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第一章 《英雄(不本意)の誕生編》
第17話 登場。姉さんの師匠
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午後の授業の時間は、あっという間にやってきた。
昼休みの間にフランさんから一通り《選抜魔剣術大会》とその代表選抜の概要を聞いた。
大会本番は一ヶ月後。
それまでに本校から出場する代表者を8人決めるらしい。
それを決めるのは来週学内で開催される代表者選抜の決勝大会。
決勝大会に出られるのは、学年ごと6人ずつの計18人だ。
ではどうやって一年生部門の6人を選ぶかと言えば――今から行う「実戦訓練」の授業を利用した「学内予選」である。
クラスの数はS~Eの6クラス。
それぞれのクラスで最強の座に輝いた一人が、学内の決勝大会への切符を手に入れるわけだ。
……システムがややこしすぎて、フランさんの説明を聞きながら寝落ちしかけたのは内緒である。
とにかく、今からその学内予選を行うわけだ。
場所は編入試験で使った円形闘技場だ。
まだそんなに日も経ってないけど、懐かしいな。
キャピキャピお姉さんやゴリラ先輩は元気にしてるだろうか。
そんなことを考えていると、午後の授業開始を告げる予鈴が鳴り響く。
それと同時。
闘技場のステージに碧色の線が迸り、六芒星の魔法陣を描く。
「なんだ?」
訝しんだ俺の前で、その魔法陣は一瞬強い輝きを放ち、急速に引いていく。
床の魔法陣も消え去り、その場所には、講師用の黒いローブに身を包んだ男性が残っていた。
なるほど、転移魔法の類いか。
「さて。みんな揃っているかな?」
今転移してきたらしい講師が、ステージ上に並ぶ俺達を見まわす。
年の頃は30代前後と言ったところか? 美しいサラサラの銀髪を正面で分けた、面長で糸目の青年だ。
優しそうな顔立ちのイケメンという感じである。
あれ。というかこの人、どっかで見たことある気が……
「……あれ。君は」
ふと、俺達を見まわしていた青年の視線が俺の方に向けられて止まった。いや、糸目だから俺をみつめているのか、よくわからんけども。
「ひょっとして、エルザさんの弟さんかな」
「そうですが。もしかしてあなたは……ヒュリーさんですか?」
「ええ、そうです。大きくなりましたね、リクスさん」
ヒュリーさん……いや、ヒュリー先生はそう言って爽やかに笑った。
ヒュリー=アサシルス。
俺と彼には面識がある。まだ俺が10歳にも満たない頃、彼は俺達の家に出入りしていた。
何を隠そう、彼は姉さんの師匠である。
勇者の称号を得る前、姉さんはこの男からあらゆる剣術の基礎を叩き込まれた。
姉さんと歳は10かそこらしか離れていないが、昔から凄まじい剣技の持ち主だった。
剣を手放す前、俺も彼からいろいろ教わったことがある。
今の姉さんの剣術の基礎は、この男が作ったと言っても過言では無い。
ところが、何年か前に姉さんは自らヒュリー先生の元を離れた。いや、より正確に言えば師匠としてのヒュリー先生をクビにしたのである。
その理由は、別に興味も無かったから聞いていないが。
そういえば、編入試験の面接の時に、面接官のじいさんが何か言ってたな。とある事件を皮切りに、姉さんに失望されて追放されたって。
一体何をやらかしたんだか。まあ、どうでもいいけど。
それより、数年ぶりに会ったら、まさか王国最難関の英雄学校で教師をしているとは。世界は狭いものだ。
「先生が、実技訓練の試験官なんですか?」
「はい。今の私は、ラマンダルス王立英雄学校の講師にして、実技訓練の担当教官です。エルザさん様々ですよ。勇者を育てたという実績で、王国からこのような素晴らしい名誉職を斡旋していただいたのですから」
ヒュリー先生は屈託なく笑った。
ほんと、姉さんは凄い。勇者になったことで、ヒュリー先生の人生をバラ色に変えている。
どうかその勇者パワーで、わたくしめの人生も、バラ色のニート生活に導いてくれないだろうか。
そんなことを考えていると、ヒュリー先生は、期待の眼差しを俺に向けて言った。
「お姉さんほどではないかもしれませんが、私はあなたの中に潜在能力が眠っていると信じています。今日の予選、頑張ってくださいね」
「は、はい……頑張ります」
ヒュリー先生の笑顔が眩しい。
「いや、頑張る気はないんで」とはとても言えなかった。
――。
そして、当初の予定通り俺の対戦相手はバルダということになった。
ヒュリー先生やフランさん達他の生徒が見守る中、ステージの両端に向かい合って立った。
「へへっ、ボコボコにしてやらぁ」
バルダは野獣のような鋭い視線を俺に向ける。
それから、腰に佩いた剣を抜き放ち、上段に構えた。
俺も、あくびを噛み殺しつつ剣を片手で構える。
一瞬の静寂。
それを破るかのように、ヒュリー先生が声を張り上げた。
