13 / 17
最速のプライド
しおりを挟む
喧嘩腰に勝負を吹っ掛けてきたレミラにより、ギルド内部の空気はピンと張りつめた物になっていた
「…レミラさん、ギルドで揉め事は…
それも王都じゃトップの貴女が新人のタツキさんに勝負を仕掛けるのは…」
誰も口を開かず押し黙った空間で最初に口を開いたのは受付嬢でレミラをとがめるようにそう言う
が、それについては想像の範疇だったのかレミラはゆっくりと首を横に振った
「別にギルドに迷惑かけようとは思ってないですよ
ただ、この新人はアタシのレコードを塗り変えたんですよね?」
「…えぇ、まぁ」
次いで口を開き、辰起を指差しながら言うレミラに受付嬢は小さく頷く、そしてその様子を見るとレミラは小さく息を吐きながら笑った
「あぁ、新人がアタシのレコード越したから気にくわないとかじゃ無いんすよ、そもそも自由に受けれる仕事な訳ですし、ただ今までアタシが最速だったんだからせめてアタシが納得できるように勝負したいんですよ」
自分が納得できるように勝負がしたい、例え負けることがあっても勝負すらしないんじゃ納得できない
聞けば聞くほどに辰起のレミラに対する評価はバトル狂だ、でもそんなヤツは辰起は嫌いではなかった
「…わぁったよ、どうせ嫌だって言っても聞いてくれねぇんだろうし」
自身の後頭部をガシガシ掻きながらさも仕方なさそうに口を開き、目の前でこちらの様子を試すように見るレミラへ不適に笑い掛けた
「…受けてやんよ、王都の最速さんよ?」
お互いの眼光がぶつかり、火花が散った、そんな気がした
◆
「聞いたかよ?レミラさんが新人とやりあうって」
「あぁ、聞いた聞いた
何でもありえない記録叩き出した新人なんだろ?
見たこともないバカっ速なマシン操るらしいぜ」
にらみ合いもつかの間、第一試験サーキットへ移動していった二人の後、その場に取り残された残りのレーサー達はその話題で持ちきりになっていた
「今回ばかりはいくらレミラさんでも分が悪いかもな」
「新人気になるな…」
「俺はレミラさんが…」
「俺は新人が…」
『いやいやいや…』
勝利予想は綺麗に真っ二つに割れ、さてどちらが勝つだろうと辺りがソワソワし始めたとき
ふと受付嬢の片割れが忍び足で裏口を目指す先程の揉め事に巻き込まれた受付嬢に気づく
「…あれ?先輩どちらへ?」
「あ、た、タツキさんの様子を見に」
「…そんなこと言って、ただ結果が気になるだけなんじゃないですか?」
「う…」
後輩受付嬢の鋭い指摘に固まる先輩受付嬢
そしてそれを見ていたレーサー達は一つの妙案を思い付く
「…直接見に行くか…」
誰かの呟きと皆の思考が合致し、レーサー達は即座に立ち上がると我先にとギルドから出ていく
「…」
「…先輩?」
ぞろぞろと出ていくレーサー達に紛れてどさくさに出ていこうとする受付嬢
しかし寸でのところで後輩に見つかり肩を掴まれ捕まってしまう
「は、離して!?
私は二人の勝負を見届けなきゃいけないのよ!受付嬢として!!」
「…なら本来の仕事を優先してください」
結局受付嬢は業務に縛りつけられる事となり、後輩を恨みがましく睨んでみるものの自業自得と睨み返されてしまった
◆
場所は変わって第一試験サーキットへ
ピット内にて先に到着したレミラは緊張した面持ちで辰起が来るのを待っていた
(ふぅ…ちょっと落ち着かないと、始まる前からビビるなアタシ___)
元々強気ではあるものの怖がりである性格が祟ってか
あんなことを言った手前ではあるものの手にはじっとりと汗が滲んできていた
(正式な公表はまだだけど…相手はアタシより一分近くタイムが上…勝てるのかしら)
自身が負ける、そう考えてはらしくないと頭を振って思考を切り変える
(…違う、勝てるかじゃない…勝たなきゃ!)
