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lap2周目
2周目に入った刹那
辰起とシビックの動きがガラリと変わったのを受付嬢は感じていた
_ゴボォオオオオワァアアアアンッッ
「ッ!?」
その時は僅かに一瞬で
VTECゾーンに入り甲高い音に変わったシビックのエキゾーストが轟き渡る
「え!アウトから!?」
驚愕の声が受付嬢の口から発せられる
アウトから迫る辰起のシビックと並んで試験車がほぼ同時に一コーナーへ差し掛かる
(無茶な!?
アウトから来るなんて…!こっちは踏ん張りの利かない細いタイヤなんですよ!?
とっ散らかったら、貴方が危ないんですよタツキさん!!)
ギャァッギャンッ
金切り声のようなスキール音を奏で
試験車はアウトへ流れていく
(やっぱり流れた…!
うまく接触をかわしても立ち上がって200mもしないうちにS字です
アウトのラインじゃコースアウトが関の山です!)
_フッ…
しかし、実際には受付嬢の思っていたようにはならなかった
ミラーから突如として辰起のシビックは消え失せる
(バカな…!?一体…?)
そう疑問に思ったその瞬間
プワァアアアッ!!__
甲高いエキゾーストノートと共に辰起のシビックはその車体を斜めに滑らせながら受付嬢の視界に戻ってくる
そしてそれと同時に先程の受付嬢の試験車とは比べ物にならないほどのスキール音が聞こえてきた
(これは…!?)
その動きに受付嬢は呆然とする
というのも無理はなく、ドリフト走行と言う概念はまだ存在せず
ましてやアウトへ流れ始めた試験車のフロントを押さえ込むようにぶつかるギリギリで車体を滑らせるなどという高等テクを受付嬢は目にしたことは愚か聞いたことすら無かったのだ
プァアアアアッ
甲高く響くシビックの音色と受付嬢の鼓動の早さが重なる
刹那辰起のシビックは鼻先を受付嬢の操る車の僅かに前を掠めるごとく入り込み第一コーナーを立ち上がる
「こ、この動きッ!」
その掠めるような動きは
今まで仕事が悪いサスペンションの魔動車を見てきた受付嬢にはまるで車が真横に動いたと錯覚するような動きだった
ギュンッ!!
瞬く間に前へ躍り出たシビックは僅か200mの直線でどんどんと離れていく
(こ、こんな…呆気なく…?)
受付嬢はまさに開いた口が塞がらなくなり、固まってしまった
そして200mの直線を越えてS字コーナーに差し掛かる頃にはシビックのテールはどこにも見当たらなかった。
◆
プゥワァアアァアッ!
「来た…__速い!」
ゴールのすぐ近くで事を見ていた管理棟所属のギルド員はコーナーを立ち上がる辰起のシビックを目で捉え驚愕する
見たことのないほどの機敏な動き
そして加速性能、どれを取っても一級品
いや、国の出した最新のレースカーでもこんな動きは出来ない筈だ
グルリ、とすぐにシビックは最終コーナーまで戻ってくる
そして…
パァアアアアアンッ__
肩まである壁を挟んで向かい側のコースを駆け抜けていった辰起のシビックは管楽器のような快音を奏でていた
「タイムは…」
何故か震えの収まらない手をもう片方の手で抑えながら
ギルド員は2度目の驚愕を顕にした
「__れ、歴代のコースレコードを大きく更新してます…」
◆
「ふぅ、こんなもんかな」
辰起はゴールを越えるとゆっくりシビックを減速させ
流し走行へ移る
このままコースを回ってピットへ向かう
「ま、やっぱ10年も乗ってれば癖は覚えてるモンだよな…」
クールダウン走行の中、辰起は一人そう言ってハンドルを撫でた
ナルディの木目の艶々した手触りを通してシビックと共に呼吸するように息を吐き出す。
(あの時…事故の直前
このシビックだったら…)
癖を完全に熟知し、この個体の挙動を完璧に抑える事の出来る辰起は事故の時の事を思い出していた
あの時、シビックだったら
その小さな車体を生かして祐紀也のGT-RやmarkⅡを避けることも出来ただろう
それほどまでに事故の時にS3Oの癖を掴みきれて無かったからだ
「ホント、久々会えて嬉しいんだぜ?
