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第50話 まひるの気持ち。

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 ほのかは、最後の一口を飲み干し続ける。

 「中学で色々あったので、高校でも、まひるは人と付き合うのが怖くなってしまったらしいです、いまの大学に入れば、好きだった人と再会できるかもしれないと思い、高校ではそれだけを考えていたと」

 ほのかは俺から視線を外し、一瞬、天井を見るような仕草をした。

 「……希望の大学に入れたので、その人に好きになってもらえるように外見磨きを頑張っていると言っていました」

 確かに中学の頃、俺は◯大(まひるの大学)に入ると豪語していたし、それ相応の学力はあった。真夜も勉強はできたが、国立大を考えられる程の成績ではなかったハズだ。

 「わたしは言ったんです。それなら、高校の時にまひるから連絡すればよかったんじゃない? って。ですが、まひるは、自分は決して許されないことをしてしまって、それは絶対にできないと。わたしはそんな夢のような再会なんて無理だと言ったのですが。しばらく、まひるは『ナギ』という名前の人を探していました」

 まひるは、そんな俺の夢のような一言にすがって、高校生活を過ごしたというのか?

 まさかそんなことは……。いくらなんでも……。

 ただ、人は本当に不安な時には藁にもすがってしまうものなのだとも思う。でなければ、こんなにも霊感商法や投資詐欺が横行しないはずだ。

 おれは気づいてしまった。

 『それでは、俺の高校生活より酷いじゃないか』

 じゃあ、今のまひるは、俺の理想を目指した女性ということなのだろうか。

 確かに昔、冗談で、大学生になったら「明るくて綺麗な、ぱっちり二重のお姉さんの彼女が欲しい」と言ったことはあったが……。

 そのあと、例のクズの稲田と付き合い、ひどい捨てられ方をしたらしい。

 まひるのあまりの落胆ぶりに、ほのかは見るに見かねて「アプリで良い人見つければ?」とアドバイスしたらしかった。

 でも、まさか。

 まひるがセフレ募集に応募するとは、夢にも思わなかったようだが。

 「それからしばらくして、アプリで知り合った人とやり取りを始めたって聞いて。なんだかすごく楽しそうでよかったな、って思ってたんです」

 そこで知り合ったのが俺という訳か。
 きっと、メッセージでやり取りを始めた頃かな。

 「少しして、実際に会ってもすごく楽しかったと、大はしゃぎでした。でも、そのあと、その人が幼馴染のナギさんだと気づいたらしくて」

 ほのかは咳払いをして続けた。

 「色々聞き出したら、その、なんていうか『セックスフレンド』としての付き合いだと、わたしに教えてくれたんです。それでわたしは、そんな付き合いは絶対に良くないって反対したんです」

 まぁ、それはそうだよな。
 親友に『セフレ』ができたと言われたら、反対するのが普通だ。

 「だけれど、まひるは、ナギさんに会って、自分のせいで大学を諦めてしまったと思ったようです。ナギさんの人生を変えてしまった。罪悪感で押しつぶされそうだけれど、会いたいし一緒にいたい」

 ほのかは前髪をかき上げると、テーブルに手を組み合わせる。

 「その矛盾した感情の葛藤の結果、セフレという関係であっても、一緒にいれれば良いという結論に達したようです」

 ……確かに。
 実際に、まひるが真夜だとわかった時には、俺は本気で復讐を考えた。

 「まひるは言ってました。それだけの事をしてしまったんだから、身体だけを求められても仕方ないって。それよりも、欲を出して色々求めて会えなくなることが一番怖いと」

 ほのかはメガネを掛け直す。

 「ただ、他の人に振り向かれるのは嫌だから、そんな気が無くなるくらい、その……、エッチをいっぱいしたいと言ってました」

 その話を聞いた時、ほのかには、まひるの言っていることが全く理解できず、少しおかしいんじゃないかと思ったらしい。

 それで、あの学園祭だ。

 ほのかは俺に実際に会って、まひるが幸せというなら、それもいいと思ったという事だった。


 ……なるほど。

 俺の認識している事実に合致するし、まひるの行動とも合致する。

 だとしたら、まひるは。

 胸を引き裂かれるような思いをしながら、俺と一緒に居てくれたということなのだろうか。
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