そしてそんな自身の弱い気持ちを落ち着かせる為に、今度は愛車へと目を向ける
視線の先には自身が最も勝手の知っている、例えて言えばヨーロッパ車のようなメリハリのある曲線的なボディにアメリカ車のように大きいテールフィンがついた自慢の愛機が見えた
この国大手自動車メーカー【ステートモータース】の国民的スポーツカー『アルカディア』だ
ステートモータース1の人気車種にして、レミラが手に入れてから給料のほぼすべてをつぎ込んだ改造を施してある
(他ならいざ知らず、第一でアタシが負けるわけにはいかない…
それが一人で走り続けてきたアタシの最速としてのプライドだから)
もう一度、強く息を吸って吐く
大丈夫、気持ちは落ち着いた
__ワァアアアアアンッ
「…来たわね」
おそらくまだ距離は遠いのだろう
徐々に近づいて来る爆音に、ぶり返しそうになった弱気を心にしまい込んで鍵を掛けた
ゴンロォッ!!
「…おぅ、待たせたな」
少し待って試験会場に白い車が入ってくる
見たこともない流線型の丸いフォルム、一見して可愛く見えるそれはレミラには鎌を掲げた死神にすら見えた
さしあたり窓から顔を出して悪びれもなく言った男、辰起は地獄の番人と言ったところか?
(何だってかまわない…今はまだ負ける気は毛頭無いもの…)
「別に…待ってないわよ」
気持ちを悟られないように、レミラは鼻を鳴らしながら挑発的にそう言った
◆
「早速始めようか」
車から降り、辰起は目の前のピットでこちらに向かって挑戦的な笑みを向けてくるレミラへ言うと
同時にその横のレミラの愛機にも目を映す
(…ほぅ)
性能面では決して勝る訳ではないが、それでもある種特有の雰囲気を身に纏ったソレに自然と口角が上がってしまう
(そっちもソコソコやれる訳か…)
クツクツと笑みを漏らしながら車に戻る辰起、そしてそれを追うようにレミラも自身の車に乗り込む
ピピピピッピピピピッ
_キュィッキッキ__ゴボォンッ!!
_キシュシュッ__ゥオンッ!
エンジンが掛かったのはほぼ同時でありお互いに少し驚いたように窓越しに見つめ合い、それがどこか可笑しくて笑い合う
「勝負は?」
「ファイブラップ一本勝負!」
「OK、一周フォーメーションラップしてからにしようか」
勝負内容を決めお互いに頷き辰起が先頭でコースへ出るとタイヤを温めるために蛇行し始める
(油音、水温、共にOKだな…)
実は一度タイムアタックするのに全開で走ってしまった為に辰起は家に戻ってオイル交換をしていた
高温に晒され酷使されるエンジンオイルは一度でも全開にしたら交換するのがモータースポーツの鉄則である
「…やっこさんはずいぶんと重そうだな」
バックミラー越しに写るレミラの愛機を見て辰起は呟いた、軽快なフットワークで左右に舞うように動くシビックとは反対で
重戦車が如くずっしりとした重みを感じるような動きをするレミラのマシン
「そろそろスタート位置か…
車重の関係でタイヤ使いきったりしてないだろうな」
さすがにフォーメーションラップでタイヤを使いきって攻められませんでは笑い話にもならないと、タイヤ性能を多少心配しながらぐるりとコーナーを回ってスタート位置に戻ってくると辰起は徐々に減速していき、レミラの真横に並ぶと窓越しに先を指差し、先行スタートしろと指示を出す
(…了解!)
