさま……」
 王様はたいそう嬉しそうにしている。

 「じゃあ、次は、パパと呼んではくれぬか……」

 キリがない。
 わたしは、「無理でーす!!」というと、扉を閉めた。

 セドルさんのご両親は気取った感じがない。きっと、だからセドルさんもあんな感じなんだろうなぁ。



 次の日になって、朝食を終えてお腹が落ち着いた頃、セドルさんが迎えにきた。

 「さぁ、予定のデートのトレーニングに行きましょう」

 いまさら、トレーニングなんていらない気はするけれど、約束だもんね。

 セドルさんについて市街地に向かう。

 まず、商店街にいって、色々みてまわった。わたしが気になるものがあると、すぐにセドルさんは買おうとしてしまう。制止するのが大変だ。
 
 セドルさんは、後ろ歩きをしがら話しかけてくる。

 「そんなに遠慮しなくていいんだよ? じゃあ、せめてこれくらいは受け取ってよ」

 あ、これは、わたしがさっき手に取っていた葉っぱデザインの指輪だ。

 もう買っちゃったみたいだし、受けとらないと失礼だよね。わたしは手を伸ばして受け取る。

 さっそくつけてみる。
 やっぱり可愛い。

 ……嬉しいかも。
 「ありがとうございます」

 すると、セドルさんはおもむろに同じものをもう一つ出し、自分の指にはめた。

 え。

 これって、ペアリングなのかな。
 耳がカーッと熱くなってるのが自分でも分かる。

 わたしがモジモジしていると、手を取って引っ張られた。ふわっとわたしの身体は持ち上がる。

 凝り固まりかけた気持ちが少しだけ身軽になるようだった。

 そして、また並んで歩き出す。



 川縁かわべりでランチをする。
 セドルさんは、シートを敷くと、2人分のお弁当を広げた。

 お弁当箱を開けると、お肉を焼いたような芳ばしい匂いがした。お弁当はどこまでも普通で、いかにも手作りといった感じがする。美味しそう。

 これは、マリアーヌさんが作ってくれたらしい。さっそくお願いを聞いてくれたようで良かった。

 マリアーヌさんはケリーさんと各地を旅したことがあるから、料理をする機会も多かったのだろう。

 玉子焼きを食べてみる。

 うん。美味しい。
 気持ちがホカホカになるお母さんの味だ。

 セドルさんはどうかな……?
 よかった。美味しそうにバクバク食べている。

 喜んでくれているみたいだ。

 マリアーヌさんは実のお母さんじゃないから、本当は複雑な部分もあるかも知れない。

 けれど、やはりセドルさんの気持ちは大きい。

 わたしはきっとそうじゃないから、そういうのカッコいいと思う。



 そのあとは、川で水面に足をつけて並んで座った。足をブラブラして、水面にパシャパシャと波を立てる。

 セドルさんはこちらを見た。

 「今日は付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ。明日は、気楽にな。うちの両親はあんな感じだし」

 わたしは、なんとなくセドルさんの顔が見れなかった。
 
 「わたしも楽しかったです」

 わたしは、友達とおしゃべりしながら歩いたことなんてほとんどない。相手が男の子ならなおさらだ。

 ほんと、楽しかったな。
 
 すると、セドルさんは両手で私の肩を掴んだ。
 セドルさんの力で、わたしの両肩はすくむように持ち上がる。

 セドルさんは、正面からわたしの目を見つめる。

 どうしてだろう。
 自然にわたしの目は閉じた。

 すると。
 少しの間をおいて。


 チュッ。


 おでこにキスをされた。
 わたしはびっくりして額を押さえた。

 すると、セドルさんは口を綻ばせる。

 「それはトレーニング修了の証。びっくりした?」

 すごくびっくりした。
 頬が熱くなりすぎて、すこしクラクラする。
 
 セドルさんは畳み掛けてくる。
 「あ、少しは期待した? なら、本当に口にしようか?」

 「しなくていいですよーだ!」

 頬がプーッてなっているのが自分でも分かる。
 わたしは、立ち上がるとスタスタと歩き出した。

 すると、セドルさんが追いかけてくる。

 「まってよー」

 どうせ帰る方向は同じなのだ。
 待ってなんてあげない!!

 歩きながら考えてしまう。

 あの時、口にキスをされていたら、わたしは拒んだのかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...