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第五章 『ダンジョン・ウォーターパーク』の光と影編
第115話 もう一人の宣伝担当
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『ダンジョン・ウオーターパーク』
その名前は、俺も聞いたことがある。
とある資産家が、5階層しかない小さなダンジョンをダンジョン運営委員会から買い上げ、独自に改良したレジャー施設だ。
いくつものプールや温泉の脇に巨大な水槽があり、ダンジョン内の水の中に住んでいるモンスターが泳いでいるという、少し変わった施設でもある。
その代表取締役がご指名となると――
「相手は資産家の富田潤沢さんですか?」
「そういうことになるな」
富田潤沢。
昨年の大富豪ランキングで、県内3位に輝いたお金持ちだ。
買い取ったダンジョンを大人気レジャー施設にしてしまう辺り、お金と人を引きよせる嗅覚は優れていると言って差し支えないだろう。
「俺としては、異論はないですよ?」
「そうか、それならば助かる。……話はこんなものだな。何か質問はないか?」
「そういえば、指名を受けたのって俺だけなんですか?」
何気なくした質問に対し、やはり何気ない調子で寺島さんは答えた。
「ああ、ダンチューバーの南あさりを呼んでいるみたいだな」
「…………」
「? どうした? 何やら渋い顔をして」
「いや……なんかいろいろ大変になりそうだなと」
俺としてはもはや苦笑いしかできない。
しかし、事情を知らない寺島さんは、僅かに首を傾けて、
「なぜだ? キミ達は前コラボもしているし、相性はいいと思ったんだがな。共演NGな事情でもあったりするのか?」
「いえ、全くそんなことはないです。ただ……」
「ただ?」
「…………義理の妹、なもので」
一瞬言うか逡巡したが、寺島さんを信用して暴露した。
「…………ほうほうなるほど。生憎だが、青い妄想話に付き合う予定はないぞ?」
「創作話でも妄想でもないですよ」
「いやいや、流石にそんな現実あるわけが――」
「…………」
「…………え、マジ?」
「マジです」
ぽかんと、だった。
しばらくの間、呆けた表情で固まっていた寺島支部長は、ふぅ~と一つ深呼吸をして。
バッと近くにあった受話器を手に取ると、
「もしもし広報部! 大ニュースだ! ウチの矢羽翔と南あさりが義兄だ――」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺は慌てて寺島支部長から受話器を取り上げた。
危ねぇ。油断も隙もあったものじゃない。
「なにするんですか! 流石にこの情報はトップシークレットですよ! 特S級危険物です!」
たぶん暴露した瞬間、トイッターのトレンドとネットニュースを埋め尽くして、電子の海が蹂躙し尽くされる。
流石に、俺と亜利沙には、笑えないくらい影響力があることを、これまでのことで痛いほど身に染みているのだ。
「わかっているさ。ただのギャグじゃないか。受話器を上げただけじゃ、どこにも繋がらないぞ?」
「はぁっ、はぁっ! ギャグでもやめてください、心臓が飛び出るかと思ったじゃないですか」
肩で息をしながら抗議する。
「ははははっ! これでも管理職だからね、良識くらい弁えているのだよ」
「…………」
「おい、なぜそんな冷めた目をしている?」
「寺島さんの気のせいだと思いますよ」
まあ、ロビーのカウンターで彼氏持ちの後輩相手に愚痴りまくっていた人に「良識はある方だ」とか言われても、全く説得力がないのだが。
「……ふん、まあいいだろう」
寺島さんは鼻をならしつつ、組んでいた足を床に下ろし、俺を真っ直ぐに見つめて言った。
「とりあえず、『ダンジョン・ウォーターパーク』へ行くというのは決定でいいのだな?」
「はい」
「了解した。先方にはそう伝えておくとしよう。ああ、それと――」
寺島さんはニヤリと笑いつつこう付け足した。
「ここのところ事件続きで疲れているだろうからな。羽を伸ばす意味でも、友人を連れて行っても構わんぞ? 予め人数を指定してくれれば、こちらで人数分のチケットを手配しよう」
「いいんですか?」
「ああ。(奢ったりプレゼントを贈ったりする相手もいないから)、金だけは有り余っているからな。こういうときは(独身の)私を頼ってくれて構わない」
ありがとう支部長。
でもね、心の声がガッツリ聞こえてきてすごく頼り辛いの、なんとかなりませんかね?