そしてその意図を組んだレミラはクラッチを踏み込むとギアを一速に入れてアクセルを全開にする
__フォアッ!!
刹那、最初に試験として走った受付嬢のマシンとは桁違いの加速力でレミラのマシンは駆け抜ける
「へぇ?」
速いわけではない、元の世界の改造車に比べたら
その加速力は幾分も眠い
ただ、車以外の科学力はてんで発展していないこの世界において
これだけの加速をする車を持つレミラは確かに最速だったのだろうと素直に思えるほどのモノだった
「いいね、ようやく実感も沸いてくるってもんだ」
__バァアアアッ!
それに続くかの如く辰起も一速に入れて全開、軽量な車重と元々レスポンスの良いB16-Aエンジン
それもほぼ全てに手が入ったフルチューンの域にあるエンジンを詰んだシビックは放たれた矢のように加速し、瞬く間にタコメーターの針はVTECゾーンに入る
__プワァアアアアアッ!!
途端に咽び鳴くような甲高いエキゾーストノートに変わる辰起のシビック、メーターの針は吸い込まれるようにレッドゾーンに入り車速も上がる
二速、三速とギアを入れ、開いていた差が少し詰まった所で第一コーナーが迫りお互いに減速していく__。
◇◆◇◆
ホンダ・EG-6シビック(B16-A改データ)
・エンジンバランス取り
・排気量up(1750cc)
・バルブ類強化品
・ポート研磨加工(鏡面)
・戸田製ハイカム&ハイコンプ鍛造ピストン
・レーシングスペックCP
・カーボン製ツチノコチャンバー
・フルストレートエキゾーストマニホールド(作成者不明ワンオフ品)
・チタンストレート触媒
・ゼロファイター管溶接加工(サイド出し)
・無限アルミ3層ラジエーター
・トラスト10段オイルクーラー
・自作オイルキャッチタンク
・純正バンパー(フロント)ダクト裏導風板
・Os技研トリプルプレートクラッチ
・クロスミッション(ファイナル5.1)
・クスコ機械式LSD(1.5way)
・ストラットタワーバー
・OHLINSサスペンション(フルタップ減衰調節30段)
・Swiftツインバネ(フロント12㎏リア14㎏)
・ブッシュ&ロッド系フルピロ化
・メンバー溶接補強
・マウントダウン(40㎜)
・メンバー、ロールセンター変更。
・J'sレーシング6ポット対向ピストン(S2000用5穴化搭載)
・スリッドローター(324㎜)
・ステンメッシュブレーキホース
・TopSecretスーパーストリートブレーキパット
・フルスポット増し
・クロモリ製溶接止めダッシュ、エンジンルーム貫通ロールケージ(サイドバー付き十六点)
・ボディ裏当て板補強
・後部座席撤去
・ドンガラ仕様(ダッシュボード残し)
・窓全面アクリル化
・2シーター仕様(本気時ワンシーター化)
・耐久レース用100L安全タンク
・左右ドア、Rゲート、ボンネット、エアロミラー、バンパー、サイドステップドライカーボン化
・スモークコーナーレンズ
・クリアテール
・ボンピン
・J'sレーシング悪ッパネ
・ワンオフリップスポイラー
・フルフラットボトム化
・ブリッドフルバケットシート
・サベルト四点シートベルト
・ヴォルクレーシングTE37(7J)
車重850㎏
推定最高速度220㎞/10000RPM
最高出力230馬力/9800RPM
最大トルク24㎏/9500RPM
ステートモータース・アルカディア(v型8気筒3500ccデータ)
・エンジンバランス取り
・ポート研磨加工
・鍛造ピストン
・ビッグキャブ(ファンネル仕様)
・EXマニホールド(ドワーフ特製)
・ストレート触媒(直管)
・中間ストレートパイプ
・テールエンドダブルデュアル(ドワーフ特製)
・シングルメタルクラッチ
・強化サスペンション(ドワーフ特製)
・2ポット対向ピストン
・メタルブレーキパット
・スポット増し
・助手席撤去
・ドンガラ仕様
・鉄板ダッシュボード
・外装一式鉄板切り出し
・鉄チンホイール
車重1470㎏
推定最高速度176㎞/6200RPM
最高出力164馬力/5500RPM
最大トルク30㎏/3800RPM
◇◆◇◆
______◆
あとがき
誰も待ってないかも知れないけど
お ま た せ
今回最後の方に辰起君のシビックの詳細とレミラちゃんの車の詳細を載せたら予想外に長くなってしまった(汗)
後々もうちょっと詳しく、というか
登場人物紹介みたいなのにも載せます。
この世界線での車のメーカーとか名前には特に意味はなく、ほぼ語感で名付けております。
あとドワーフとかエルフとか獣人とか普通にいる設定です。
ぶっちゃけレースシーン以外の話を作りづらい(笑)
でもまぁ何とか頑張ります!
