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Episode.4 恋する魔法少女は王子様の国を護りたい!

第25話 お姫様の陰謀!魔法少女と王子様のお見合いを♡

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 頭を抱えるリーザロッテの向こうではプッティが高みの見物とばかりにニヤニヤして見守っている。

「まあまあ、いいじゃねぇか。ズワルト・コッホも戦争は出来ないから平和だし、こっちはこっちで喧嘩するほど仲がいいみたいだし」
「全然そんな風に見えないよ。プッティ、何とかしてぇ」
「自分で何とかしろい」

 何とかと言っても、宥めようとして当の二人からたった今怒鳴られたばかりなのだ。リーザロッテは恨めしそうにプッティを見て途方に暮れた。
 そんなリーザロッテをよそに、楓とペルティニは「どっちが美味しいお菓子を作れるか」「どっちが綺麗な刺繍を作れるか」「どっちがオハジキが上手いか」と数日間に渡って数々の死闘、激闘を繰り広げた。

「くっ、なかなかしぶとい小娘ですこと!」
「ちっ、世間知らずのお姫様にしちゃやるじゃない!」

 幸いと言うべきか、結果はどれも両者引き分けであったり、勝敗数が同じで決着がつかなかった。
 しかし、そうなると二人の反目はますます激しさを増し、泥沼化してゆく。

「ふん! 私の方がリーザロッテとの付き合いが長いんだから!」
「お笑いですわね! リーザロッテさんのお役に立ったのならこの私の方が断然上ですわ!」
「そんなナマイキな口を叩くんならトロワ・ポルムの村総出でアンタなんか追い出してやるからね!」
「その前に皇御の近衛兵を呼び寄せてこの村を焼き払ってやりますわっ!」

 一触即発。いよいよつかみ合いが始まりそうで、見ていられなくなったリーザロッテから必死の仲裁が入る。

「喧嘩はやめて! ペルティニも楓さんも、どっちも私には大切な友達だから! どっちが上なんてないから!」

 土下座せんばかりに懇願され、二人は一旦はそこで矛を収めようともしたが。

「うー……まぁリーザロッテさんがそう仰るなら大親友として顔を立ててもよろしくてよ」
「ヤな奴だけどリーザロッテが困ってるから特別に許してやらなくもないわ」

 そこでまた二人が「にゃにおう!」と睨みあったので、リーザロッテがまたしても「二人とも、本当にお願いだから!」と割って入る。
 見れば半泣きが本泣きになりかかっている。楓とペルティニは慌てて「ゴメンなさい!」「いい子だから泣かないで!」と、今度は宥めたり謝ったり大わらわ。

「さすがにリーザロッテさんを泣かせる訳には参りませんし。ちょっとお話しましょうか」

 ため息をつき、ようやく年長者らしいところを見せて楓が顎をしゃくるとペルティニは仏頂面でついてゆく。二人はリーザロッテから離れた場所で、しばらくの間ヒソヒソ話し合った。
 そうしてようやく何ごとか合意に達したらしく、頷き合うと笑みを見せて握手したのだった。

「よかった。仲直り出来たのね!」
「いいえ。リーザロッテさんの一番の友達はどちらかというのはいずれ日を改めて、ということになりました」
「ええー!?」

 一瞬だけバチバチとまた火花を散らしたものの、二人は揃ってニッコリ笑った。

「でもリーザロッテさんに幸せになって欲しいという気持ちはどちらも同じです。なので、それまで互いに協力しようということで一時休戦と相成りましたわ」
「休戦……」

 どうやら「リーザロッテの一番の友達」というところは、両者とも譲る気はないらしい。

「それでね」

 手放しで喜べない複雑な顔のリーザロッテの前に飛び出したペルティニは人差し指を立てた。

「今度、リーザロッテ・ハウスでカエデの歓迎会を開こうと思うの」
「あ、それはいいわね!」

 喧嘩なんかよりよっぽどいい! と無邪気に喜ぶリーザロッテだったが、楓とペルティニは、何やらいわくありげな顔をしている。

「やろーやろー、是非やろう!」
「ええ。では明後日に。来賓はリーザロッテさんとペルティニ、プッティさん……それと先日のお詫びもかねてレディル殿下もお呼びしなくては」
「ええっ、レディル様も?」
「あら、当然ですわ。レストリアに滞在させていただいているお礼もまだちゃんと申し上げておりませんもの」
「そ、そう……」

