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Episode.3 恋のダンスステップとプッティの逆ギレ説教
第20話 リーザをバカにするな!プッティ怒りの大暴れ!
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「認定されない者はご案内出来ないと先ほど申し上げた通りです。お帰り下さい」
「フザけんな! こっちはレストリアから汽車に乗ってはるばるやって来たんだ。お帰り下さいとか言われてハイそうですかって帰れるか! おい、駄目って理由は一体何なんだよ!」
「……」
追い出し役の魔女は黙ったまま答えない。一方のプッティは怒り狂い、今にも薪ざっぽで殴り掛からんばかり。
他の少女達は後ろの喧騒に驚いて足を止めたが、案内役に促されて関わりを避け、建物の中へそそくさと入ってゆく。
ただ、一人だけ……促されても無視して、じっと見つめる少女がいた。
「申請書はちゃんと書いただろ? リーザロッテ・プレッツェル。魔法についてはこの通り魔法人形のあたいが生き証人みたいなもんだ。それで何が駄目なんだよ!」
「……魔法協会に認定されるには様々な条件が要ります。家名、公的な保証人、保証金、諸々……残念ながら申請人にはそれらがなにひとつありません」
「は? 金ならこれからちゃんと稼いで払わぁ! 他の条件は何だよ、魔法が使えても保証人がいなきゃ駄目? それに家名? いいご身分のお嬢様でなきゃ魔法協会に入れませんってことかよ!」
「お答えいたしかねます。とにかくこの場はお引き取り下さい」
「じゃあ、ちゃんと説明しろよ!」
「お引き取り下さい」
「くそっ、手前じゃ話になんねえ。誰かちゃんと説明が出来る奴を出せよ!」
「お断りします」
「へっ、そうかいそうかい! じゃ、ここの偉い奴に聞きに行かぁ」
プッティが建物へちょこちょこ歩き出すと、自分の手を煩わせたくない黒衣の魔女は無表情のまま呪文を唱えた。
すると、物々しい武者人形達が一〇体ほど虚空から揺らめくように出現し、プッティを取り囲んだ。
「ほっほー。魔法協会ってのは、いいご身分でなきゃ説明もしねえし聞きにも行かせない訳かい。何様のつもりなんだか。とことん気に入らねーなぁ!」
怯えるどころか、武者人形達をぐるりと見回すと「お前達ザコに、このあたいが倒せるかな?」とプッティはせせら笑った。身の丈と同じ長さの薪ざっぽを背中からするりと引き抜く。
と、同時に魔女がパチリと指を鳴らす。武者人形達が一斉に飛び掛かった。
「すっこんでろ、三下ども!」
音もなく戦いのゴングが鳴った。怒りの薪ざっぽがうなりを上げる! 目にも留まらぬ殴打で、ある武者人形は脳天をたたき割られ、ある人形は首を横殴りでへし折られ、吹っ飛んだ。
凄まじい打撃を目の当たりにして武者人形達は思わずたじろぐ。
そこへ「そっちが来ねえからこっちから行くぜ! まずはお前だぁぁー!」と、今度はプッティから飛び掛かった。
渾身の突きが見事に決まり、武者人形の顔面にめり込む。崩れ落ちる間に「お前もだぁぁー!」と次の人形が横っ腹を叩き割られ、キリキリ舞いして地面に転がった。おのれとばかりに襲い掛かる武者人形をプッティはひらりとかわし、後頭部から「おととい来やがれ!」と痛打を浴びせる。
圧倒的な力の差! 「数は力」という論理など、この魔法人形の前には無意味だった。
「手ごたえねぇぞ、へなちょこ共ッ!」
最後に残った人形は左右の腕を振り回して襲い掛かったが「あたいからの手向けだ、あの世まで飛べ!」のフルスイングで宙を飛び、離れた路上に叩きつけられて動かなくなった。