______◆
「…レミラさん、ギルドで揉め事は…
それも王都じゃトップの貴女が新人のタツキさんに勝負を仕掛けるのは…」
誰も口を開かず押し黙った空間で最初に口を開いたのは受付嬢でレミラをとがめるようにそう言う
が、それについては想像の範疇だったのかレミラはゆっくりと首を横に振った
「別にギルドに迷惑かけようとは思ってないですよ
ただ、この新人はアタシのレコードを塗り変えたんですよね?」
「…えぇ、まぁ」
次いで口を開き、辰起を指差しながら言うレミラに受付嬢は小さく頷く、そしてその様子を見るとレミラは小さく息を吐きながら笑った
「あぁ、新人がアタシのレコード越したから気にくわないとかじゃ無いんすよ、そもそも自由に受けれる仕事な訳ですし、ただ今までアタシが最速だったんだからせめてアタシが納得できるように勝負したいんですよ」
自分が納得できるように勝負がしたい、例え負けることがあっても勝負すらしないんじゃ納得できない
聞けば聞くほどに辰起のレミラに対する評価はバトル狂だ、でもそんなヤツは辰起は嫌いではなかった
「…わぁったよ、どうせ嫌だって言っても聞いてくれねぇんだろうし」
自身の後頭部をガシガシ掻きながらさも仕方なさそうに口を開き、目の前でこちらの様子を試すように見るレミラへ不適に笑い掛けた
「…受けてやんよ、王都の最速さんよ?」
お互いの眼光がぶつかり、火花が散った、そんな気がした
◆
「聞いたかよ?レミラさんが新人とやりあうって」
「あぁ、聞いた聞いた
何でもありえない記録叩き出した新人なんだろ?
見たこともないバカっ速なマシン操るらしいぜ」
にらみ合いもつかの間、第一試験サーキットへ移動していった二人の後、その場に取り残された残りのレーサー達はその話題で持ちきりになっていた
「今回ばかりはいくらレミラさんでも分が悪いかもな」
「新人気になるな…」
「俺はレミラさんが…」
「俺は新人が…」
『いやいやいや…』
勝利予想は綺麗に真っ二つに割れ、さてどちらが勝つだろうと辺りがソワソワし始めたとき
ふと受付嬢の片割れが忍び足で裏口を目指す先程の揉め事に巻き込まれた受付嬢に気づく
「…あれ?先輩どちらへ?」
「あ、た、タツキさんの様子を見に」
「…そんなこと言って、ただ結果が気になるだけなんじゃないですか?」
「う…」
後輩受付嬢の鋭い指摘に固まる先輩受付嬢
そしてそれを見ていたレーサー達は一つの妙案を思い付く
「…直接見に行くか…」
誰かの呟きと皆の思考が合致し、レーサー達は即座に立ち上がると我先にとギルドから出ていく
「…」
「…先輩?」
ぞろぞろと出ていくレーサー達に紛れてどさくさに出ていこうとする受付嬢
しかし寸でのところで後輩に見つかり肩を掴まれ捕まってしまう
「は、離して!?
私は二人の勝負を見届けなきゃいけないのよ!受付嬢として!!」
「…なら本来の仕事を優先してください」
結局受付嬢は業務に縛りつけられる事となり、後輩を恨みがましく睨んでみるものの自業自得と睨み返されてしまった
◆
場所は変わって第一試験サーキットへ
ピット内にて先に到着したレミラは緊張した面持ちで辰起が来るのを待っていた
(ふぅ…ちょっと落ち着かないと、始まる前からビビるなアタシ___)
元々強気ではあるものの怖がりである性格が祟ってか
あんなことを言った手前ではあるものの手にはじっとりと汗が滲んできていた
(正式な公表はまだだけど…相手はアタシより一分近くタイムが上…勝てるのかしら)
自身が負ける、そう考えてはらしくないと頭を振って思考を切り変える
(…違う、勝てるかじゃない…勝たなきゃ!)
