【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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番外編 中二少女と白忍者

第111話 不穏な空気感

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《三人称視点》

 その後、彩花達は白川直人と名乗った少年も交えて5人で行動することになった。
 ――のはいいのだが。

「え~! お兄さんAランクなんですか!?」
「すごーい!」
「イケメンな上に強いとか反則じゃん!」
「いや、そんなことはないですよ。僕なんてまだまだで」
「「「きゃー! ストイック!」」」

 ――空気だった。
 何がって? さっきまで「「「師匠!」」」とはやし立ててきた3人組が、丸ごと全部あの白川直人とかいうヤツに寝返ったからだ。

(ぐぬぬ! 妾より強いのはわかる。わかるのじゃが……! それにしたって妾を無視するとは何事じゃ!)

 他校の憧れのイケメン先輩に集まるファンの女子達みたいな構図でお団子になっている4人の後ろをついていく彩花は、悔しさも露わに歯噛みする。

 先程から何度かモンスターと邂逅しているが、悉く直人が倒してしまっているのだ。
 お陰で3人娘の黄色い歓声はいつしか直人が独占し、彩花は完全に蚊帳の外となってしまっていた。

(ふんっ! あんな怪しいだけの男のどこがいいんじゃ! しかもあやつ、味を占めて鼻の下を伸ばしおって! まったくもって気色悪い!)

 彩花にとって、突如現れてヒーロームーブをかましていった直人は、糸目の不審者という認識以外の何物でもない。
 何より、糸目キャラは裏切り者だと相場が決まっている(偏見)。

 あんな胡散臭いやつのどこに惹かれるのか、彩花にはまるで理解できなかった。
 そんなこんなでダンジョン内を進むこと20分――とあるエリアに着いた。
 
「これって!」
「虹水晶だよね! こんなたくさん生えてるの、初めて見た!」
「すご~! めっちゃ映えるじゃん」

 洞窟の奥に、七色の水晶が輝く空間を見つけた。
 暗い洞窟の中にまるで水面が揺れるかのごとく、七色の優しい輝きが満ちていて、幻想的な光景を造り出している。

 虹水晶は、かなり珍しい鉱石だ。ただし、ポイントはそこまで高くない。
 理由は、あまりにも色が綺麗であるために乱獲者が続出し、ダンジョン内の癒やしスポットとなるべき虹水晶のある場所が消失しそうになったからだ。

 ダンジョン運営委員会は、虹鉱石をダンジョン内の絶景スポットとしての運営方針を固めるべく、獲得ポイントを大幅に下げた。更に、「乱獲しないように」との注意書きもした結果、乱獲者が減って絶景スポットが守られるようになったのだが――

「ねぇねぇ、これいっぱいとって袋いっぱいにして帰らない?」
「さんせーい!」
「いいねー! それ!」

 ――子音達3人娘は、あろうことか手持ちの袋に、片っ端から虹鉱石を入れ始めたのだ。

「なっ!」

 これには彩花も思わず絶句してしまった。

(な、なんじゃと!? 此奴ら注意書きのことを知らんのか!? いや、ソレより――)

 彩花は、すぐ近くにいる直人の方を睨んだ。

(どうして此奴は何も言わんのじゃ! 乱獲が禁止だと言うことくらい、此奴ほどの人間なら知っておるだろうに!)

 事実、直人は直人で苦虫をかみ潰したような顔で3人娘を眺めている。
 が、どういうわけか注意する素振りを見せない。
 彩花は、3人娘に伝えるべきか一瞬迷い――

(いや、友人だろうが、やってはいけないことはしっかり伝えるのが優しさというものじゃ!)

 そもそも、彼女が憧れたセブンス・サインは、七つの大罪を造り出した親友が人々に忌み嫌われることに激怒し、しかし七つの大罪が人々を苦しめる事実に心を痛めていた。
ならば、この場にいない者達が虹水晶の群生地で心を満たせるよう、苦心するのが彩花の成すべき事だ。

「おい貴様ら。虹水晶は乱獲禁止じゃ、そのくらいにしておくがよい」
「え~、いいじゃん彩花ちゃん」
「私達がこの場所で狩り尽くしたって、時間が経てばまたどこかに虹水晶の群生地が出てくるって」
「そうだよ、ケチだな~」

 3人は唇を尖らせて抗議する。

「しかし、ルールで禁止されておろう。他の人達のために残しておくべきだとは思わんのか?」

 彩花がそう言うと、3人娘は僅かに顔を曇らせ、やがて小さくため息をついた。

「わかったよ、言う通りにするって」
「もう、硬いな~彩花ちゃんは!」
「ほんとだよ~、あっはははは」

 3人は、口々にそんなことを言う。

「うむ、わかればいいのじゃ」

 彩花もまた満足げに頷いて、その場はなんとなくまとまった。

 しかし――その数十分後。
 休憩がてら立ち寄った、ダンジョン内の休憩所で事件が起きる。
 
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