【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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第五章 『ダンジョン・ウォーターパーク』の光と影編

第122話 意外な一面

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《翔視点》

 ――かくして、『ダンジョン・ウォーターパーク』へ赴くメンバーは決まった。
 メンバーとしては、俺と、俺の連れとして高嶺乃花、涼城真美、八代英次、潮江かや、それからプロ冒険者の白爪直人と縁七禍の7名。

 大所帯となった結果、無事寺島さんの財布に氷河期がやって来ることが確定した。(なお、めちゃくちゃ謝った)

 そして、南あさりと、その連れとして栗落花梅雨と熊猫パンダの3名。(こちらは、ダンチューバー事務所が経費を出すので、寺島さんの財布にダメージはない)
 以上の10名で『ダンジョン・ウォーターパーク』に向かうことが決まった。
 
 ちなみに、日にちに関しては向こうがいくつか候補を出してくれたため、全員の開いている日にちを照らし合わせて6月の第二日曜日に決定した。
 6月も中旬に差し掛かった辺りだから、少し早いプール開きとしてはピッタリだ。

 普通にプールや海水浴場に行く場合、梅雨の季節は避けたいところだが、『ダンジョン・ウォーターパーク』はダンジョンを改装しているという特性上、一部の施設を除き、9割の施設が屋内に据えられている。
 よって、天候を気にする必要は皆無なのだ。
 だから、心置きなく楽しめる。
 
 それはそれとして、だ。
 他にも5月末(今週末)や6月上旬という選択肢もあったが、皆の予定が噛み合ったのが半月先の6月中旬となったのにはワケがある。

 ――入学して早二ヶ月。
 これまでいろいろなことがあった。思い返せば思い返すほど、濃いと言うより他にない日常を送っていた。
 今までの出来事をスケジュール帳にして振り返れば、それはもうとんでもないことになっているだろう。ラノベ主人公バリにイベントが起きすぎである。

 だから、すっかり忘れていた。
 俺は、俺達の本分は――学生であるということを。
 つまり、何が言いたいかと言うと。

「お、オワッタ……」

 数Ⅰ・Aの参考書を開いたまま、テーブルの斜向はすむかいに座る潮江かやが突っ伏して、そのまま灰になった。

「お、落ちつきなって! 私達の戦いは、ま、まだ始まったばかり!」
「いや、あなたが落ち着いて真美ちゃん。教科書逆に持ってるよ!」
「はっ!」

 そんな風にやり取りをしているのは、俺の向かいに座って英語の問題集の乃花と、その隣で現代社会の教科書を逆さに持って戦々恐々としている真美さん。
 
「まあ、あと一週間切ってるんだもんなぁ。焦るのもわかるぜ」

 言葉とは裏腹に、几帳面なノートをチェックして要点をまとめているのは、俺の隣(潮江さんの向かい)に座る英次だ。

 ――そう。何を隠そう、俺達には倒さねばならぬラスボスがいるのだ。
 中間テストという名の、世にも恐ろしき怪物が。
 世の中の中高生は、この恐ろしい怪物に真っ向から立ち向かわなくてはならないのである。

 英次の言うように、俺達に残されたリミットは一週間。
 昨日からテスト週間が始まっているから、実質あと6日しかない。

 テスト週間に入るとほとんどの部活が休みになり、放課後は学食と図書館が生徒向けに長時間開放される。
 そんなこんなで、俺達は『ダンジョン・ウォーターパーク』でのお楽しみの前に控えるラスボスを倒すべく、こうして学食に集まってテスト勉強に励んでいるのだ。

「うぅ~なんだよ。サイン、コサイン、タンジェントってなんだよぉ~! 問題解いてもぜんっぜん答えが合わないんだけどぉ~!」

 潮江さんが、目をグルグル回しながら頭を掻きむしる。
 
「あーもうさっきからうるせぇなお前は」
「はぁ? あんたにあたしの何がわかるって言うのよ! こんなんもはや魔法よ魔法!」
「ぎゃあぎゃあ喚くな。ほら、どこがわかんねぇんだ言ってみろ」

 不意にずいっと身を乗り出した英次に、潮江さんは戸惑う様子を見せる。

「え……あ、あんたが教えてくれんの?」
「目の前で騒がれたら集中できないからな。……っと、問3で詰まってんのか」
「こ、公式に当てはめても答えが出なくて……」

 急に借りてきた猫のように大人しくなる潮江さんを無視して、英次は解きかけの問題集を睨む。
 やがて、不意に英次の眉根がぴくりと動いた。

「お前、これ根本的に間違ってるぞ」
「間違ってるって、何を」
「公式だよ。タンジェントを求めたいのに、コサインを求める公式使ってどうすんだ」
「え……あ!」

 間違いに気付いた潮江さんの顔が、みるみる赤くなっていく。
 英次は、頭の後ろをポリポリと掻きながら、

「まあ、凡ミスだわな。三角関数の公式はやたら多いし、仕方ねぇだろ」
「あ、ありがと……って、そういえばあんた、一切教科書とか見ずにあたしの間違い訂正してたよね。まさか、公式全部覚えて……?」
「あ? そりゃまあな。短期記憶じゃ頭に残らねーし。何回か思いだして忘れないようにしてたら覚えたわ」
「…………」

 じーっと、無言で英次を見つめる潮江さん。

「な、なんだよ」
「英次って、これまでの全科目の小テストの平均点、どれくらい?」
「えー……科目にもよるが、大体9割はとってるが」
「「「「え」」」」

 俺も含めて、全員が反応した。

「な、なんだよお前等。言っておくが、嘘なんかついてねぇぞ!」

「いや、嘘ついてるとは思ってないけどさ」と俺。
「なんというか、普段IQ2のバカそうなノリを見てるとさ」と真美さん。
「言い方は悪いんだけど、ちょっと驚いちゃったというか……八代くんって、意外と頭よかったんだね」と乃花。

 そして、最後に「なんか、あんたの癖に頭良いの、ムカつくんだけど」と毒を吐いたのは潮江さん。

「お、お前等……俺への認識、ちょっと酷すぎじゃね? 泣いていい? 泣いていいよな?」
 
 既に半分涙目で嘆く英次。
 今日――親友の意外な一面を知った。
 
 
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