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第四章 大人気ダンチューバー、南あさり編
第87話 南あさりの知名度
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「み、南あさりって……それマジの話か?」
「嘘でしょ、そんな有名人……」
英次と潮江さんが、絞り出すように問いかけてくる。
真美さんに至っては、食事をするのも忘れていた。
「あれ。やっぱりみんな知ってるんだ」
「知ってるも何も、逆に知らない方が珍しいんじゃないかな。特に、ダンジョン冒険者比率が多い私達みたいな若者の間だと」
乃花が、細い顎先に自身の指を当てながら答える。
いや、まあ有名人であることはなんとなくわかっていた。
ダンジョン運営委員会の支部長である寺島さんが名前を出していたし、昨日の食事会で直人と七禍が驚いていたから。
しかし、ほぼ全員がその存在を知っているとは……
「まあ、去年の“今一番HOTなダンチューバーランキング”で1位になっているし、チャンネル登録者も確か300万人を越えていたような……」
「さ、300万!?」
真美さんによる更なる追撃に、俺は思わず手に持ったスプーンを取り落としそうになる。
なるほど、それならダンジョンのあるこの学校で、南あさりの名を知らない者がいないというのも納得だ。
「とにかくお前。凄すぎるって! あの南あさりからコラボに誘われるなんて!!」
英次は興奮したように身を乗り出してくる。
う~ん、そんなに凄いことなんだろうか? だって、昨日のお食事会で聞いた話だが、梅雨さん、熊猫さんとコラボ配信していたという話ではないか。
そんな風に思っている俺の心を読んだのか、真美さんが話を付け加える。
「そうだね。南あさりはコラボ回数そのものが少ないし、大抵相手からのオファーを受ける形だって聞いたことがあるよ。だから、自分からコラボの打診をするのなんて珍しすぎるって」
なるほど、そうなのか。
しかしなぜだろう、さっきから少し乃花の視線が怖い。「ふーん、コラボに誘われるなんて、随分気に入られてるじゃん。ふ~ん」と、ジト目で俺を見ながらぶつぶつ言っている。
それに対し、真美さんが「仕方ないって。Sランクパーティーをまとめてブッ飛ばすようなことしちゃえば、誰でも注目するから」と慰めて? いる。
しかし――あさりさんが、暫定で俺にだけコラボの話を持ちかけてきたとなると……これは、本当に喜ばしい話なのかわからなくなってきたぞ。
だって、あさりさんは……
「? どうした翔。超有名人とイチャイチャできるってのに、やけに冴えないじゃねぇか」
俺の顔色の変化を感じとったのか、英次が声をかけてくる。
と、そんな英次が急に「うぎゃあ!」とn回目の悲鳴を上げた。
「い、いでぇ! なんで靴を踏むんだ潮江!?」
「少しは乃花の気持ちを察しろバカ」
「あぁ? 何の話だ」
「死ね」
そんな夫婦漫才を繰り広げている二人に代わって、真美さんが質問をしてきた。
「そいつの言う通り、なんか浮かない顔してるけど、何かあったの?」
「いや……まあ。少し気がかりが」
「気がかり?」
「ああ」
言うべきか迷ったが、ここに集っているのは信頼できる友人達だ。
俺は、意を決して、俺自身の懸念を打ち明けることにした。
「実は――南あさりさんって、確証はないけど俺の妹だと思うんだ」
「「「「…………」」」」
――あれ?