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 誇り高き魔法少女リーザロッテのお目付け役、プッティ・プレッツェルとはあたいのことだぁ!」
倒れた人形達で屍累々の石畳に突き立てた薪ざっぽに片足を乗せ、プッティは見事な見得を切った。離れた場所で黙って見ていた少女が、こっそり拍手する。
肩をすくめた黒衣の魔女は「ちっ」と毒づくと魔法杖を振り上げた。
「何様か存じ上げませんが、あまり調子に乗らないことですわね」
「るっせぇ! 次は手前だぁ!」と躍りかかったプッティをふわりと宙に吊り、「畜生! 放せー!」とジタバタする彼女を門の外へ投げつけた。
「さっさと失せて下さいな。貴方のような無礼かつ乱暴な方は、ここへ入ることも本来許されません」
「無礼はどっちだ! 身分のない奴は誰も認めてなんかくんねえのかよ! リーザロッテは困ってたら誰だって助けるんだぞ! お礼も言われなくったって、気味悪がられたってそれでも!……そんな奴だって認めねえのかよ!」
「そんな底辺の自称魔法少女など知りませんね。関わり合いなど御免こうむります。おおかた魔法使いを装った手品の詐欺師なんでしょ?」
「リーザロッテをバカにするなぁぁぁぁぁぁぁ!」
再び飛び掛かったプッティは魔法で宙に浮かされ、そのまま二度、三度と石壁に叩きつけられて、石畳に転がった。
「リーザロッテをバカにするな……あたいのリーザを……」
プッティは魔法人形なので泣くことは出来ない。
だが、それが出来るのなら今、悔し涙を流していただろう。
身分も何もない、ロクな魔法も使えない少女。だが困った人がいれば必ず手を差し伸べる心優しい魔法少女を、この人形は主人として誇りに思っていたのだ。それを認めないどころか詐欺と言われたことがどうしても許せなかった。
だが、よろよろと立ち上がったプッティを魔女は再び魔法でひょいと摘まみ上げると、また壁に叩きつけた。
「しぶといゴミクズですこと。面倒ですから処分させていただきます」
所詮は底辺の魔法人形とばかりに魔女は「チッ、手間を取らせて……さっさと消えるがいいわ」と、攻撃魔法を唱える。
「リーザロッテを……バカに……」
「消え失せなさい、クズ人形。電撃破砕!」
その時、何者かが別の呪文で攻撃に割り込んだ。
「反射壁」
突如、プッティの前にガラスのような防壁が現われた。弾き返され、己の電撃を真っ向から受けた魔女は悲鳴を上げて引っくり返った。
「クズとはどちらのことやら。無礼と非道な行い、もはや見過ごせません。恥を知りなさい」
おっとりとした声で叱責を浴びせたのは、それまでプッティと魔女のやり取りを黙って見ていた少女だった。彼女がプッティを守る障壁魔法を唱えたのだった。
「楓様、何をなさるのです! 困ります。このような場へ首を挟まれましては……」
「乱暴される方を私が庇いましたら不都合があるのですか。はて? どのような不都合なのでしょう」
十二単のような艶やかな和装姿をした美少女だった。かなりきつい三白眼をしており、年の頃はルルーリアと同じくらいに見える。
婉然としていたが「では聞かせていただきましょうか」と微笑む表情には、背筋が凍りそうな程の凄みがあった。
「そう言われましてもその……皇御(すめらぎ)の国の第一皇女ともあろう方が無関係な争いに……」
「それでは理不尽や暴力に見て見ぬ振りをせよと。それが皇御国の第一皇女にふさわしい振る舞いと? 私の国の礼節は、随分と見下されたものですね」
おだやかな声色ではあったが言葉は鞭のようだった。立ちすくむ黒衣の魔女の前を静々と通った和装の少女は、へたり込んでいるプッティへ「大丈夫ですか?」と心配そうに顔を覗き込み、手を差し出した。
「立てますか? あ、お洋服があちこち綻んでおりますわね。私でよければ繕って差し上げますから」
「いや、いいよこれくらい」
