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第四章 大人気ダンチューバー、南あさり編
第77話 お食事会
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《翔視点》
――話は現在に戻る。
俺達は予め予約していた席に座って鍋を囲んでいた。
ちなみに、暖簾で分けられた掘りごたつのある個室で、ダンチューバーご一行と、俺達プロ冒険者が三対三で向かい合って座っている感じだ。
ちなみに、俺の右に直人、左に七禍が座っていて。俺の向かいに熊猫さんが。向かって右隣があさりさんで、左隣が梅雨さんという形になっている。
「お待たせしました~。豚バラ二つと、肩ロース二つ、牛が四つ。それから、こちら野菜四種盛りになっています」
閾の付いた鍋の中で、二種類の出汁がグツグツと煮立った頃、店員さんがお肉の入った皿を重箱みたいに重ねて持ってきた。
「おー! きたっす! やっぱ仕事終わりは肉っすね!!」
レインコート少女、梅雨さんが、目をキラキラ輝かせる。
白菜、しめじ、水菜、長ネギと一緒に肉を煮立った出汁の中にみんなで入れる。
はやく出来上がらないかな、もうお腹ぺこぺこだ。
出汁の中で色づいていくお肉達を眺めていた俺は、ふと今の状況を見てあることに思い至る。
――なんか、合コンみたいだな。
いやまあ、男子2人、女子4人だから合コンと言うのは無理があるかもしれないが、もしこちらが男子3人だったら、どう見ても合コンになっていた気がする。
あれ、てかちょっと待てよ。
「なあ、直人」
「どうしました?」
肉の火の通りを確認していた直人が、俺の方を向く。
「これ、ひょっとして俺が来なかったら、男子1対女子4人の超気まずい空間になってなかった?」
「あー……実際にその男女比になった自信はないですが、まあ、女子の中に男1人という気まずい状況にはなっていたと思います」
少し意味深なことを言いながら、苦笑する直人。
やっぱそうだよな。俺が来なければ、この人はハーレム天国だったわけで……。なんか、悪いコトしたかな?
「うん、牛肉はもういいでしょう」
俺の考えをよそに、直人はそんなことを言う。
とたん、そこかしこからはしが伸びて、お肉の争奪戦が始まった。
男女関係なく、食べ盛りの中高生(1人大学生がいるが)の食欲は侮れない。
俺も置いていかれないように、慌てて牛肉を皿にとる。続けて、もう一枚とろうとするが……うん、今のが最後の牛肉だったか。
ま、まあ。まだ牛肉は残っているし、足りなければ追加注文すればいいだけだ。
鍋の中には加熱中の豚肉もある。
――ちなみに、牛肉は生焼けでも大丈夫とよく言われているが、それは牛の飼育環境と体質によるもので、肉の部分に寄生虫や細菌が殆どいないからである(加工過程で雑菌が付着する場合もあるので、生で食べるのは御法度だが)。
鶏肉と豚肉は、肉の部分に寄生虫や細菌がいるため、火をしっかり通さないと安全に食べることは出来ない。
日本には、馬刺しという馬の刺身があるが、あれは馬の体温が高く、寄生虫が生息できないから、牛や豚に比べて安全ということらしいが……正直俺は、生で食べたいとは思わないな、うん。
と、今はそんなことより目の前の牛肉だ。
早く食べないと冷めてしまう。俺は、牛肉を口に運ぼうとして。
――どうしても無視できずに、ちらりと横を見てしまった。
「ぐす……妾、野菜だけ……うぅ」
野菜四種を盛った皿を手に取り、涙目でチビチビ食べる七禍。その横で、牛肉を食べようとする俺。
――ああ、罪悪感と背徳感がすごい。
いくらこの残念中二病中学生でも、一応見かけはまだまだ中学2年生の小柄な女の子だ。
そんな風に落ち込まれると、庇護欲をそそられてしまう。
俺は、直人にバレないよう、彼女の皿に牛肉を落とした。
「っ!」
驚いて俺の方を見る七禍。
俺は人差し指を口の前に立て、「内緒だぞ?」のジェスチャーをする。
今まで死に体だった少女の瞳に、パッと光が灯る。が、すぐにぷいっとそっぽを向き、
「ふ、ふん! まあ、愚鈍な従者にしてはよくやったな。た、たかが牛肉。それもたった一枚とはいえ、褒めて使わそう」
――ウザいな。素直にアリガトウは言えんのか、こいつは。
「いらないなら返してもらうけど?」
「い、いや! 嘘じゃ! 欲しい! だから妾からもう何も奪わないでくれぇええええ!」
涙目で後ずさりする七禍。
「あー、翔さん、そんな小さい子をいたぶっちゃダメっすよ!」
「あらあら~、それはいけませんね~」
もぐもぐとお肉を食べながら、梅雨さんと熊猫さんが口々に俺を責め立てる。
「え!? 俺が悪者!?」
なんて理不尽な。
ていうか、あんたら牛を食べ終えて、もう豚に手を付けてるよな?