なんかみんな固まっちゃったぞ。
と、不意に潮江さんと漫才をしていた英次が、真剣な顔で俺に向き直り――ぺとっと、手を額に触れてきた。
「……いや、熱はないよ?」
「じゃあ、病気か(頭の)?」
おいなんか最後の独り言聞こえてるし余計だぞ。
「いや……だってよぉ。それはあまりに荒唐無稽っつーか……ちょっとお前の願望が300%くらい含まれてねぇか?」
「含まれてないよ!」
まったく。
俺はそこまでシスコンではない。
と、乃花ができるだけ平静を保つように口調を整えながら言った。
「南あさりさんと亜利沙ちゃんが同一人物って……確かに名前は似てるけど、流石に違うんじゃない? 何か根拠でもあるの?」
そう。根拠だ。
正直、俺もそこまで多くはない。
何せ、食事会を終えて一緒に帰ったあと、公園でアイスを一緒に食べてるときでさえ、その正体を勘ぐることすらなかったのである。
アイスの好みも違う。
亜利沙はダンジョン冒険者登録を行っていない。
それに、本人がそれを否定している。
けれど――兄として亜利沙に接してきた俺だからこそ、違和感を持ったことはいくつかあった。
「ああ、今から話すよ」
俺は、昨日の短い時間の中で感じた違和感を、包み隠さず話すことにした。
「嘘でしょ、そんな有名人……」
英次と潮江さんが、絞り出すように問いかけてくる。
真美さんに至っては、食事をするのも忘れていた。
「あれ。やっぱりみんな知ってるんだ」
「知ってるも何も、逆に知らない方が珍しいんじゃないかな。特に、ダンジョン冒険者比率が多い私達みたいな若者の間だと」
乃花が、細い顎先に自身の指を当てながら答える。
いや、まあ有名人であることはなんとなくわかっていた。
ダンジョン運営委員会の支部長である寺島さんが名前を出していたし、昨日の食事会で直人と七禍が驚いていたから。
しかし、ほぼ全員がその存在を知っているとは……
「まあ、去年の“今一番HOTなダンチューバーランキング”で1位になっているし、チャンネル登録者も確か300万人を越えていたような……」
「さ、300万!?」
真美さんによる更なる追撃に、俺は思わず手に持ったスプーンを取り落としそうになる。
なるほど、それならダンジョンのあるこの学校で、南あさりの名を知らない者がいないというのも納得だ。
「とにかくお前。凄すぎるって! あの南あさりからコラボに誘われるなんて!!」
英次は興奮したように身を乗り出してくる。
う~ん、そんなに凄いことなんだろうか? だって、昨日のお食事会で聞いた話だが、梅雨さん、熊猫さんとコラボ配信していたという話ではないか。
そんな風に思っている俺の心を読んだのか、真美さんが話を付け加える。
「そうだね。南あさりはコラボ回数そのものが少ないし、大抵相手からのオファーを受ける形だって聞いたことがあるよ。だから、自分からコラボの打診をするのなんて珍しすぎるって」
なるほど、そうなのか。
しかしなぜだろう、さっきから少し乃花の視線が怖い。「ふーん、コラボに誘われるなんて、随分気に入られてるじゃん。ふ~ん」と、ジト目で俺を見ながらぶつぶつ言っている。
それに対し、真美さんが「仕方ないって。Sランクパーティーをまとめてブッ飛ばすようなことしちゃえば、誰でも注目するから」と慰めて? いる。
しかし――あさりさんが、暫定で俺にだけコラボの話を持ちかけてきたとなると……これは、本当に喜ばしい話なのかわからなくなってきたぞ。
だって、あさりさんは……
「? どうした翔。超有名人とイチャイチャできるってのに、やけに冴えないじゃねぇか」
俺の顔色の変化を感じとったのか、英次が声をかけてくる。
と、そんな英次が急に「うぎゃあ!」とn回目の悲鳴を上げた。
「い、いでぇ! なんで靴を踏むんだ潮江!?」
「少しは乃花の気持ちを察しろバカ」
「あぁ? 何の話だ」
「死ね」
そんな夫婦漫才を繰り広げている二人に代わって、真美さんが質問をしてきた。
「そいつの言う通り、なんか浮かない顔してるけど、何かあったの?」
「いや……まあ。少し気がかりが」
「気がかり?」
「ああ」
言うべきか迷ったが、ここに集っているのは信頼できる友人達だ。
俺は、意を決して、俺自身の懸念を打ち明けることにした。
「実は――南あさりさんって、確証はないけど俺の妹だと思うんだ」
「「「「…………」」」」
――あれ?
なんかみんな固まっちゃったぞ。
と、不意に潮江さんと漫才をしていた英次が、真剣な顔で俺に向き直り――ぺとっと、手を額に触れてきた。
「……いや、熱はないよ?」
「じゃあ、病気か(頭の)?」
おいなんか最後の独り言聞こえてるし余計だぞ。
「いや……だってよぉ。それはあまりに荒唐無稽っつーか……ちょっとお前の願望が300%くらい含まれてねぇか?」
「含まれてないよ!」
まったく。
俺はそこまでシスコンではない。
と、乃花ができるだけ平静を保つように口調を整えながら言った。
「南あさりさんと亜利沙ちゃんが同一人物って……確かに名前は似てるけど、流石に違うんじゃない? 何か根拠でもあるの?」
そう。根拠だ。
正直、俺もそこまで多くはない。
何せ、食事会を終えて一緒に帰ったあと、公園でアイスを一緒に食べてるときでさえ、その正体を勘ぐることすらなかったのである。
アイスの好みも違う。
亜利沙はダンジョン冒険者登録を行っていない。
それに、本人がそれを否定している。
けれど――兄として亜利沙に接してきた俺だからこそ、違和感を持ったことはいくつかあった。
「ああ、今から話すよ」
俺は、昨日の短い時間の中で感じた違和感を、包み隠さず話すことにした。
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