裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? 

果 一

文字の大きさ
上 下
45 / 84
第二章 《最凶の天空迷宮編》

第四十五話 共闘開始

しおりを挟む
 瞬き一つの間に周囲に出現した、魚のモンスター達。

 その数、軽く500はいるだろう。



 第三迷宮サード・ダンジョン《トリアース》に落とされて、最初期に戦った跳蜂バンブルビィの大群より尚多い。

 そいつ等が鋭い牙をガチガチと打ち鳴らして、四方八方から一斉に飛びかかってきた。



「エナ、とーめちゃん、空中に飛ぶんだ!」

「え? うん、わかった!」

『きゅっ!』



 エナ達へ指示を飛ばしつつ、自分もクレアを背負ったまま思いっきり空中に飛び上がる。

 飛び上がった僕達へ、魚のモンスター達が食いつこうと肉薄する。



 目と鼻の先に迫ったそいつらには目もくれず、僕は右手を水面に向けた。



「《蒼放電ブルー・リリース》―落雷波紋サンダー・リップルッ!」


 電撃魔法スキル《蒼放電ブルー・リリース》を右手に起動。

 青白い稲妻がパチパチと掌に弾けたと思うと、極太の稲妻が水面めがけて迸った。



 雷鳴が轟くのと同じ速度で、水面に落ちた高電圧の稲妻は水中を伝わる。

 水中に伝播していく電撃は、ことごとく魚のモンスターに襲いかかり、たちまち丸焦げにしてしまった。



(か、間一髪だな)



 着地すると、僕はほっと安堵あんどの息をはく。

 が、安心したのも束の間。



 ザパァアン! 

 背後で水柱が上がり、咄嗟に振り返る。

 振り向いた僕の目に、硬い鱗で覆われた赤い魚のモンスターが映った。

 そいつは尾びれで水を叩き、瞬く間に距離を詰めてきた。



「なっ!?」



 まずい。

 スキルの起動が間に合わない!



 死を覚悟した、その瞬間だった。

 僕とモンスターの間に、エナが割って入る。

 その両手には、《火炎付与フレア・エンチャント》を施した炎を纏う剣――通称、紅炎剣プロミネンス・ソードが握られていて――



赫灼打突クリムゾン・スティンガー!」



 エナの右腕が霞むように動き、く鋭い突きが放たれる。

 剣に絡みつく紅炎こうえんが眩く輝いたかと思うと、一条の熱線と化してモンスターの身体を貫いた。



 炎の突きにやられた魚のモンスターは瞬く間に炎に包まれ、やがて炭化した先からボロボロと崩れた。



「エランくん、大丈夫?」



 剣を腰に戻したエナが、バシャバシャと水を跳ね上げて近寄ってきた。



「うん、お陰様で。相変わらず強いね。助かったよ」

「そんな……私こそ驚いたわ。まさかあのエランくんが、ほんのちょっとの間に、こんな強くなっていたなんて」

「まあ、最下層に追放されてからいろいろあったから」



 はにかみながら答える。

 それからふと、魚のモンスターの群れが出てくる直前に響き渡った声が、脳裏にフラッシュバックした。



 ――『第一階層さいかそうに侵入者を発見。排除する』――



 さっき、確かにそんな声が聞こえた。

 《モノキュリー》に備えられた自動音声システムの類いなんだろうけど、問題はこの第一階層が最下層であると言っていたことだ。



 憶測だが、それはつまり。



(このダンジョンは、この階層しか存在しない。延々と続く、夜の水面みなもしかない……ってことか?)



 だとしたら、ウッズは? 今までこのダンジョン攻略に訪れた人はどこにいるのか?

 360度ぐるりと見まわしても、人の姿はただの一人もない。

 果てしない水平線の先にいるのか、はたまたこの世界にはいないのか?



 だって、まるでこの空間には僕達しか存在しないかのような、寂しさと冷たさで満たされているのだ。



「これから、どうすればいいと思う?」

「どうって、クレアさんの正体を調べるために、謎の人物に会うんでしょう? あとついでに、まだ生きてるならウッズを助けることもするんじゃないの?」

「そうなんだけどさ」



 僕は、背中に背負ったクレアを振り返る。

 ――少し不自然だった。

 まだ、ダンジョンに入って数分しか経っていないというせいでもあるのだろうが、一向に顔色がよくなる気配がない。

 いや、むしろさっきより苦しそうにしているような……



「クレアの体調が良くならないのが気がかりだ。僕だけに話しかけてきた、謎の男なら何か知ってるかも知れない。だから、一刻もはやくそいつを見つけたいんだけど……どこに行けば良いのかな」



 人っ子一人見えない、寂しい空間。

 声の主がどこにいるのかもわからない。そればかりか、本当にここにいるのかすら怪しかった。



「とりあえず、進んでみるしかないんじゃない?」

「そう、だね。……ただ、いくら探しても無駄な気がして、怖いけど」

「そんなことないでしょう? どこかには絶対いるわよ」

「だといいけど……」



 根拠のない不安が、靄のように心臓に纏わり付いてきた――そのときだ。



『無駄だ』



 魚のモンスター達が襲ってくる直前に聞こえた声が、どこからともなく響いてきた。



「え?」



 目を見開いた僕の前に、巨大な水柱が立ち上がる。

 水を割り、現れたそいつは――巨大なカエルのような見た目のモンスターだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...