 先日のプッティ逆ギレ事件で土下座させてしまったバツの悪さもあって、レディルとは少々顔を合わせづらい。
 困ったように俯いたリーザロッテを見て、楓とペルティニは互いに顔を見合わせてニヤリとした。
 実はこの二人、「歓迎会にかこつけてリーザロッテとレディルをお見合いさせよう」と、画策したのである。

「歓迎会ですから私の好きなようにさせて下さいまし。そうですわね……まずは庭にテラスを設けてお茶会の趣向を凝らしとうございます」

 主賓のはずの楓が、主催となって自分の歓迎会を仕切り始める。
 リーザロッテとプッティは「あれ?」という顔になったが、頬を紅潮させ「テーブルにはこのクロスを敷いて、花も置きましょう」と張り切っている楓の様子を見て、彼女の好きなようにさせることにした。本人がそれで喜ぶのなら一番いいと思ったのだ。
 お茶やティーカップは楓が持参した葛籠に入っていたものを使うことになり、お茶菓子はペルティニが母親に頼むこととなった。

「お母さんにとびっきりの甘酸っぱいサクランボのパイを焼いてもらうから楽しみにしててね!」
「サクランボのパイ!」

 涎を垂らしそうな顔でリーザロッテが目を輝かせる。それは「死ぬ前にもう一度食べたかった」と言うほどの、彼女の大好物なのだ。

「でも楓さんもサクランボのパイ、好きなの?」
「そ、その……実はリーザロッテさんがとてもお好きだと言うので、私も食べてみとうございまして」

 楓は咄嗟に取り繕い、お茶会の主賓が実はリーザロッテであることを巧みに隠した。

「美味しいよ、凄く美味しいから! ペルティニのお母さんのパイは本当にレストリア一美味しいのよ!」
「あらあら、それは楽しみですわ。ところで当日の装いですが、皆様には正装していただきたく思います」
「ああ、お茶会の前に私がテーブルとか掃除しておくからそこは心配しなくても……」
「それは『清掃』ですわっ! 皆さんにドレスアップしていただきたいという意味の『正装』です」
「アッハイ」

 楓は手にした扇子を顎に当ててちょっと考え込んだが「では当日に、私が魔法で皆さんの装いを仕立てさせていただきます」と宣言した。

 「でも、レディル様を歓迎会に、どうやってご招待したらいいのかしら」

 困ったようにリーザロッテがつぶやくと、ここでも楓が「私にお任せ下さい」と請け負った。

「レストリア宮廷には一度ご挨拶に伺わねばと思っていたのです。国王ニコラ陛下へ拝謁させていただけるかは分かりませんが、勝手に逗留しているお詫びだけはきちんとしなくては」

 楓はレストリア王室へ挨拶へ伺うことを口実に、レディルに会って呼び出す腹づもりらしかった。
 他にもお茶を沸かすための水は川の源流から出来るだけ綺麗な水をリーザロッテが汲む、当日はプッティの薪ざっぽは使用厳禁、ペルティニにはパイが冷めないように魔法の籐籠を預けておく等々、楓はテキパキと役割を定める。
 それからようやく和歌のように呪文を唱え、魔法陣を呼び出した。

「気を付けて行ってきてね。レディル様、来てくださるといいなぁ」
「首に縄をつけても連れてまいりますわ! 決戦は明後日ですわよ、リーザロッテさん!」
「決戦?」

 ペルティニが慌ててシー! と口の前に指を立てたので、楓は「そ、それくらい気合いを入れてお茶会を楽しみましょうって意味ですわ!」と、ごまかす。
 ここら辺りでプッティもようやくこの歓迎会の意図を察知して、ははーんとなった。

「では皆さん、明後日までにそれぞれのご準備を。よろしいですわね」

 レストリア王城へ……と、呼びだした魔法陣に乗り込んだ楓が呼びかける。

「さあ、気合を入れますわよ皆さん! えい、えい」
「「「おーーっ!」」」

 気勢を上げる楓に応えて三人も腕を振り上げた。
 もっとも、気合いを入れている本当の意味に、当のリーザロッテだけが気づいていない。

 そして……
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