こちとら、まだ一枚も肉を食べていないのに。
俺は、貧乏くじを引かされてガクリと肩を落とす。
そんな俺の横で、七禍が牛肉を頬張り、顔をとろけさせている。
――まあ、これでもいいか。
七禍が幸せなら、それで俺は満足だ。
そんな後方彼氏面をする俺。
そんなこんなで、食事会は続く――
――話は現在に戻る。
俺達は予め予約していた席に座って鍋を囲んでいた。
ちなみに、暖簾で分けられた掘りごたつのある個室で、ダンチューバーご一行と、俺達プロ冒険者が三対三で向かい合って座っている感じだ。
ちなみに、俺の右に直人、左に七禍が座っていて。俺の向かいに熊猫さんが。向かって右隣があさりさんで、左隣が梅雨さんという形になっている。
「お待たせしました~。豚バラ二つと、肩ロース二つ、牛が四つ。それから、こちら野菜四種盛りになっています」
閾の付いた鍋の中で、二種類の出汁がグツグツと煮立った頃、店員さんがお肉の入った皿を重箱みたいに重ねて持ってきた。
「おー! きたっす! やっぱ仕事終わりは肉っすね!!」
レインコート少女、梅雨さんが、目をキラキラ輝かせる。
白菜、しめじ、水菜、長ネギと一緒に肉を煮立った出汁の中にみんなで入れる。
はやく出来上がらないかな、もうお腹ぺこぺこだ。
出汁の中で色づいていくお肉達を眺めていた俺は、ふと今の状況を見てあることに思い至る。
――なんか、合コンみたいだな。
いやまあ、男子2人、女子4人だから合コンと言うのは無理があるかもしれないが、もしこちらが男子3人だったら、どう見ても合コンになっていた気がする。
あれ、てかちょっと待てよ。
「なあ、直人」
「どうしました?」
肉の火の通りを確認していた直人が、俺の方を向く。
「これ、ひょっとして俺が来なかったら、男子1対女子4人の超気まずい空間になってなかった?」
「あー……実際にその男女比になった自信はないですが、まあ、女子の中に男1人という気まずい状況にはなっていたと思います」
少し意味深なことを言いながら、苦笑する直人。
やっぱそうだよな。俺が来なければ、この人はハーレム天国だったわけで……。なんか、悪いコトしたかな?
「うん、牛肉はもういいでしょう」
俺の考えをよそに、直人はそんなことを言う。
とたん、そこかしこからはしが伸びて、お肉の争奪戦が始まった。
男女関係なく、食べ盛りの中高生(1人大学生がいるが)の食欲は侮れない。
俺も置いていかれないように、慌てて牛肉を皿にとる。続けて、もう一枚とろうとするが……うん、今のが最後の牛肉だったか。
ま、まあ。まだ牛肉は残っているし、足りなければ追加注文すればいいだけだ。
鍋の中には加熱中の豚肉もある。
――ちなみに、牛肉は生焼けでも大丈夫とよく言われているが、それは牛の飼育環境と体質によるもので、肉の部分に寄生虫や細菌が殆どいないからである(加工過程で雑菌が付着する場合もあるので、生で食べるのは御法度だが)。
鶏肉と豚肉は、肉の部分に寄生虫や細菌がいるため、火をしっかり通さないと安全に食べることは出来ない。
日本には、馬刺しという馬の刺身があるが、あれは馬の体温が高く、寄生虫が生息できないから、牛や豚に比べて安全ということらしいが……正直俺は、生で食べたいとは思わないな、うん。
と、今はそんなことより目の前の牛肉だ。
早く食べないと冷めてしまう。俺は、牛肉を口に運ぼうとして。
――どうしても無視できずに、ちらりと横を見てしまった。
「ぐす……妾、野菜だけ……うぅ」
野菜四種を盛った皿を手に取り、涙目でチビチビ食べる七禍。その横で、牛肉を食べようとする俺。
――ああ、罪悪感と背徳感がすごい。
いくらこの残念中二病中学生でも、一応見かけはまだまだ中学2年生の小柄な女の子だ。
そんな風に落ち込まれると、庇護欲をそそられてしまう。
俺は、直人にバレないよう、彼女の皿に牛肉を落とした。
「っ!」
驚いて俺の方を見る七禍。
俺は人差し指を口の前に立て、「内緒だぞ?」のジェスチャーをする。
今まで死に体だった少女の瞳に、パッと光が灯る。が、すぐにぷいっとそっぽを向き、
「ふ、ふん! まあ、愚鈍な従者にしてはよくやったな。た、たかが牛肉。それもたった一枚とはいえ、褒めて使わそう」
――ウザいな。素直にアリガトウは言えんのか、こいつは。
「いらないなら返してもらうけど?」
「い、いや! 嘘じゃ! 欲しい! だから妾からもう何も奪わないでくれぇええええ!」
涙目で後ずさりする七禍。
「あー、翔さん、そんな小さい子をいたぶっちゃダメっすよ!」
「あらあら~、それはいけませんね~」
もぐもぐとお肉を食べながら、梅雨さんと熊猫さんが口々に俺を責め立てる。
「え!? 俺が悪者!?」
なんて理不尽な。
ていうか、あんたら牛を食べ終えて、もう豚に手を付けてるよな?
こちとら、まだ一枚も肉を食べていないのに。
俺は、貧乏くじを引かされてガクリと肩を落とす。
そんな俺の横で、七禍が牛肉を頬張り、顔をとろけさせている。
――まあ、これでもいいか。
七禍が幸せなら、それで俺は満足だ。
そんな後方彼氏面をする俺。
そんなこんなで、食事会は続く――
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