「そんな訳にはまいりません。女の子なら身だしなみはきちんとしなくては」
楓と呼ばれた少女はプッティをじっと見つめたが、合点したようにうなずくとニッコリ笑った。
「プッティさんとおっしゃいましたね。どうやら色々とご事情があるものとお見受けいたしました。貴女をこのままにしておけません。場を改めてお話をお伺いいたしとう存じますがよろしいでしょうか。出来るならお力添えいたしますゆえ」
「え……あ……」
どう応えていいものかと迷っているプッティの手を強引に取り、楓は「この場は私にお任せ下さい。さ……」と、助け起こした。
「楓様、楓様! 勝手なことをされては困ります! 貴女は魔法少女のご認定と推薦を受けられた後、メリアスト・アルス学園へ入学されるのですよ。魔法協会からご案内させていただく予定のはずです」
「結構ですわ。認定も推薦も入学も、すべて辞退させていただきます」
「そ、そんな……」
狼狽する魔女へ振り返ると、楓は別人のように冷ややかに言い放った
「立派な行いをされていても身分卑しき者とみれば打ち捨てる魔法協会の振る舞いは既に拝見しました。そのようなところの公認や推薦など不名誉な限り。こちらからお断り申し上げます」
「ま、待ってください!」
「ご安心なさい、事の次第は私からお父様へお話した上でご了承いただきますから」
第一皇女の父親……つまり皇御の聖皇に奏上されると聞いて、魔女は安心どころか真っ青になった。
「お許しを……ご無礼をどうか……」
「あら、いまさら何をと思いましたら謝る相手が違いましてよ……もっとも、プッティさんが許しても私が許さない」
丁寧な物腰が消えた語尾に少女の逆鱗が現われていた。
立ったまま半ば卒倒している魔女にはもう目もくれず、楓はプッティを差し招いた。和歌のように呪文を唱えると、漢字で出来た不思議な魔法円が浮かび上がる。
「さ、こちらへ」
「……ありがとう」
照れくさそうに礼を言ってプッティが乗ると、楓は笑ってうなずいた。
「それでは参りましょうか」
彼等の乗った魔法円は「ま、待って……」と慌てて引き留める魔女など一顧だにせず、溶けるように消えてしまった。
「フザけんな! こっちはレストリアから汽車に乗ってはるばるやって来たんだ。お帰り下さいとか言われてハイそうですかって帰れるか! おい、駄目って理由は一体何なんだよ!」
「……」
追い出し役の魔女は黙ったまま答えない。一方のプッティは怒り狂い、今にも薪ざっぽで殴り掛からんばかり。
他の少女達は後ろの喧騒に驚いて足を止めたが、案内役に促されて関わりを避け、建物の中へそそくさと入ってゆく。
ただ、一人だけ……促されても無視して、じっと見つめる少女がいた。
「申請書はちゃんと書いただろ? リーザロッテ・プレッツェル。魔法についてはこの通り魔法人形のあたいが生き証人みたいなもんだ。それで何が駄目なんだよ!」
「……魔法協会に認定されるには様々な条件が要ります。家名、公的な保証人、保証金、諸々……残念ながら申請人にはそれらがなにひとつありません」
「は? 金ならこれからちゃんと稼いで払わぁ! 他の条件は何だよ、魔法が使えても保証人がいなきゃ駄目? それに家名? いいご身分のお嬢様でなきゃ魔法協会に入れませんってことかよ!」
「お答えいたしかねます。とにかくこの場はお引き取り下さい」
「じゃあ、ちゃんと説明しろよ!」
「お引き取り下さい」
「くそっ、手前じゃ話になんねえ。誰かちゃんと説明が出来る奴を出せよ!」
「お断りします」
「へっ、そうかいそうかい! じゃ、ここの偉い奴に聞きに行かぁ」
プッティが建物へちょこちょこ歩き出すと、自分の手を煩わせたくない黒衣の魔女は無表情のまま呪文を唱えた。
すると、物々しい武者人形達が一〇体ほど虚空から揺らめくように出現し、プッティを取り囲んだ。
「ほっほー。魔法協会ってのは、いいご身分でなきゃ説明もしねえし聞きにも行かせない訳かい。何様のつもりなんだか。とことん気に入らねーなぁ!」
怯えるどころか、武者人形達をぐるりと見回すと「お前達ザコに、このあたいが倒せるかな?」とプッティはせせら笑った。身の丈と同じ長さの薪ざっぽを背中からするりと引き抜く。
と、同時に魔女がパチリと指を鳴らす。武者人形達が一斉に飛び掛かった。
「すっこんでろ、三下ども!」
音もなく戦いのゴングが鳴った。怒りの薪ざっぽがうなりを上げる! 目にも留まらぬ殴打で、ある武者人形は脳天をたたき割られ、ある人形は首を横殴りでへし折られ、吹っ飛んだ。
凄まじい打撃を目の当たりにして武者人形達は思わずたじろぐ。
そこへ「そっちが来ねえからこっちから行くぜ! まずはお前だぁぁー!」と、今度はプッティから飛び掛かった。
渾身の突きが見事に決まり、武者人形の顔面にめり込む。崩れ落ちる間に「お前もだぁぁー!」と次の人形が横っ腹を叩き割られ、キリキリ舞いして地面に転がった。おのれとばかりに襲い掛かる武者人形をプッティはひらりとかわし、後頭部から「おととい来やがれ!」と痛打を浴びせる。
圧倒的な力の差! 「数は力」という論理など、この魔法人形の前には無意味だった。
「手ごたえねぇぞ、へなちょこ共ッ!」
最後に残った人形は左右の腕を振り回して襲い掛かったが「あたいからの手向けだ、あの世まで飛べ!」のフルスイングで宙を飛び、離れた路上に叩きつけられて動かなくなった。
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 誇り高き魔法少女リーザロッテのお目付け役、プッティ・プレッツェルとはあたいのことだぁ!」
倒れた人形達で屍累々の石畳に突き立てた薪ざっぽに片足を乗せ、プッティは見事な見得を切った。離れた場所で黙って見ていた少女が、こっそり拍手する。
肩をすくめた黒衣の魔女は「ちっ」と毒づくと魔法杖を振り上げた。
「何様か存じ上げませんが、あまり調子に乗らないことですわね」
「るっせぇ! 次は手前だぁ!」と躍りかかったプッティをふわりと宙に吊り、「畜生! 放せー!」とジタバタする彼女を門の外へ投げつけた。
「さっさと失せて下さいな。貴方のような無礼かつ乱暴な方は、ここへ入ることも本来許されません」
「無礼はどっちだ! 身分のない奴は誰も認めてなんかくんねえのかよ! リーザロッテは困ってたら誰だって助けるんだぞ! お礼も言われなくったって、気味悪がられたってそれでも!……そんな奴だって認めねえのかよ!」
「そんな底辺の自称魔法少女など知りませんね。関わり合いなど御免こうむります。おおかた魔法使いを装った手品の詐欺師なんでしょ?」
「リーザロッテをバカにするなぁぁぁぁぁぁぁ!」
再び飛び掛かったプッティは魔法で宙に浮かされ、そのまま二度、三度と石壁に叩きつけられて、石畳に転がった。
「リーザロッテをバカにするな……あたいのリーザを……」
プッティは魔法人形なので泣くことは出来ない。
だが、それが出来るのなら今、悔し涙を流していただろう。
身分も何もない、ロクな魔法も使えない少女。だが困った人がいれば必ず手を差し伸べる心優しい魔法少女を、この人形は主人として誇りに思っていたのだ。それを認めないどころか詐欺と言われたことがどうしても許せなかった。
だが、よろよろと立ち上がったプッティを魔女は再び魔法でひょいと摘まみ上げると、また壁に叩きつけた。
「しぶといゴミクズですこと。面倒ですから処分させていただきます」
所詮は底辺の魔法人形とばかりに魔女は「チッ、手間を取らせて……さっさと消えるがいいわ」と、攻撃魔法を唱える。
「リーザロッテを……バカに……」
