裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? 

果 一

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第一章 《最下層追放編》

第十八話 凱旋の決意

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 白い凍気とうきを振りまいて、氷のトライデントが飛翔する。

 いくら岩のように硬い身体でも、氷の刃で突かれれば、ダメージは免れない。



 そう確信したが――甘かった。

 刃先がジャイアント・ゴーレムに届く寸前、そいつの身体がボコボコと盛り上がり、ガチゴチに固まったのだ。

 激突した氷のトライデントは、ジャイアント・ゴーレムに刺さらず、涼やかな音色を立てて粉々に砕け散った。



「なっ……! 《硬質化ウェア・ハード》のスキルか!」



 凍らす間もなく弾くなんて、どういう強度してるんだ。ダイヤモンド加工職人にでも転職してくれ頼むから!



 などと思いつつ、次なる一手を模索する。

 と。



「あ、あんた……助けてくれたのには感謝するが、今すぐに俺達を置いて逃げるんだ。万が一にも、勝ち目はない」



 不意に、すぐ側で横たわっていた男に声をかけられた。

 全身はボロボロで、酷い有様だ。他人のことなんて心配してる場合じゃないのに……こういう人間もダンジョンにはいるのか。



 少し感心したのも束の間。

 

「なに言ッてんだよリーダー! 助けて貰ッた方がいいッて! 俺ァまだ死にたくねェんだよォ!」



 水を差すかのように、筋肉質でいかにも粗暴そうな外見をした男が叫んだ。

 彼もまた、全身血だらけでその場に横たわっている。



「なッ、お前頼むから助けてくれよォ。俺達全員を抱えて、なんとかこの部屋の外まで出しちャくれねェか?」

「無駄だバール」



 リーダーと呼ばれた男が、淡々と答えた。



「どのみちジャイアント・ゴーレムを倒さなければ、次のステージへの扉は開かない。この最下層からは脱出できない。俺達はもう、詰んでるんだ」

「そ、そんなバカなァ……」



 絶望に打ちひしがれるバール。

 酷い顔で僕の方へすり寄ってきながら、バールは必死に懇願してきた。



「頼むよアンチャン。俺はァまだ生きてェんだ……見すてないでくれ」

「いや、君だけでも逃げるんだ。部外者にウチのパーティの尻ぬぐいをさせるわけにはいかない」

「何を言うんだリーダー、命あッての物種じャねェか!」

「そうだけど、これは俺達の失態だ。関係ない人間も巻き込んで死なせるわけには――」



 急に言い合いを始める二人。

 この状況、本当にわかってるんだろうか。



 ジャイアント・ゴーレムを視界におさめながら、僕はいい加減うんざりして答えた。



「何を言っても構いませんけど、僕はどちらの言うことも聞きませんよ」

「な、なんだって?」



 リーダーが息を飲む音が聞こえる。



「だって僕、あなた達のパーティメンバーじゃありませんから。一人で逃げる気も無いし、全員抱えて逃げる気もありません」

「何言ッてやがんだ? じャあ、他にどうやるッてんだよ」

「全員死なせず勝ってここを出ます」

「はァ? ふざけたことぬかしてんじャねェぞ。そんなことできるわけ――」

「僕は至って真面目ですが」

「ッ!」



 とたん、バールは意表を突かれたかのように押し黙る。

 それでいい。こちゃごちゃ言われても気が散るだけだ。

 

 と、次の瞬間。

 待ちかねたかのように、ジャイアント・ゴーレムが動いた。



 巨大な拳がゆっくりと上に持ち上げられ、丸太の何倍も太い指が開かれる。

 向けられた掌が、僕達を覆い尽くすほどの巨大な影を落とした。

 

(今度は面積の広い掌で、一網打尽に押し潰す気か?)



 そう思ったが、次の瞬間そうでないことを悟った。

 ごうっ! 音を立てて、掌に巨大な火球が生じる。

 辺りが昼間のように明るくなり、溢れ出す熱気がジリジリと肌を焦がした。



「これはまさか、《紅炎極砲フレア・カノン》っ!?」



 間違い無い。

 超威力の火炎魔法を使う気だ。あんなのを喰らったら、骨も残らず消し炭になる。



 なんとかしなきゃ!

 が、考える間もなく灼熱の炎は、僕等に向かって放たれた。



「くっ、スキル《冷却波クール・ウェーブ》―氷点下掌打ビロウゼロ・パームッ!」



 火を打ち消すには氷しかない。

 咄嗟に判断し、両手の掌に凍気を纏う。



 荒ぶる熱球と渦巻く冷気が衝突。

 氷の粒が一瞬にして蒸発し、冷やされた空気が膨張する。

 

 ボンッ!

 弾けるような音を立てて水蒸気爆発が起こり、真っ白な熱風が吹きすさぶ。

 

「くっ!」



 あまりの衝撃に耐えきれず、身体が後ろへ放り出されそうになる。

 倒れている面々もまた、為す術無く後方へ転がされていくのが視界の端に映った。



(このままじゃ僕も飛ばされる……飛ばされてたまるかっ!)



 ぎりっと歯を食いしばり、スキル《速度超過スピードアップ》の残り時間を使って、力尽くで暴風に逆らい突進する。

 3倍の加速で、辛うじて風の流れに逆らえる。



(あと、もう少し……ッ!)



 手を伸ばし、ジャイアント・ゴーレムを掴もうとしたそのとき――ガクンと身体が後ろに傾ぎ、両足が地面から離れる。



 《#速度超過_スピードアップ__#》、30秒の即席強化インスタントの時間切れだ。



「まじか……ここで!?」



 驚愕に目を見開く中で、みるみるジャイアント・ゴーレムが遠ざかる。

 生身で突風には逆らえない。



 だが、このままやられるつもりもない。

 遠ざかる敵を見据え、《衝撃拳フル・インパクト》を右手に起動した。

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