そしてそんな自身の弱い気持ちを落ち着かせる為に、今度は愛車へと目を向ける
視線の先には自身が最も勝手の知っている、例えて言えばヨーロッパ車のようなメリハリのある曲線的なボディにアメリカ車のように大きいテールフィンがついた自慢の愛機が見えた
この国大手自動車メーカー【ステートモータース】の国民的スポーツカー『アルカディア』だ
ステートモータース1の人気車種にして、レミラが手に入れてから給料のほぼすべてをつぎ込んだ改造を施してある
(他ならいざ知らず、第一でアタシが負けるわけにはいかない…
それが一人で走り続けてきたアタシの最速としてのプライドだから)
もう一度、強く息を吸って吐く
大丈夫、気持ちは落ち着いた
__ワァアアアアアンッ
「…来たわね」
おそらくまだ距離は遠いのだろう
徐々に近づいて来る爆音に、ぶり返しそうになった弱気を心にしまい込んで鍵を掛けた
ゴンロォッ!!
「…おぅ、待たせたな」
少し待って試験会場に白い車が入ってくる
見たこともない流線型の丸いフォルム、一見して可愛く見えるそれはレミラには鎌を掲げた死神にすら見えた
さしあたり窓から顔を出して悪びれもなく言った男、辰起は地獄の番人と言ったところか?
(何だってかまわない…今はまだ負ける気は毛頭無いもの…)
「別に…待ってないわよ」
気持ちを悟られないように、レミラは鼻を鳴らしながら挑発的にそう言った
◆
「早速始めようか」
車から降り、辰起は目の前のピットでこちらに向かって挑戦的な笑みを向けてくるレミラへ言うと
同時にその横のレミラの愛機にも目を映す
(…ほぅ)
性能面では決して勝る訳ではないが、それでもある種特有の雰囲気を身に纏ったソレに自然と口角が上がってしまう
(そっちもソコソコやれる訳か…)
クツクツと笑みを漏らしながら車に戻る辰起、そしてそれを追うようにレミラも自身の車に乗り込む
ピピピピッピピピピッ
_キュィッキッキ__ゴボォンッ!!
_キシュシュッ__ゥオンッ!
エンジンが掛かったのはほぼ同時でありお互いに少し驚いたように窓越しに見つめ合い、それがどこか可笑しくて笑い合う
「勝負は?」
「ファイブラップ一本勝負!」
「OK、一周フォーメーションラップしてからにしようか」
勝負内容を決めお互いに頷き辰起が先頭でコースへ出るとタイヤを温めるために蛇行し始める
(油音、水温、共にOKだな…)
実は一度タイムアタックするのに全開で走ってしまった為に辰起は家に戻ってオイル交換をしていた
高温に晒され酷使されるエンジンオイルは一度でも全開にしたら交換するのがモータースポーツの鉄則である
「…やっこさんはずいぶんと重そうだな」
バックミラー越しに写るレミラの愛機を見て辰起は呟いた、軽快なフットワークで左右に舞うように動くシビックとは反対で
重戦車が如くずっしりとした重みを感じるような動きをするレミラのマシン
「そろそろスタート位置か…
車重の関係でタイヤ使いきったりしてないだろうな」
さすがにフォーメーションラップでタイヤを使いきって攻められませんでは笑い話にもならないと、タイヤ性能を多少心配しながらぐるりとコーナーを回ってスタート位置に戻ってくると辰起は徐々に減速していき、レミラの真横に並ぶと窓越しに先を指差し、先行スタートしろと指示を出す
(…了解!)
