【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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第五章 『ダンジョン・ウォーターパーク』の光と影編

第121話 代表取締役、富田潤沢

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《三人称視点》

 ――そこは、翔達が住んでいる街から電車で三時間ほどの距離にある街。
 数年前まで細やかなレジャー施設があるということで地元の人が集まる場所であったが、今は千葉県にある某人気テーマパークを彷彿とさせる活気を見せていた。

 それもそのはず。
 今まで、何の変哲も無い小さな遊園地と、攻略する楽しみの薄い小さなダンジョンしかなかったその場所が、ダンジョンを改良することで巨大なテーマパークに様変わりしたからだ。

 冒険要素を廃し、逆にダンジョン内の水生生物を眺めながら、自身等もプールを楽しめるという贅沢極まりないそのテーマパークこそが『ダンジョン・ウォーターパ―ク』である。

 そんな『ダンジョン・ウォーターパーク』に併設された屋敷。
 現代日本には珍しい、西洋貴族風の屋敷の一室で、煌びやかな調度品に囲まれながら、1人の男がくつろいでいた。

 年の頃は40代も後半。
 普段の不摂生が目に見えてわかると言わんばかりに、薄くなった頭皮と血色の悪い顔、大きく突き出した腹を持つ中年男である。

 男が背を持たれている猫足のソファも然り、カーペットや絵画のどれをとっても高級品。
 しかし、煌びやかすぎる室内はかえって毒々しい印象を見る者に与え、ともすれば品の無い部屋にも思えた。

「ふぅ~」

 男は、今時絶滅してると言っても過言ではない葉巻をくゆらせ、立ち上る紫煙をつり上がった目で眺める。
 と、不意に部屋の扉がノックされた。

「失礼します。今宜しいでしょうか、
「構わん、入って良い」

 男――富田潤沢は、腰掛けていたソファの肘掛けに手を突いて、でぷりとしたお腹を持ち上げつつ深く座り直す。
 その際、ソファがギシギシと軋む音を上げたが、当人は気にした素振りを見せずに、入ってきた痩せぎすの部下を流し見た。

「ダンジョン運営委員会及び、ダンチューバー所属事務所から通達がありましたので、報告に上がりました」
「うむ。例の件の返事か?」
「はい。プロ冒険者の矢羽翔様。及び、ダンチューバーの南あさり様両名において、こちらの要請を快諾してくださったとのことです」
「まあ、当然の返事であろうな」

 含み笑いを浮かべながら、富田潤沢は満足げに言った。
 こちらの要請、とは言わずもがな“『ダンジョン・ウォーターパーク』の宣伝依頼”のことである。

 代表取締役である富田潤沢直々に頼んだことであったが、予想通り快諾してくれたようだった。

(クックック。有名人と言ってもたかが子どもであろう。このワシ直々に依頼して断るなどという愚行をする勇気などなかろうて)

 富田潤沢には、力がある。
 財力という名の、圧倒的な力が。
 だからこそ、運命は常に自分に味方するのだと、彼は信じて疑わない。
 
「彼等を宣伝担当として呼び込めたことで、我が『ダンジョン・ウォーターパーク』の知名度は更に向上。日本ナンバーワンテーマパークとしての地位も盤石となるであろう。そうは思わぬか?」
「はい。私もそう思います」

 話を振った部下からの答えに、富田潤沢は満足げに頷いた。

(今日は気分が良い。今宵は100年もののワインでも開けるとするか)

 そんな風に思っていた潤沢だったが、部下からの次の発言に気分を害することとなる。

「あの……もう一つ報告が」
「なんだ?」
、またも会わせろと連絡が入っておりますがいかがいたしましょう」
「チッ」

 潤沢は露骨に舌打ちして、じろりと男を睨んだ。

「何度も言っておろうが。あんな取るに足らん弱者の遠吠えなど、無視すればいいのだ!」
「しかし――」
「くどい!」

 ガシャンと音がする。
 潤沢が、近くのテーブルの上にあったワイングラスを床にたたき付けたのだった。

 思わず息を飲む部下へ指を指し、潤沢は唾を飛ばしながら怒鳴りつける。

「いいか! この場でのトップはワシだ! 貴様のような取るに足らんクズを、誰が雇っていると思っているんだ。えぇ!? 貴様ワシに逆らう気か!」
「も、申し訳ございません!」

 震える声で頭を下げる部下に、舌打ちを一つ投げ、潤沢は「もう良い、下がれ」とだけ命じた。

(まったく、どいつもコイツも忌々しい!)

 1人になった部屋で、潤沢は新しい葉巻に手を伸ばす。

(だが、良い報せもあったことだ。今日はそれでよしとしようではないか。所詮、彼等の意見などワシの立場を揺るがすこともできん、弱者の嘆きでしかないのだから)

 葉巻に火を付け、ゆっくりと堪能しながら潤沢は笑みを浮かべる。
 傲慢な男は、こうして、翔達がやって来る日を楽しみに待っているのだった。
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