Another World Racer's ~異世界に愛車ごと転生したら全人類のほぼ全てが走り屋だった件~

ちくわ feat. 亜鳳

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固有スキル

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「それではタツキさんのレーサー登録が終了致しました
これからのご活躍、ギルド一同応援しております」

試験場でのレースから約一時間後
辰起の姿はレーサーギルド内にあった
既に本登録を済ませ、細かな説明も受けた

レーサーに与えられる仕事は大きく分けて4つ
『レース・運搬輸送・チューンナップ・カーケア』

レーサーを育てるレーサーギルドと言え仕事は一つだけではない

レースは文字通りレース、為に区間別やサーキット別でのタイムアタック等もあり
一定の記録を越すことで貰える報酬額も変わったりするようだ。

運搬輸送はレーサーに登録したもののサーキットやタイムアタックを進んでやる程の実力が備わっていない初心者が好んで選ぶ仕事だと言う
文字通り荷物の運搬が仕事で、町から町
長ければ国境を越えて国~国への長距離輸送まであるようだ。

ちなみにこちらも運ぶまでの時間が短ければ短い程報酬が弾まれるらしい

チューンナップも文字通り改造やカスタムを手掛けることで、技量のあるレーサーには指名依頼がされることもあるようだ
たまにプライベーターでもプロを凌ぐほどのチューナー等がいたりするのでこれは画期的と辰起は内心で思っていた

そして最後のカーケア
これははっきりいって雑用であり、9割9分初心者レーサーの仕事
主な仕事は洗車等だ
やるのがめんどくさい、や時間の関係で中々出来ないなどがあるため依頼として出されるらしい

「ありがとうございました
それじゃあ今日は帰って、明日から早速働いてみます」

辰起は説明をしてくれた受付嬢に感謝を言い席を立つ
やることや考えることはまだ、沢山ある
ひとまずは家に帰り考えを纏めなければならないだろう

そうしてギルドの表へ出た直後、不意に辰起の脳内に音声が流れた

《条件を満たしました。
固有スキルを解除します。》

「へ?」










「は、はは…スゲェな
やべぇよ手の震えが半端じゃねぇ…」

辰起は先ほどの声が聞こえてから路地へ移動し
脳内に流れた音声のを調べ
そして知った今手を震わせていた

辰起の目の前には辰起以外に見えないスクリーンのようなものが現れており
そこにはこう書かれていた。

{固有スキル
カーショップ ヴィーナス}と…


「いやいやいや…いやいやいや…
これはまじで洒落にならんぞ…?」

スクリーンに浮かび上がるカーショップ ビーナスに深く意識を向ければ
そこから更に選択肢が三つ現れる


{固有スキル
カーショップ ヴィーナス

・車販売
・パーツ売買
・工具ケア用品}

辰起は一番上の選択肢である、車売買の項目に意識を向ける
するとまた選択肢が、今度は二つ現れる

{固有スキル
カーショップ ヴィーナス
・車販売

・新車  ・中古車}

「…どーしよこれ」

目の前のスクリーンの文字を見ながら
辰起の手は止まってしまった

(いや、ぶっちゃけ嬉しいんだよ?
嬉しいんだけどさ…シビック一台であんなに目立ってたのに…)

辰起は中古車の項目に意識を向けた
するとスクリーンに上から下までずらりと日本にいた頃に見かけていた車の名前が並んだ


「…これ、良いのかね…」

なんと辰起は異世界に来て日本車を買えるようになってしまった
いや、他にもパーツや手入れ用材を含む色んなものを購入出来るようになった




「…さて、こんなもんかね…」

新たに発現したこの世界においてはとてつもないチートであるスキルを確認した後
辰起は一度自身のガレージに戻ってきており
Z修復のプランを算出することに勤しんでいた

「便利と言えばスゲェ便利だからありがたいんだがな…」

現在辰起はスキル{カーショップ ヴィーナス}にて購入した工具一式とエンジンジャッキを眺めていた

「…うん、ちゃんとしたブランドもんだ」

しっかりとKTCの刻印の入った工具やジャッキが手に入り
辰起は困惑半分、嬉しさ半分と言った様子だ

「神様から貰った金は前の世界での額で400万ほど
…うん、復活を含めればギリギリ位か」

こちらに飛ばされた際に神様から貰った額は金貨4枚
元の世界換算でやく400万程
これで足りるかどうかなのだから旧車の事故は怖いのだ

「一通りパーツが出回ってるのは確認したけど…
まだ稼げてもないからすぐには直せないな」

一応カーショップビーナスにs30型Zのパーツが全て出回ってるのは確認済みである
しかし実際の世界ではとっくにパーツ供給の止まった個体なだけに飛び抜けて額が高いのが通例で
好きだと言う気持ちだけで乗れないのが旧車
しかしそこは仕入れが神様
当時ものを時代を繋げてショップにねじ込んでもいるのか単価はさほど高くなく
豊富に揃ったそれは現実の世界での金があってもパーツがなくて直せないと言った事態に陥ることは無さそうだ

では何故すぐに直せないかというと…

「溶接機、フレーム修正機…どれも桁が違うな」

パーツを揃えてもそれを取り付けたりボディを直す機材が高いのだ
元々は店で使うものなので桁が違うのは当たり前だが
溶接機で7桁、フレーム修正機なら8桁に届いてしまう
買えるわけがない

「最悪フレームは当て板とハンマーで直すけど…
溶接機は欲しいからなぁ、そこにプラスしてZのパーツ…
それも純正品じゃなくて社外品…」

いくら単価が安いとはいえちりも積もればなんとやら
金貨4枚ではパーツが取り揃えるのがギリギリな為機材なんて買えるわけもなく
既に購入した工具で事前にパーツを外しておくことだけで一杯一杯なのが現実だった

「はぁ…よく考えれば凄いよなぁ
廃車寸前から直すとはいえ、本来プレミア以外の査定価値がほぼゼロな50年前のZに…クラウンの新車消えちゃうんだから」

400万もあれば買えてしまう高級車クラウンが廃車に消える
自分の選んだことではあるがなんだかな、と思いつつこれからの修理算段を辰起は脳内で組み立てていた

こんなことで嫌になるならとっくの昔に走り屋なんてやめている
シビックにですら既にうん百万ものチューニング費をかけている辰起にとって愚痴こそ溢せどZ修復を諦める気は端からないのだ



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