1 / 59
第1話 アプリの出会い。
しおりを挟む(スマホをタップする音)
「ん~。ここの内容どうしようかな。先輩に聞いてみるか……」
俺はいま、マッチングアプリに登録している。
先輩の勧めで俺みたいなタイプはアプリで相手を見つけた方がいいと言われたからだ。
俺は中学までかなり太っていた。
だが、ある不幸な出来事のおかげで心機一転、ダイエット、ジム通い等の自己研鑽により、別人級のイメチェンに大成功。
男子校だったため、高校時代には気づかなかったが、正直、今はかなりモテる。
とはいえ、その不幸な出来事のおかげで、女性不信になってしまった。女性を信じて、裏切られるのが怖い。だから、今まで特定の彼女を作ったことがないし、作る気も全くない。
そうは言っても、本能的(性的)欲求が強いお年頃なのだ。言い寄ってくる相手に「付き合う気はない」と言って、そういうカラダの関係になることは少なくない。
正直に、相手には『付き合う気はない』って伝えているんだけどね。いつの間にか、相手は期待をしてしまうものらしい。
この前、女の子に詰め寄られたから「最初から伝えてるけど、好きなら、こんな扱いする訳ないでしょ」と言ったら、大変なことになった。
最初に伝えた通りなのに、意味がわからない。正直、面倒くさい。
ところで、職場はクズ兄と言われている敬愛する先輩がいる(ちなみに、クズ弟は俺らしい)。先輩に先日の大変なことになった件を相談したところ、バカだと言われた。
先輩が腕を組んで、ため息まじりに言う。
「全員に、そろそろ付き合っちゃう? とか思わせつつ、ふら~っと遊ぶのが鉄則だぞ。 あとな、職場は絶対に教えないこと、これ基本な?」
バカにバカにされるのは心外だが、遊びの達人が言うのなら、きっとそうなのだろう。
なんか、『期待するな』と伝えている俺の方がマシな気がするけれどね。
クズ兄弟と言われているくらいだし、周りからみれば似たような物なのだろう。
「それにしても、先輩こそ、本気で刺されそうですよ? 形見とか預かっておきましょうか?」
先輩は鼻で笑う。
大丈夫だという自信があるようだ。
先輩が言うには、本気で割り切った相手を見つけたいなら、アプリがオススメらしい。
それでいま、俺は登録をしている訳だ。
名前はどうしよう。
本名はさすがに抵抗があるし。
クズ先輩も、個人情報は極力書くなって言ってたもんな。
何気なしに首から下げているセキュリティカードを見ると、「営業三課 高咲 凪」と書いてある。
凪、ナギ。
うなぎ?
これだ、名前は『うなぎ』にしよう。
出身地は、これも東京とは書かない方がいいよな。
前に住んでいたことがある『埼玉』にしとこか。設定で北海道とか沖縄って書いたら、すぐにバレそうだし。
俺は隣の島の先輩に声をかける。
「先輩、誕生日はどうしたらいいですか?」
「お前な、誕生日こそ設定が重要だぞ? お前、自分の誕生日にトリプルブッキングとかしたいわけ?」
え。なんで。
俺、誕生日にちゃんとお祝いとかしてほしいですけれど。
先輩が言うには、相手の誕生日はいくつあってもカラダひとつで対応できるが、ひとつしかない自分の誕生日はカラダひとつでは対応できないらしい。
だから、相手ごとに嘘の誕生日を教えるのが基本ということだった。
……さすがクズの大先輩だ。含蓄があるなぁ。
あとは、趣味とか好きな映画とか。年収とか。
これは正直に書いてっと。
写真は……、俺も登録しないから相手も非登録でOKかな。
男女平等ってことで。
では、最後の項目。
『求める相手との関係』
先輩のおすすめは『純愛できる彼女探してます』らしいけれど。
それじゃ、らしくない。
俺は、先輩が見ていない隙に、こう記入した。
キスは、いつの日か出会う彼女のためにとっておきたいし。
「会いたい時に会える都合のいい関係(セフレ)。キスNG、恋愛NG。どちらかが好きになった時点で関係は解消」と。
俺は登録ボタンをタップした。
41
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた
したらき
恋愛
神坂冬樹(かみさかふゆき)はクラスメイトに陥れられて犯罪者の烙印を押されてしまった。約2ヶ月で無実を晴らすことができたのだが、信じてくれなかった家族・幼なじみ・友人・教師などを信頼することができなくなっていた。
■作者より■
主人公は神坂冬樹ですが、群像劇的にサブキャラにも人物視点を転換していき、その都度冒頭で誰の視点で展開しているのかを表記しています。
237話より改行のルールを変更しております(236話以前を遡及しての修正は行いません)。
前・後書きはできるだけシンプルを心掛け、陳腐化したら適宜削除を行っていきます。
以下X(Twitter)アカウントにて作品についてや感想への回答もつぶやいております。
https://twitter.com/shirata_9 ( @shirata_9 )
更新は行える時に行う不定期更新です。
※《小説家になろう》《カクヨム》にて同時並行投稿を行っております。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる