【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

文字の大きさ
上 下
85 / 135
第四章 大人気ダンチューバー、南あさり編

第85話 翌日、学校で

しおりを挟む
《息吹翔視点》

 ――翌日の月曜日。
 俺は、いろいろと煮え切らないままに、いつも通り学校へ行った。

 けれど、どうしても授業に集中する気にはなれなかった。
 御経のような教師の言葉もどこか上の空。
 気付けばいつの間にか四時間目の授業まで終わっており、周りのクラスメイト達はガタガタと机を動かしてグループを組んでいた。

 その手にはお弁当の包みやコンビニのレジ袋が下げられているのを見る限り、今からお昼の時間みたいだ。
 
 そうか、もうお昼時なのか。
 授業中先生に指名されなくてよかったな。もし指名されてたら、「すいません、聞いてませんでした」ってなって赤っ恥を掻くところだったぞ。

「ねぇ、翔」

 そのとき、横合いから声をかけられて俺は声のした方を振り向く。
 するとそこには、潮江かやが立っていた。

「ああ、潮江さんか。衣装ありがとう。凄く良かった」
「どういたしまして。それより、あんた今日どうしたの?」

 潮江さんは、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
 
「俺、今日そんな顔色悪い?」
「ううん、そうじゃないけど……あんた、出席番号2番でしょ?」
「あ、ああ……そうだけど」

 それがどうかした?
 そう聞く前に、潮江さんは小さくため息をついてから、呆れたように述べた。

「数学の時間、和田が出席番号2番を呼んでたわよ。誰も名乗り出ないから出席番号1番にとばっちりしたけど」
「……マジ?」
「まじ」

 そうか。
 俺、呼ばれていたのか。
 それに気付かないとなると、確かに重傷だ。

 あとで尻ぬぐいをしてくれた、クラス一巨乳の秋田さん(※出席番号1番)に謝っておかなければ。
 それはそうと――

「今から行くんだよね?」
「ええ、予定通り……だってのに」

 潮江さんは、不意に不機嫌そうに眉根をよせて、俺の前の席を睨む。
 そこでは、昼休みに入ったというのに、辺りの喧噪にも気付かず、開いた数学の教科書を立てたまま机に突っ伏して寝ている英次の姿が。
 何やら気持ちよさそうに「ぐがー」といびきを掻いて寝ている。

「おいこら起きろバカ!」
「ぐ、がっ! ……むにゃ、朝か?」
「もう昼よ!」

 開口一番時差ボケした台詞を吐く英次の脇腹に、潮江さんは肘を突き込んだ。

「うがっ……ててて、強力な目覚ましだな」

 自身の脇腹をさすりながら、英次は潮江さんの方を見る。

「目が覚めた?」
「ああ、お陰様でばっちり」
「隙あらば、これからも容赦なくド突くから、覚悟しといて」

 そんな風に腕を組みながら、英次を睨む潮江さん。

「ああ、できれば毎日頼みたいくらいだ。お前が起こしてくれるなら、俺も安心して寝坊できる」
「……へ?」

 不意に笑顔で英次が言った台詞に、潮江さんが目を丸くする。
 が、みるみるうちに耳まで赤くなっていった。

「な、な……なぁっ!? あ、あんた、い、いい、一体何言って!?」
 
 酸素を求める金魚のように、口をパクパクさせる潮江さん。
 英次は、寝ぼけていてよくわかっていないのか、首を横に傾ける。

「どうしたんだ? 今の言葉にそんな動揺する場所あったか?」
「あ、当たり前でしょ! ま、毎日起こすのを頼みたいって! それって、つ、つまり、あ、あたしに毎朝起こして貰いたい……ってことじゃない」

 最後の方は自分で行っててはずかしくなったらしい。
 潮江さんの声が先細り的に小さくなっていった。

「いやそれは無理だろ。毎朝って……お前、俺んちに毎朝上がりこんで目覚まし役をする気かよ」
「え? だ、だって。そういう意味じゃないの!? だ、だってお前が起こしてくれたら、安心して寝坊できるって言ってたじゃない!」
「ああ。寝坊ってのは朝寝坊じゃなくて、こういう授業中寝落ちしたときに、寝坊して休み時間寝過ごす可能性があるから。起こして欲しいなって」
「……」
「あれ、潮江?」

 俯いて方を振るわせる潮江さんに対し、英次は首を傾げて――次の瞬間、潮江さんの怒りが爆発した。

「あ、あんたなんか寝過ごして、移動教室で誰もいない教室で目覚めればいいんだ!!」

 そう言って、潮江さんは逃げ出すように走り去ってしまった。

「うぇ~なんだ。なんで怒ってんだ……わかるか翔?」

 頭をポリポリと掻きながら俺に話を振ってくる英次に、「俺がわかるわけないだろ」と返す。
 そう、女心というのは難しいのである。

「さてと、とりあえず行くか、食堂に」

 英次はう~んと伸びをしつつ、立ち上がる。
 潮江さんを追わないのかと思うかもしれないが、実際彼女が向かった先には心当たりがある。というか、当初の目的をほっぽり出してしまうなんてことはないだろう。

 今日は、俺のプロ冒険者としての初仕事祝い。
 そして――涼城真美さんの快気祝いを兼ねて、食堂にみんなで集まってミニパーティーみたいなことをするのだ。

 俺も立ち上がって、英次と共に食堂へ向かった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...