出来れば手放したくなんて無かったしな
もう…手放さなくてすむしな?」
__クオンッ
辰起の独り言に『わかってるよ』と言いたげに
シビックから一際甲高く乾いたエキゾーストノートが聞こえた
「っと、もう回ってきたか」
そんなこんなで
ゆっくり流していたのだがこの試験場はそれほど広くなく
ミニサーキット程度の広さしか無いためゆっくり回ってもすぐにピットまでついてしまった。
__ゴボォンッ!!
一度軽くエンジンを吹かして辰起はピットイン
ピットロードを徐行で走り邪魔にならなそうな場所にシビックを止める
既に受付嬢は戻ってきており
恐らく辰起に抜かれて追い付けないと悟とりゴール後直ぐにピットインしたようだ
「…お疲れ様でしたタツキさん…」
ガチャリとシビックのドアを開けて表へ出ると
受付嬢は駆け寄って労いの言葉を掛けてくれたのだがどことなく元気が無かった
「いえいえ、久々に踏んで走れて良かったです
えっと…それで試験は?」
辰起は元気が無い受付嬢に少しだけ小首を傾げて不安に思いながらも楽しかったと前置きをしてから急かすようにそう言う
すると受付嬢は軽く乾いた笑い声を上げ
一呼吸おいてから営業用の満面の笑みを浮かべる
「__文句なしに合格です!」
__________
あとがき
約一年ぶりの更新となりました。
本作品、当サイトでのちくわの処女作となっております
車が好きで冒険ものが好きだった為
なら混ぜてしまおうと書き始めたのが切っ掛けでした
しかし現実にはあまり自分と同じ考えの人がいらっしゃらないのか
中々に伸び悩み、拝啓のヒットを皮切りに打ち切りムードになってしまっていた事は否めません。
しかしやっぱり車が好きで好きで大好きで
ちくわが残り二ヶ月で教習所へ通い始めだー!となったとき不思議に続きが書きたくなってしまったのです
そんなこんなでこちらもまた更新再開となります。
まぁ不定期ですが、元はこちらの作品を書くために当サイトに登録したような物だったのでお話のストックはあります(ただストックとその話に持ってくまでの課程が円滑に行くか、必ずしも比例する訳でもございませんが)
というわけであとがきは以上となります
ストーリーの本筋は大体次回から始まります
登場させてほしい車種などありましたら感想まで
↓今のところの登場予定
・日産スカイラインHT2000GT-R
・日産スカイラインR-34GT-R VspecⅡ Nur
・日産スカイラインGTS-R
・日産シルビア S-14 Ks
・TOYOTA JZA70 スープラ
・TOYOTA Kp61 スターレット
・HONDA ワンダーシビック Si
・HONDA グランドシビック SIR
・HONDA シビック EG-6 SIRⅡ
・HONDA シビック EK-9 typeR
2周目に入った刹那
辰起とシビックの動きがガラリと変わったのを受付嬢は感じていた
_ゴボォオオオオワァアアアアンッッ
「ッ!?」
その時は僅かに一瞬で
VTECゾーンに入り甲高い音に変わったシビックのエキゾーストが轟き渡る
「え!アウトから!?」
驚愕の声が受付嬢の口から発せられる
アウトから迫る辰起のシビックと並んで試験車がほぼ同時に一コーナーへ差し掛かる
(無茶な!?
アウトから来るなんて…!こっちは踏ん張りの利かない細いタイヤなんですよ!?
とっ散らかったら、貴方が危ないんですよタツキさん!!)
ギャァッギャンッ
金切り声のようなスキール音を奏で
試験車はアウトへ流れていく
(やっぱり流れた…!
うまく接触をかわしても立ち上がって200mもしないうちにS字です
アウトのラインじゃコースアウトが関の山です!)
_フッ…
しかし、実際には受付嬢の思っていたようにはならなかった
ミラーから突如として辰起のシビックは消え失せる
(バカな…!?一体…?)
そう疑問に思ったその瞬間
プワァアアアッ!!__
甲高いエキゾーストノートと共に辰起のシビックはその車体を斜めに滑らせながら受付嬢の視界に戻ってくる
そしてそれと同時に先程の受付嬢の試験車とは比べ物にならないほどのスキール音が聞こえてきた
(これは…!?)
その動きに受付嬢は呆然とする
というのも無理はなく、ドリフト走行と言う概念はまだ存在せず
ましてやアウトへ流れ始めた試験車のフロントを押さえ込むようにぶつかるギリギリで車体を滑らせるなどという高等テクを受付嬢は目にしたことは愚か聞いたことすら無かったのだ
プァアアアアッ
甲高く響くシビックの音色と受付嬢の鼓動の早さが重なる
刹那辰起のシビックは鼻先を受付嬢の操る車の僅かに前を掠めるごとく入り込み第一コーナーを立ち上がる
「こ、この動きッ!」
その掠めるような動きは
今まで仕事が悪いサスペンションの魔動車を見てきた受付嬢にはまるで車が真横に動いたと錯覚するような動きだった
ギュンッ!!
瞬く間に前へ躍り出たシビックは僅か200mの直線でどんどんと離れていく
(こ、こんな…呆気なく…?)
