裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? 

果 一

文字の大きさ
上 下
28 / 84
第一章 《最下層追放編》

第二十八話 ウッズの苛立ち

しおりを挟む
《ウッズ視点》

「ちくしょうが!」



 俺は、足下の石橋を踏みつけた。

 パーティを追い出されてしばらく、行く当てもなく第七階層を彷徨っていたのだが、気付かぬうちに野郎エランを追放した場所まで戻ってきていた。



「ったくよぉ、見限ってもあいつの影が脳裏にちらつきやがる! 鬱陶しいんだよこのハエヤロウ!」



 ビキビキと青筋を立てて、吐き捨てる。

 どこで狂った? どうして俺は独りでこんなところにいる?



 それを思う度、最終的にはエランという存在にたどり着く。

 あいつが貴重なポーションを全部持ったまま落ちなければ。ヤツを追放する瞬間を、エナが見ていなければ。



(こんなことにはならなかったんだ……!)



 図らずも出た舌打ちが、深い縦穴に吸い込まれていった。

 と、そのとき。



「「「「――ぁぁぁぁあああああアアアアッッッ!!」」」」



 何人もの叫び声が、下から聞こえるのを感じた。

 最初は微かだったのに、その声はみるみる大きくなっていく。



「な、なんか上がってくる!?」



 何事かと、橋の端から真っ暗な底を覗いた。

 この橋にやって来る前、何か咆哮のようなものを聞いた気がするが――この声の主達と何か関係があるのか?



 そんなことを考えていた矢先、縦穴の暗闇をぬぐって、巨大な石の板に乗った大量の人間がカッ飛んで来るのが見えた。



「――っ! ぶつかる!」



 反射的に身を退いた瞬間。

 ドォオオオンッ! という凄まじい音を立てて、岩の板が橋に激突した。



「ぐっ!」



 橋全体がグラグラ揺れる中、気合いで踏ん張って踏みとどまる。



(い、一体何が突っ込んで来たんだ……?)



 激突した衝撃でもうもうと立ちこめる煙の向こうから、岩の板に乗っていたであろう人々が、咳き込みながら降りてきた。



「な、なんとか助かった」

「アイツ、無茶しやがッて。スリル満点で楽しかッたがよォ」

「さすが、SSクラスを一人で倒しちゃう子は、やることが一味違うの」



「な、なんだお前等……? なんで下から上がってきやがった!」



 俺は、状況がのみ込めずあんぐりと口を開けたまま、彼等に問う。



「あらま、人がいたのか。これはご迷惑をお掛けしました。俺は大規模パーティ《テンペスト》のリーダー、カルム。以下、バールにナナミなど。総勢34名。最下層の攻略中にSSクラスの巨大モンスターに襲われ、命からがら逃げてきたんだ」



 カルムと名乗った男は、慇懃に頭を下げた。



「最下層から?」



 その言葉に、ぴくりと反応する。

 俺が、アイツを追放してやった先だから。



「ええ、まあ。でも、SSクラスモンスターにやられて死にそうなところを、とある方に助けられて、今もここまで逃がして貰いました。その方には、感謝してもしきれない」



 笑顔で語るカルムを冷めた目で見ながら、俺は「そんな強いヤツもいるのか」とテキトーに返した。



「ああ、本当に強かッたぜ? なんせ、単騎でジャイアント・ゴーレムをブッ潰しちまうんだからなァ、あのエランてヤツは」

「――っ!?」



 俺は耳を疑った。



(コイツ今、エランて言ったか?)



 ……いや、有り得ない。

 あいつのランクはEだ。仮に落下から生き残ったとしても、サイクロプスに殺されているはず。ましてや、SSクラスのモンスターを一人で倒せる力なんて、あるはずがない。



 たぶん、同じ名前の別人だ。

 そう信じたかったが、次にカルムが言った発言で、不穏が確信に変わってしまった。



「しかし、エランくんも大したもんだよ。役立たず認定されてパーティリーダーに見すてられたのに、あっという間に強くなったんだから」

「んなっ!?」



 絶句して、一歩後ずさる。



(あ、有りえねぇ。アイツが……あんなヤツが……!?)



 ふざけるな。

 本当ならお前はもう死んでいるはずなんだ。なのになんで、荷物持ちをやっていた頃よりも、俺の神経を逆なでする!?

 勝手に俺より強くなって、調子に乗ってるつもりか!



「どうしたんだい、君。なんだか顔色が優れないけど」



 気付けば、カルムが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。

 

「っ! なんでもない」



 荒っぽく言い捨て、俺は踵を返す。

 

「どこ行くんだい?」

「どこに行こうが俺の勝手だろうが!」

「そ、それはそうだけど……」



 なんで怒ってるんだろう? とひそひそ話し合うカルム達を尻目に、俺はゆっくりとその場を立ち去る。



(あいつ……今度会ったらぶちのめしてやる!)



 気に入らない。

 あんなクソ雑魚が《緑青の剣》の最高戦力たるエナに気に入られている現実も、ゴミ屑のくせに強くなって、いろんな奴等にいい顔してることも。

 アイツの全てに腹が立つ。



(最下層の単騎攻略……あのヤロウにできて、俺に出来ないはずがねぇ!)



 アイツのことだ。どうせインチキで強くなったに違いない。

 だったら、そんな鼻持ちならないヤツは、実力を示して黙らせるまでだ。



 だから、次に行く場所は決まった。

 俺は立ち止まって、振り返らずに叫んだ。



「あえて行く場所を言うなら、第一迷宮ファースト・ダンジョン《モノキュリー》だ」

「な、なんだって!?」



 驚いたようなカルムの声が聞こえた。



 第一迷宮ファースト・ダンジョン《モノキュリー》。

 王国に五つ存在する迷宮の中で、最も攻略難易度が高い、天空の迷宮ダンジョンだ。



「無茶だ! 君一人だろう? あのダンジョンは他の四つとはわけが違う。一度入ったら完全制覇するまで出ることができない、呪いのダンジョンだ! 死ぬ気なのか!?」

「死ぬ気じゃなきゃダンジョン攻略なんてしねぇよ!」



 苛立ち混じりに言い捨て、俺は足音を立てて足早にその場を後にするのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...