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第一章 《最下層追放編》
第十一話 Ace エナの実力
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《ウッズ視点》
『ワォオオオオオオンッ!』
深墨犬の遠吠えが、宝物庫の地面を、天井を、激しく揺らす。
「覚悟してよね。私今、すごく機嫌が悪いんだから」
俺達の前に立ったエナは、不機嫌そうに鼻を鳴らして剣を空振りした。
ひゅぱっと、空気を裂く音が鳴る。
それから、低い声でぼそりと呟いた。
「スキル《火炎付与》― 紅炎剣」
ボッと音を立てて、エナの持つ双剣が赤く燃えあがる。
魔法スキル《火炎付与》。
火炎を武器や防具に付与することのできる、火炎魔法。
エナは、この《火炎付与》を、自身の持つ二本の剣に付与して闘うことを基本スタイルにしている。
「火傷程度じゃ済まないかもしれないけど……許してね」
言うが早いか、エナは地面を蹴って駆けだした。
そんな彼女を迎え撃つように、深墨犬は鋭く生えそろった牙を剥く。
深墨犬の牙が、エナを噛み砕こうとした、その瞬間。
「はっ!」
掛け声と共に、エナは空中へ飛び上がった。
首をもたげる深墨犬の頭を踏んで、エナは更に跳躍。
両手の剣をX字に構え、真っ逆さまに落下する。
「赤炎交差」
重力の加速を上乗せして、真っ赤に燃える斬撃を繰り出した。
すれ違い様、赤い十字の斬撃が深墨犬を深く切り裂く。
『ギャオォオオンッ!』
断末魔を上げ、深墨犬はその場に崩れ落ちた。
「完了」
クラスBのモンスターを文字通り瞬殺したエナは、とくに誇る様子もなく事務的に言い放った。
ああいうすかしたところが、心底気にくわない。
周りの連中も「流石エナさんだ!」「痺れるぜ!」などと騒ぎ立てている。
アイツらもアイツらだ。《緑青の剣》のリーダーは俺だ。惚れる相手を間違えてんじゃねぇよ。
刀身に付いた火の粉を払い、剣をおさめたエナは、俺の方を振り返った。
「言いつけどおり、敵は倒したよ。でも……話して貰うからね。エランくんを囮に使って死なせた理由を」
彼女がそう言い放った瞬間、再度どよめきの波がメンバーに波及する。
「そうなの? リーダー?」
リシアが、不安げな顔で俺の方に近寄ってきた。
「ああ、そうだよ」
答えた瞬間、メンバー達の表情が一層曇った。
何をそんなに驚く必要があるのか?
あのとき俺は、最善の選択をしたんだ。
そうだ、俺は悪くない。
俺は、エナの求める答えを淡々と語り出した。
『ワォオオオオオオンッ!』
深墨犬の遠吠えが、宝物庫の地面を、天井を、激しく揺らす。
「覚悟してよね。私今、すごく機嫌が悪いんだから」
俺達の前に立ったエナは、不機嫌そうに鼻を鳴らして剣を空振りした。
ひゅぱっと、空気を裂く音が鳴る。
それから、低い声でぼそりと呟いた。
「スキル《火炎付与》― 紅炎剣」
ボッと音を立てて、エナの持つ双剣が赤く燃えあがる。
魔法スキル《火炎付与》。
火炎を武器や防具に付与することのできる、火炎魔法。
エナは、この《火炎付与》を、自身の持つ二本の剣に付与して闘うことを基本スタイルにしている。
「火傷程度じゃ済まないかもしれないけど……許してね」
言うが早いか、エナは地面を蹴って駆けだした。
そんな彼女を迎え撃つように、深墨犬は鋭く生えそろった牙を剥く。
深墨犬の牙が、エナを噛み砕こうとした、その瞬間。
「はっ!」
掛け声と共に、エナは空中へ飛び上がった。
首をもたげる深墨犬の頭を踏んで、エナは更に跳躍。
両手の剣をX字に構え、真っ逆さまに落下する。
「赤炎交差」
重力の加速を上乗せして、真っ赤に燃える斬撃を繰り出した。
すれ違い様、赤い十字の斬撃が深墨犬を深く切り裂く。
『ギャオォオオンッ!』
断末魔を上げ、深墨犬はその場に崩れ落ちた。
「完了」
クラスBのモンスターを文字通り瞬殺したエナは、とくに誇る様子もなく事務的に言い放った。
ああいうすかしたところが、心底気にくわない。
周りの連中も「流石エナさんだ!」「痺れるぜ!」などと騒ぎ立てている。
アイツらもアイツらだ。《緑青の剣》のリーダーは俺だ。惚れる相手を間違えてんじゃねぇよ。
刀身に付いた火の粉を払い、剣をおさめたエナは、俺の方を振り返った。
「言いつけどおり、敵は倒したよ。でも……話して貰うからね。エランくんを囮に使って死なせた理由を」
彼女がそう言い放った瞬間、再度どよめきの波がメンバーに波及する。
「そうなの? リーダー?」
リシアが、不安げな顔で俺の方に近寄ってきた。
「ああ、そうだよ」
答えた瞬間、メンバー達の表情が一層曇った。
何をそんなに驚く必要があるのか?
あのとき俺は、最善の選択をしたんだ。
そうだ、俺は悪くない。
俺は、エナの求める答えを淡々と語り出した。
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