受付嬢はまさに開いた口が塞がらなくなり、固まってしまった
そして200mの直線を越えてS字コーナーに差し掛かる頃にはシビックのテールはどこにも見当たらなかった。
◆
プゥワァアアァアッ!
「来た…__速い!」
ゴールのすぐ近くで事を見ていた管理棟所属のギルド員はコーナーを立ち上がる辰起のシビックを目で捉え驚愕する
見たことのないほどの機敏な動き
そして加速性能、どれを取っても一級品
いや、国の出した最新のレースカーでもこんな動きは出来ない筈だ
グルリ、とすぐにシビックは最終コーナーまで戻ってくる
そして…
パァアアアアアンッ__
肩まである壁を挟んで向かい側のコースを駆け抜けていった辰起のシビックは管楽器のような快音を奏でていた
「タイムは…」
何故か震えの収まらない手をもう片方の手で抑えながら
ギルド員は2度目の驚愕を顕にした
「__れ、歴代のコースレコードを大きく更新してます…」
◆
「ふぅ、こんなもんかな」
辰起はゴールを越えるとゆっくりシビックを減速させ
流し走行へ移る
このままコースを回ってピットへ向かう
「ま、やっぱ10年も乗ってれば癖は覚えてるモンだよな…」
クールダウン走行の中、辰起は一人そう言ってハンドルを撫でた
ナルディの木目の艶々した手触りを通してシビックと共に呼吸するように息を吐き出す。
(あの時…事故の直前
このシビックだったら…)
癖を完全に熟知し、この個体の挙動を完璧に抑える事の出来る辰起は事故の時の事を思い出していた
あの時、シビックだったら
その小さな車体を生かして祐紀也のGT-RやmarkⅡを避けることも出来ただろう
それほどまでに事故の時にS3Oの癖を掴みきれて無かったからだ
「ホント、久々会えて嬉しいんだぜ?
出来れば手放したくなんて無かったしな
もう…手放さなくてすむしな?」
__クオンッ
辰起の独り言に『わかってるよ』と言いたげに
シビックから一際甲高く乾いたエキゾーストノートが聞こえた
「っと、もう回ってきたか」
そんなこんなで
ゆっくり流していたのだがこの試験場はそれほど広くなく
ミニサーキット程度の広さしか無いためゆっくり回ってもすぐにピットまでついてしまった。
__ゴボォンッ!!
一度軽くエンジンを吹かして辰起はピットイン
ピットロードを徐行で走り邪魔にならなそうな場所にシビックを止める
既に受付嬢は戻ってきており
恐らく辰起に抜かれて追い付けないと悟とりゴール後直ぐにピットインしたようだ
「…お疲れ様でしたタツキさん…」
ガチャリとシビックのドアを開けて表へ出ると
受付嬢は駆け寄って労いの言葉を掛けてくれたのだがどことなく元気が無かった
「いえいえ、久々に踏んで走れて良かったです
えっと…それで試験は?」
辰起は元気が無い受付嬢に少しだけ小首を傾げて不安に思いながらも楽しかったと前置きをしてから急かすようにそう言う
すると受付嬢は軽く乾いた笑い声を上げ
一呼吸おいてから営業用の満面の笑みを浮かべる
「__文句なしに合格です!」
__________
あとがき
約一年ぶりの更新となりました。
本作品、当サイトでのちくわの処女作となっております
車が好きで冒険ものが好きだった為
なら混ぜてしまおうと書き始めたのが切っ掛けでした
しかし現実にはあまり自分と同じ考えの人がいらっしゃらないのか
中々に伸び悩み、拝啓のヒットを皮切りに打ち切りムードになってしまっていた事は否めません。
しかしやっぱり車が好きで好きで大好きで
ちくわが残り二ヶ月で教習所へ通い始めだー!となったとき不思議に続きが書きたくなってしまったのです
そんなこんなでこちらもまた更新再開となります。
まぁ不定期ですが、元はこちらの作品を書くために当サイトに登録したような物だったのでお話のストックはあります(ただストックとその話に持ってくまでの課程が円滑に行くか、必ずしも比例する訳でもございませんが)
というわけであとがきは以上となります
ストーリーの本筋は大体次回から始まります
登場させてほしい車種などありましたら感想まで
↓今のところの登場予定
・日産スカイラインHT2000GT-R
・日産スカイラインR-34GT-R VspecⅡ Nur
・日産スカイラインGTS-R
・日産シルビア S-14 Ks
・TOYOTA JZA70 スープラ
・TOYOTA Kp61 スターレット
・HONDA ワンダーシビック Si
・HONDA グランドシビック SIR
・HONDA シビック EG-6 SIRⅡ
・HONDA シビック EK-9 typeR
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