「それでは――決闘開始!!」
「うらぁああああああああああああ!!」
刹那、バルダが地を蹴って突進を開始した。
昼休みの間にフランさんから一通り《選抜魔剣術大会》とその代表選抜の概要を聞いた。
大会本番は一ヶ月後。
それまでに本校から出場する代表者を8人決めるらしい。
それを決めるのは来週学内で開催される代表者選抜の決勝大会。
決勝大会に出られるのは、学年ごと6人ずつの計18人だ。
ではどうやって一年生部門の6人を選ぶかと言えば――今から行う「実戦訓練」の授業を利用した「学内予選」である。
クラスの数はS~Eの6クラス。
それぞれのクラスで最強の座に輝いた一人が、学内の決勝大会への切符を手に入れるわけだ。
……システムがややこしすぎて、フランさんの説明を聞きながら寝落ちしかけたのは内緒である。
とにかく、今からその学内予選を行うわけだ。
場所は編入試験で使った円形闘技場だ。
まだそんなに日も経ってないけど、懐かしいな。
キャピキャピお姉さんやゴリラ先輩は元気にしてるだろうか。
そんなことを考えていると、午後の授業開始を告げる予鈴が鳴り響く。
それと同時。
闘技場のステージに碧色の線が迸り、六芒星の魔法陣を描く。
「なんだ?」
訝しんだ俺の前で、その魔法陣は一瞬強い輝きを放ち、急速に引いていく。
床の魔法陣も消え去り、その場所には、講師用の黒いローブに身を包んだ男性が残っていた。
なるほど、転移魔法の類いか。
「さて。みんな揃っているかな?」
今転移してきたらしい講師が、ステージ上に並ぶ俺達を見まわす。
年の頃は30代前後と言ったところか? 美しいサラサラの銀髪を正面で分けた、面長で糸目の青年だ。
優しそうな顔立ちのイケメンという感じである。
あれ。というかこの人、どっかで見たことある気が……
「……あれ。君は」
ふと、俺達を見まわしていた青年の視線が俺の方に向けられて止まった。いや、糸目だから俺をみつめているのか、よくわからんけども。
「ひょっとして、エルザさんの弟さんかな」
「そうですが。もしかしてあなたは……ヒュリーさんですか?」
「ええ、そうです。大きくなりましたね、リクスさん」
ヒュリーさん……いや、ヒュリー先生はそう言って爽やかに笑った。
ヒュリー=アサシルス。
俺と彼には面識がある。まだ俺が10歳にも満たない頃、彼は俺達の家に出入りしていた。
何を隠そう、彼は姉さんの師匠である。
勇者の称号を得る前、姉さんはこの男からあらゆる剣術の基礎を叩き込まれた。
姉さんと歳は10かそこらしか離れていないが、昔から凄まじい剣技の持ち主だった。
剣を手放す前、俺も彼からいろいろ教わったことがある。
今の姉さんの剣術の基礎は、この男が作ったと言っても過言では無い。
ところが、何年か前に姉さんは自らヒュリー先生の元を離れた。いや、より正確に言えば師匠としてのヒュリー先生をクビにしたのである。
その理由は、別に興味も無かったから聞いていないが。
そういえば、編入試験の面接の時に、面接官のじいさんが何か言ってたな。とある事件を皮切りに、姉さんに失望されて追放されたって。
一体何をやらかしたんだか。まあ、どうでもいいけど。
それより、数年ぶりに会ったら、まさか王国最難関の英雄学校で教師をしているとは。世界は狭いものだ。
「先生が、実技訓練の試験官なんですか?」
「はい。今の私は、ラマンダルス王立英雄学校の講師にして、実技訓練の担当教官です。エルザさん様々ですよ。勇者を育てたという実績で、王国からこのような素晴らしい名誉職を斡旋していただいたのですから」
ヒュリー先生は屈託なく笑った。
ほんと、姉さんは凄い。勇者になったことで、ヒュリー先生の人生をバラ色に変えている。
どうかその勇者パワーで、わたくしめの人生も、バラ色のニート生活に導いてくれないだろうか。
そんなことを考えていると、ヒュリー先生は、期待の眼差しを俺に向けて言った。
「お姉さんほどではないかもしれませんが、私はあなたの中に潜在能力が眠っていると信じています。今日の予選、頑張ってくださいね」
「は、はい……頑張ります」
ヒュリー先生の笑顔が眩しい。
「いや、頑張る気はないんで」とはとても言えなかった。
――。
そして、当初の予定通り俺の対戦相手はバルダということになった。
ヒュリー先生やフランさん達他の生徒が見守る中、ステージの両端に向かい合って立った。
「へへっ、ボコボコにしてやらぁ」
バルダは野獣のような鋭い視線を俺に向ける。
それから、腰に佩いた剣を抜き放ち、上段に構えた。
俺も、あくびを噛み殺しつつ剣を片手で構える。
一瞬の静寂。
それを破るかのように、ヒュリー先生が声を張り上げた。
「それでは――決闘開始!!」
「うらぁああああああああああああ!!」
刹那、バルダが地を蹴って突進を開始した。
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