そしてその意図を組んだレミラはクラッチを踏み込むとギアを一速に入れてアクセルを全開にする
__フォアッ!!
刹那、最初に試験として走った受付嬢のマシンとは桁違いの加速力でレミラのマシンは駆け抜ける
「へぇ?」
速いわけではない、元の世界の改造車に比べたら
その加速力は幾分も眠い
ただ、車以外の科学力はてんで発展していないこの世界において
これだけの加速をする車を持つレミラは確かに最速だったのだろうと素直に思えるほどのモノだった
「いいね、ようやく実感も沸いてくるってもんだ」
__バァアアアッ!
それに続くかの如く辰起も一速に入れて全開、軽量な車重と元々レスポンスの良いB16-Aエンジン
それもほぼ全てに手が入ったフルチューンの域にあるエンジンを詰んだシビックは放たれた矢のように加速し、瞬く間にタコメーターの針はVTECゾーンに入る
__プワァアアアアアッ!!
途端に咽び鳴くような甲高いエキゾーストノートに変わる辰起のシビック、メーターの針は吸い込まれるようにレッドゾーンに入り車速も上がる
二速、三速とギアを入れ、開いていた差が少し詰まった所で第一コーナーが迫りお互いに減速していく__。
◇◆◇◆
ホンダ・EG-6シビック(B16-A改データ)
・エンジンバランス取り
・排気量up(1750cc)
・バルブ類強化品
・ポート研磨加工(鏡面)
・戸田製ハイカム&ハイコンプ鍛造ピストン
・レーシングスペックCP
・カーボン製ツチノコチャンバー
・フルストレートエキゾーストマニホールド(作成者不明ワンオフ品)
・チタンストレート触媒
・ゼロファイター管溶接加工(サイド出し)
・無限アルミ3層ラジエーター
・トラスト10段オイルクーラー
・自作オイルキャッチタンク
・純正バンパー(フロント)ダクト裏導風板
・Os技研トリプルプレートクラッチ
・クロスミッション(ファイナル5.1)
・クスコ機械式LSD(1.5way)
・ストラットタワーバー
・OHLINSサスペンション(フルタップ減衰調節30段)
・Swiftツインバネ(フロント12㎏リア14㎏)
・ブッシュ&ロッド系フルピロ化
・メンバー溶接補強
・マウントダウン(40㎜)
・メンバー、ロールセンター変更。
・J'sレーシング6ポット対向ピストン(S2000用5穴化搭載)
・スリッドローター(324㎜)
・ステンメッシュブレーキホース
・TopSecretスーパーストリートブレーキパット
・フルスポット増し
・クロモリ製溶接止めダッシュ、エンジンルーム貫通ロールケージ(サイドバー付き十六点)
・ボディ裏当て板補強
・後部座席撤去
・ドンガラ仕様(ダッシュボード残し)
・窓全面アクリル化
・2シーター仕様(本気時ワンシーター化)
・耐久レース用100L安全タンク
・左右ドア、Rゲート、ボンネット、エアロミラー、バンパー、サイドステップドライカーボン化
・スモークコーナーレンズ
・クリアテール
・ボンピン
・J'sレーシング悪ッパネ
・ワンオフリップスポイラー
・フルフラットボトム化
・ブリッドフルバケットシート
・サベルト四点シートベルト
・ヴォルクレーシングTE37(7J)
車重850㎏
推定最高速度220㎞/10000RPM
最高出力230馬力/9800RPM
最大トルク24㎏/9500RPM
ステートモータース・アルカディア(v型8気筒3500ccデータ)
・エンジンバランス取り
・ポート研磨加工
・鍛造ピストン
・ビッグキャブ(ファンネル仕様)
・EXマニホールド(ドワーフ特製)
・ストレート触媒(直管)
・中間ストレートパイプ
・テールエンドダブルデュアル(ドワーフ特製)
・シングルメタルクラッチ
・強化サスペンション(ドワーフ特製)
・2ポット対向ピストン
・メタルブレーキパット
・スポット増し
・助手席撤去
・ドンガラ仕様
・鉄板ダッシュボード
・外装一式鉄板切り出し
・鉄チンホイール
車重1470㎏
推定最高速度176㎞/6200RPM
最高出力164馬力/5500RPM
最大トルク30㎏/3800RPM
◇◆◇◆
______◆
あとがき
誰も待ってないかも知れないけど
お ま た せ
今回最後の方に辰起君のシビックの詳細とレミラちゃんの車の詳細を載せたら予想外に長くなってしまった(汗)
後々もうちょっと詳しく、というか
登場人物紹介みたいなのにも載せます。
この世界線での車のメーカーとか名前には特に意味はなく、ほぼ語感で名付けております。
あとドワーフとかエルフとか獣人とか普通にいる設定です。
ぶっちゃけレースシーン以外の話を作りづらい(笑)
でもまぁ何とか頑張ります!
______◆
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。


転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる