効率主義者の異世界生活

Ryuki

文字の大きさ
上 下
7 / 7

7 最初の晩餐

しおりを挟む
 食堂は宿の下にある。そもそもギルド内は意外と複雑で、本館とその隣に建っている別館がある。ギルド自体、要するに酒飲み場や受け付け、クエスト発注する所やちょっとした売店があるのは本館。宿や大浴場、そして食堂などの宿泊施設が別館にあるけど、とりあえず建物が大きすぎて未だに道に迷うことがあるのだ。
「ここってさっきも通ったよな」
 実際に今、完全に迷子である。いや、ギルド自体がもはや迷宮、クエストだから! こんな造りにしたのが悪いだろ・・・・・・。
 ここが何階かも分からない、階段を下ってないから多分俺の宿部屋があるはずだけど。
「421号室、ってことはこっちかな?」
 こうなったら部屋番号で辿っていくしかない。だいたい何01とかが階段に近いはずだ。
「あれ? リョウタ?」
「え・・・・・・」
 後ろから何やら聞いたことがある声がしたぞ。
「なんで私の部屋の前にいるの?」
「ええ?! ソフィア?!」
 後ろに振り返ると部屋から出てくるソフィアの姿。ソフィアもここに泊まってたのか。いやいや、じゃあリディアは?
「そんなに驚くことかな・・・・・・」
「いやいや、リディアは?」
「え? あの子は全くの知らない子だよ?」
 ここに来ての新事実だろ。てっきり姉妹かと思ったわ! じゃあお姉ちゃんって言うのは全く知らないお姉ちゃんって意味だったのか。
「そ、そうだったのか、じゃあソフィアも冒険者?」
「ええ、そうよ! それより早く食堂に行きましょ! お腹空いちゃった」
「そうだな・・・・・・」
 迷ってたことは内緒でとりあえずソフィアについて行く。あ、そっちだったのか。どうやら俺は階段とは真逆の方向に進んでいたらしい。
「ここにしましょ!」
「ああ、この席いいな!」
 ちょうど窓に近くて、いい席があったから早速座る。やっぱりここの食堂もレストランみたいで綺麗だ。毎日ここで食事ができるのも最高だな。
「リョウタは何を食べる?」
「うーん」
 正直、こっちの世界に来てからまだ骨付き肉しか食べてないから、書いてあるメニュー全てが初見なんだよな。
「私は『グラウドの鉄板焼き』にしようかな!」
 名前だけはめっちゃうまそうだな。でも女の子が食べる食事だしカエルとかトードとかの肉ってことはないだろう・・・・・・。
「じゃあ俺もそれで!」
「すみませーん! 『グラウドの鉄板焼き』を2つで!」
「はいはーい!」
 やけにハイテンションな店員だな。異世界にきてからというもの変な人にしか会わない。
「グラウドってさ、何の肉なんだ?」
「え? グラウドトードのお肉だよ?」
 おい待て、今トードって言ったか。まさかとは思うがカエ・・・・・・
「カエルのお肉って美味しいわよね!」
「で、ですよね~、あはは・・・・・・」
 カエルじゃねぇか!!
 俺は昔からカエルだけは大嫌いなんだよな、小学校の時、下校中の雨の日に頭の上にカエルが乗った恐怖。今でも忘れることは無い・・・・・・。
 まあ、頼んじゃったし食べてみるか。
「そういえばさ、なんであのオッサンに絡まれてたんだ?」
「あー! リディアが走っててぶつかっちゃったらしくてね、オジサンが怒っちゃったらしいから止めに入ったのよ」
「そういうことか」
 これで全てのことが分かったよ。要するにリディアが商店街で走ってて、あのオッサンにぶつかったと。それで止めに入ったソフィアが今度は絡まれて、それを見た俺が止めに入ったと・・・・・・
 なんだこの複雑な連鎖反応は。
「ええ、だからリョウタには本当に感謝してるわ」
「いやいや当然の事さ」
 まあ逃げようとしてたけど。
「私まだ冒険者になったばかりなのよね」
「それを言ったら俺もだよ」
「え?! そうなの!」
 なんだ、ソフィアも冒険者になりたてだったのか。だからギルドの宿に泊まってたってわけか。
「ああ、今日なったばかりだ」
「ならちょうどいいじゃない! リョウタ!」
 一息おいたソフィアは何かを言おうとしてる。何かのお誘いか?
「パーティー組むわよ!」
「ほえ?」
 パーティーってなんだ? ギルドみたいなものか?
「一緒にパーティーを組んで魔王を倒しましょ!」
 要するに協力してクエストとかを攻略するってことか。それなら理にかなってるし良いかもな。しかもこんな可愛い子と・・・・・・。
「ああ、いいぜ!」
「決定ね! 良かった~、私1人でダンジョン攻略とかするの心配だったのよ」
 それもそうか、1人でダンジョン攻略なんて無理があるだろ。俺でも多分きつい。
「お待たせしました、グラウドの鉄板焼き2つです」
 お、おお。なんか、ザ・カエルって感じだ。カエルをそのまま味付けして焼いただけ、ワイルドすぎるだろ。
「美味し~!」
 ソフィアはナイフとフォークを自在に使ってこれを食している。確かにいい匂いもするし、美味しそうではあるけど・・・・・・!?
「う、うまい!?」
「でしょでしょ! 私大好きなの!」
 例えると鶏肉みたいだ、というよりもはや鶏肉。普通に美味しいし、ご飯が欲しくなるレベル。
「じゃあ食べたら早速パーティー申請しに行きましょ!」
「そうだな、それでソフィアってなんの職業なんだ?」
「私? 白魔導師よ! だから回復は任せてね」
「おお、白魔導師か! いいやん、俺は黒魔導師だから攻撃とサポート両方いるってことか!」
「バランスは最高ね!」
 白魔導師と黒魔導師がいるってことはバランス的にはこれ以上はないはずだ。それに回復もできるとなるとHPを気にする必要もない。
「だね、うまっ、これ!」
 グラウドの鉄板焼きを食しながら、ソフィアと異世界についてを語り合った。これが最初の晩餐である。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

傭兵稼業の日常と冒険 life & adventure @ RORO & labyrinth

和泉茉樹
ファンタジー
 人間と悪魔が争う世界。  人間と独立派悪魔の戦闘の最前線であるバークレー島。  ここには地下迷宮への出入り口があり、傭兵たちは日夜、これを攻略せんと戦っていた。  伝説的なパーティー「弓取」のリーダーで武勲を立てて名を馳せたものの、今は一人で自堕落な生活を送る傭兵、エドマ・シンギュラ。  彼の元を訪れる、特別な改造人間の少女、マギ。  第一部の物語は二人の出会いから始まる。  そして第二部は、それより少し前の時代の、英雄の話。  黄金のアルス、白銀のサーヴァ。  伝説の実態とは如何に?  さらに第三部は、大陸から逃げてきた魔法使いのセイルと、両親を失った悪魔の少女エッタは傭兵になろうとし、たまたまセイルと出会うところから始まる話。

Cursed Heroes

コータ
ファンタジー
 高校一年生の圭太は、たまにバイトに行くだけで勉強も部活もやらず一つのゲームにハマっていた。  ゲームの名前はCursed Heroes。リアルな3Dキャラクターを操作してモンスター達を倒すことにはまっていた時、アプリから一通のお知らせが届く。 「現実世界へのアップデートを開始しました!」  意味が解らないお知らせに困惑する圭太だったが、アプリ内で戦っていたモンスター達が現実の世界にも出現しなぜか命を狙われてしまう。そんな中彼を救ってくれたのは、ゲーム世界で憧れていた女ゲーマー『ルカ』だった。  突如始まってしまったリアルイベントに強引に巻き込まれ、自身も戦う羽目になってしまった圭太は、やがてゲーム内で使っていたキャラクター「アーチャー」となり、向かってくるモンスター達を倒す力を身につけていく。  彼はルカに振り回されながらも、徐々に惹かれていくが……。  学校通ってバイトに行って、ゲームをしつつモンスター退治、それとちょっとだけ恋をするかもしれない日常。圭太の不思議な新生活が始まった。

ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る! #ハズワケ!

寝る犬
ファンタジー
【第3回HJ小説大賞後期「ノベルアップ+」部門 最終選考作品】 「ハズワケ!」あらすじ。 ギフト名【運び屋】。 ハズレギフトの烙印を押された主人公は、最高位のパーティをクビになった。 その上悪い噂を流されて、ギルド全員から村八分にされてしまう。 しかし彼のギフトには、使い方次第で無限の可能性があった。 けが人を運んだり、モンスターをリュックに詰めたり、一夜で城を建てたりとやりたい放題。 仲間になったロリっ子、ねこみみ何でもありの可愛い女の子たちと一緒に、ギフトを活かして、デリバリーからモンスター討伐、はては他国との戦争、世界を救う冒険まで、様々な荷物を運ぶ旅が今始まる。 ※ハーレムの女の子が合流するまで、マジメで自己肯定感の低い主人公の一人称はちょい暗めです。 ※明るい女の子たちが重い空気を吹き飛ばしてゆく様をお楽しみください(笑) ※タイトルの画像は「東雲いづる」先生に描いていただきました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~

古嶺こいし
ファンタジー
散々なクリスマスの夜に突然召喚されて勇者にされてしまった主人公。 しかし前日に買っていたピアスが呪いの装備だったらしく 《呪いで神の祝福を受け取れませんでした》 《呪いが発動して回復魔法が毒攻撃になります》 《この呪いの装備は外れません》 《呪いで魔法が正常に発動できませんでした》 ふざっけんなよ!なんでオレを勇者にしたし!!仲間に悪魔だと勘違いされて殺されかけるし、散々だ。 しかし最近師匠と仲間ができました。ペットもできました。少しずつ異世界が楽しくなってきたので堪能しつつ旅をしようと思います。

ドグラマ2 ―魔人会の五悪党―

小松菜
ファンタジー
※登場人物紹介を追加しました。 悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。 異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。 *前作ドグラマの続編です。 毎日更新を目指しています。 ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...