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交通事故に遭った私を、私が見ている
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さっき私が車に轢かれた。うん。死にそうだ。なぜ意識を失った私が交通事故に遭った事を認識しているかというと、何故か私の目には血を流している私と、空っぽの自動車、ざわめく野次馬が映っているからだ。
...つまり交通事故に遭った私を、私が見ているという事だ。これが現実ならば、間違いなく私は交通事故に遭ったということになる。
...どうして私が交通事故に遭ったか説明すると、私にもよくわからない。ただいつも通りに帰路を辿っていた私は、突如居眠り運転する車に後ろから轢かれた。
...それだと何故交通事故に遭ったかわかっているではないかって?違う違う、私が言っているのは経緯ではなく、必要性だ。この意味は私が交通事故に遭うべくして遭ったのではないか?という事だ。
...私がどこかで命で償わないといけない程の罪を犯していて、運命として交通事故に遭った...と考えたら、何故交通事故に遭ったかが判明する。だが、そもそも罪の尺度やら運命や宿命といった罰の話は非現実的だ。だから「どうして私が交通事故に遭ったかわからない」と言ったのだ。
...そもそも交通事故に遭う確率といのは、部屋に引き篭もっているニート以外には平等なものではないか。運転手もかわいそうだ、偶然私という人間を轢いてしまったのだから。それにこんな事を言ってはあれかもしれないが、私にも落ち度はあるのかもしれない。もしかしたらイヤホンを大音量で耳に刺し、TikTokに夢中になって歩いていたのかもしれない。だとしても結局は轢いた男が悪いのだけど。
...救急車の音が聞こえる。私は助かるのだろうか。下半身が潰れていて、頭どころか上半身全体からしとどに血を流し、さっきからぴくりとも動かない。これで生きていたら奇跡だろう。いやでも、私という人間が私を見れている時点で死んではないのではないか?どうなのだろう。私にも今起きている事が浮世離れしすぎていて理解ができていない。
...救急車が到着した。救急隊が凄惨な現場を目の前に戦慄しているのがわかる。救急隊の人は私に声をかける。事故状況の確認や現場の見通し、車両の走行速度に信号の色...そんなもの私に聞かれてもわかるわけがない。だって私は轢かれた側の人間なのだから...
...現場には救急車に続いて警察も到着した。警官は頭が真っ白になっている私をパトカーに乗せた。どうして私が警察署に連行されるのだろう。私は被害者で、連行されるべきなのは事故を起こした運転手だというのに...
...事情徴収時に聞かされた事だが、私は死んでいたらしい。即死だった。私は冷や汗が止まらなくなった。これからの将来が真っ暗になり閉ざされていくのを確かに感じた。いやでも、私は死んでいるのだから関係ない。関係ないんだ。だから私はそれを警察に聞かされた時、自分の命に対して、「ああ、間に合わなかったんだな。即死だけど笑」と震え声で感想を告げた。その時の警察の怒りと恐怖の混ざったような歪んだ顔を死ぬまで忘れることはできなさそうだ。
...続いてのニュースです。先日〇〇県〇〇市内で交通事故が起こり、17歳の女子高生、〇〇〇〇さんが亡くなりました。事故を起こした運転手、〇〇会社勤務の男性、39歳の〇〇〇〇は容疑を否認しており、「どうして私が事故に遭ったかわからない」と供述しているようです。
...つまり交通事故に遭った私を、私が見ているという事だ。これが現実ならば、間違いなく私は交通事故に遭ったということになる。
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...そもそも交通事故に遭う確率といのは、部屋に引き篭もっているニート以外には平等なものではないか。運転手もかわいそうだ、偶然私という人間を轢いてしまったのだから。それにこんな事を言ってはあれかもしれないが、私にも落ち度はあるのかもしれない。もしかしたらイヤホンを大音量で耳に刺し、TikTokに夢中になって歩いていたのかもしれない。だとしても結局は轢いた男が悪いのだけど。
...救急車の音が聞こえる。私は助かるのだろうか。下半身が潰れていて、頭どころか上半身全体からしとどに血を流し、さっきからぴくりとも動かない。これで生きていたら奇跡だろう。いやでも、私という人間が私を見れている時点で死んではないのではないか?どうなのだろう。私にも今起きている事が浮世離れしすぎていて理解ができていない。
...救急車が到着した。救急隊が凄惨な現場を目の前に戦慄しているのがわかる。救急隊の人は私に声をかける。事故状況の確認や現場の見通し、車両の走行速度に信号の色...そんなもの私に聞かれてもわかるわけがない。だって私は轢かれた側の人間なのだから...
...現場には救急車に続いて警察も到着した。警官は頭が真っ白になっている私をパトカーに乗せた。どうして私が警察署に連行されるのだろう。私は被害者で、連行されるべきなのは事故を起こした運転手だというのに...
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