その名前は、俺も聞いたことがある。
とある資産家が、5階層しかない小さなダンジョンをダンジョン運営委員会から買い上げ、独自に改良したレジャー施設だ。
いくつものプールや温泉の脇に巨大な水槽があり、ダンジョン内の水の中に住んでいるモンスターが泳いでいるという、少し変わった施設でもある。
その代表取締役がご指名となると――
「相手は資産家の富田潤沢さんですか?」
「そういうことになるな」
富田潤沢。
昨年の大富豪ランキングで、県内3位に輝いたお金持ちだ。
買い取ったダンジョンを大人気レジャー施設にしてしまう辺り、お金と人を引きよせる嗅覚は優れていると言って差し支えないだろう。
「俺としては、異論はないですよ?」
「そうか、それならば助かる。……話はこんなものだな。何か質問はないか?」
「そういえば、指名を受けたのって俺だけなんですか?」
何気なくした質問に対し、やはり何気ない調子で寺島さんは答えた。
「ああ、ダンチューバーの南あさりを呼んでいるみたいだな」
「…………」
「? どうした? 何やら渋い顔をして」
「いや……なんかいろいろ大変になりそうだなと」
俺としてはもはや苦笑いしかできない。
しかし、事情を知らない寺島さんは、僅かに首を傾けて、
「なぜだ? キミ達は前コラボもしているし、相性はいいと思ったんだがな。共演NGな事情でもあったりするのか?」
「いえ、全くそんなことはないです。ただ……」
「ただ?」
「…………義理の妹、なもので」
一瞬言うか逡巡したが、寺島さんを信用して暴露した。
「…………ほうほうなるほど。生憎だが、青い妄想話に付き合う予定はないぞ?」
「創作話でも妄想でもないですよ」
「いやいや、流石にそんな現実あるわけが――」
「…………」
「…………え、マジ?」
「マジです」
ぽかんと、だった。
しばらくの間、呆けた表情で固まっていた寺島支部長は、ふぅ~と一つ深呼吸をして。
バッと近くにあった受話器を手に取ると、
「もしもし広報部! 大ニュースだ! ウチの矢羽翔と南あさりが義兄だ――」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺は慌てて寺島支部長から受話器を取り上げた。
危ねぇ。油断も隙もあったものじゃない。
「なにするんですか! 流石にこの情報はトップシークレットですよ! 特S級危険物です!」
たぶん暴露した瞬間、トイッターのトレンドとネットニュースを埋め尽くして、電子の海が蹂躙し尽くされる。
流石に、俺と亜利沙には、笑えないくらい影響力があることを、これまでのことで痛いほど身に染みているのだ。
「わかっているさ。ただのギャグじゃないか。受話器を上げただけじゃ、どこにも繋がらないぞ?」
「はぁっ、はぁっ! ギャグでもやめてください、心臓が飛び出るかと思ったじゃないですか」
肩で息をしながら抗議する。
「ははははっ! これでも管理職だからね、良識くらい弁えているのだよ」
「…………」
「おい、なぜそんな冷めた目をしている?」
「寺島さんの気のせいだと思いますよ」
まあ、ロビーのカウンターで彼氏持ちの後輩相手に愚痴りまくっていた人に「良識はある方だ」とか言われても、全く説得力がないのだが。
「……ふん、まあいいだろう」
寺島さんは鼻をならしつつ、組んでいた足を床に下ろし、俺を真っ直ぐに見つめて言った。
「とりあえず、『ダンジョン・ウォーターパーク』へ行くというのは決定でいいのだな?」
「はい」
「了解した。先方にはそう伝えておくとしよう。ああ、それと――」
寺島さんはニヤリと笑いつつこう付け足した。
「ここのところ事件続きで疲れているだろうからな。羽を伸ばす意味でも、友人を連れて行っても構わんぞ? 予め人数を指定してくれれば、こちらで人数分のチケットを手配しよう」
「いいんですか?」
「ああ。(奢ったりプレゼントを贈ったりする相手もいないから)、金だけは有り余っているからな。こういうときは(独身の)私を頼ってくれて構わない」
ありがとう支部長。
でもね、心の声がガッツリ聞こえてきてすごく頼り辛いの、なんとかなりませんかね?
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