「消え失せなさい、クズ人形。電撃破砕!」
その時、何者かが別の呪文で攻撃に割り込んだ。
「反射壁」
突如、プッティの前にガラスのような防壁が現われた。弾き返され、己の電撃を真っ向から受けた魔女は悲鳴を上げて引っくり返った。
「クズとはどちらのことやら。無礼と非道な行い、もはや見過ごせません。恥を知りなさい」
おっとりとした声で叱責を浴びせたのは、それまでプッティと魔女のやり取りを黙って見ていた少女だった。彼女がプッティを守る障壁魔法を唱えたのだった。
「楓様、何をなさるのです! 困ります。このような場へ首を挟まれましては……」
「乱暴される方を私が庇いましたら不都合があるのですか。はて? どのような不都合なのでしょう」
十二単のような艶やかな和装姿をした美少女だった。かなりきつい三白眼をしており、年の頃はルルーリアと同じくらいに見える。
婉然としていたが「では聞かせていただきましょうか」と微笑む表情には、背筋が凍りそうな程の凄みがあった。
「そう言われましてもその……皇御(すめらぎ)の国の第一皇女ともあろう方が無関係な争いに……」
「それでは理不尽や暴力に見て見ぬ振りをせよと。それが皇御国の第一皇女にふさわしい振る舞いと? 私の国の礼節は、随分と見下されたものですね」
おだやかな声色ではあったが言葉は鞭のようだった。立ちすくむ黒衣の魔女の前を静々と通った和装の少女は、へたり込んでいるプッティへ「大丈夫ですか?」と心配そうに顔を覗き込み、手を差し出した。
「立てますか? あ、お洋服があちこち綻んでおりますわね。私でよければ繕って差し上げますから」
「いや、いいよこれくらい」
「そんな訳にはまいりません。女の子なら身だしなみはきちんとしなくては」
楓と呼ばれた少女はプッティをじっと見つめたが、合点したようにうなずくとニッコリ笑った。
「プッティさんとおっしゃいましたね。どうやら色々とご事情があるものとお見受けいたしました。貴女をこのままにしておけません。場を改めてお話をお伺いいたしとう存じますがよろしいでしょうか。出来るならお力添えいたしますゆえ」
「え……あ……」
どう応えていいものかと迷っているプッティの手を強引に取り、楓は「この場は私にお任せ下さい。さ……」と、助け起こした。
「楓様、楓様! 勝手なことをされては困ります! 貴女は魔法少女のご認定と推薦を受けられた後、メリアスト・アルス学園へ入学されるのですよ。魔法協会からご案内させていただく予定のはずです」
「結構ですわ。認定も推薦も入学も、すべて辞退させていただきます」
「そ、そんな……」
狼狽する魔女へ振り返ると、楓は別人のように冷ややかに言い放った
「立派な行いをされていても身分卑しき者とみれば打ち捨てる魔法協会の振る舞いは既に拝見しました。そのようなところの公認や推薦など不名誉な限り。こちらからお断り申し上げます」
「ま、待ってください!」
「ご安心なさい、事の次第は私からお父様へお話した上でご了承いただきますから」
第一皇女の父親……つまり皇御の聖皇に奏上されると聞いて、魔女は安心どころか真っ青になった。
「お許しを……ご無礼をどうか……」
「あら、いまさら何をと思いましたら謝る相手が違いましてよ……もっとも、プッティさんが許しても私が許さない」
丁寧な物腰が消えた語尾に少女の逆鱗が現われていた。
立ったまま半ば卒倒している魔女にはもう目もくれず、楓はプッティを差し招いた。和歌のように呪文を唱えると、漢字で出来た不思議な魔法円が浮かび上がる。
「さ、こちらへ」
「……ありがとう」
照れくさそうに礼を言ってプッティが乗ると、楓は笑ってうなずいた。
「それでは参りましょうか」
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