【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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第三章 《ハンティング祭》の騒乱編

第43話 因縁の邂逅

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「――ちょっと、やりすぎたか?」

 君塚からの刺客を撃退した俺は、急に静けさの戻った洞窟内で、思わずそう呟いていた。

 まあ、仕方ないか。
 君塚の命令で俺を邪魔しにきたというのだから、返り討ちにしたとしてもなんら問題はないのだ。
 先に仕掛けてきた向こうの、自業自得である。
 それにしても――

「何か言おうとしてたけど、一体何を言おうとしてたんだ?」

 確か、「お前が、本物の――ッ!」とかなんとか言っていた気がする。
 もしかして、俺の正体に気付いた可能性が――?

 まあ、もしそうだとしても、やってしまったものは仕方が無い。
 それに1人くらいなら、まだ「それ気のせいダヨ」でゴリ押せる、うん。
 もしかしたら、さっきのスーパー☆ブラックジャックの一撃で、記憶の一部が一緒に消し飛んでいる可能性もある。(もっとも、マジで記憶が消し飛んでいたら、笑えない事態なのだが)

 つまり、まだ俺が例の弓使いアーチャーとバレたわけではない。そう、あくまでもセーフなのである。
 などと、いくらなんでも苦しい言い訳をしつつ、俺は探索を再開するのだった。

――。
 
 黙々と採集活動を続けることしばらく。

「……来たか。確率としては半々くらいだと思ってたんだけどな」

 7階層の転移陣《ワープポータル》付近の広場。
 そこへ戻ってきた俺は、探知スキルに引っかかる影を感じて思わずそう呟いた。

 手下を使い潰すだけで、自分は高みの見物(笑)をする可能性も考えていた。
 だが――勝利報告をしに帰ってくるはずの子分が、いつまで経っても帰ってこないとわかれば、動かざるを得ないと判断したのだろう。
 こと、あの2人以外の取り巻きを無理矢理従わせているアイツは、自分の意志で動かせる有益な手駒を失ったに等しいのだから。

「アイツ等をどうした?」

 そんな声が聞こえて、俺は声のした方をゆっくりと振り返る。
 地下水が岩壁の隙間から流れ出す付近に、ヤツが立っていた。
 今回、愚かにも俺に喧嘩を売った、その男が。
 君塚賀谷斗。俺の大切な友人を侮辱した、暴虐の君主。

「さあ、どうしたと思う?」
「はっ。大方、猪口才に立ち回って、同士討ちでもさせたんじゃねぇか? それか、罠に嵌めたとかだろ? テメェのことだ。どーせつまらないチンケな技で、アイツ等を嵌めたに決まってらぁ」
「そうか」

 そこで「実力で倒した」という考えが浮かばないのが、コイツらしいと言ったところか。

「まあ、どうでもいい。聞いて驚けよ、俺のランクはA! さっきのヤツらは、!!」
「……」

 俺は、わずかに警戒する。
 ランクA。迷惑Sランクパーティーという意味で有名だった豪気と、個人ランクは並ぶ域にある。

 考えてみれば当然だ。これほど嗜虐的な思考を持ち、人をいたぶるのが好きなヤツだ。
 好きなだけ“目に見える力”を振るうことのできるダンジョンで、実力を伸ばしてきたとしても不思議ではない。

 そして、先程戦った手下はBランク。
 ランクB以降は、昇級が一気に困難となる。故に、ランクBとAでは、かなりの差が存在するのだ。

「はぁ……なんでかなぁ」

 俺は、思わずため息をついて頭を抱えた。
 なんで、こう……心が荒んだヤツに限って、強大な力を得るんだろうか。
 
 凶暴な精神が故に、法で守られた社会の中で、唯一自由の利く“ダンジョン冒険者”という物理的な破壊に繋がる力を得るのか。
 それとも、“ダンジョン冒険者”としての力に魅せられて、破壊衝動を抑えられない凶暴な人間になったのか。

 いや、それこそここで考えても仕方のないことであろう。
 鶏が先か卵が先かなど、そんなことは今どうだっていい。確かなのは、目の前の人間が確かな悪意の元で、力を振るっているという事実だけだ。

 と、俺が呆れて呻いていることにすら気付かない君塚が、調子に乗って叫んだ。

「ぎゃはははははっ! どうした? 今更怖じ気づいたのかよ! 言っておくが、お前は許さねぇ! テメェの心をへし折って、惨めったらしく地面を這いつくばらせて、ぎゃんぎゃん泣かせてやるぜ!」
「は? ?」
「ああ、そうさ! 身の程を知らないテメェみたいなヤツは、この俺様が現実を見せてやるよ!!」

 そう叫んだ君塚は、手にした杖を前方に掲げた。
 その身に纏う大仰な漆黒のローブが、ばさりと翻る。

 魔杖《まじょう》を持っているということは、役職《ジョブ》は魔術師《マジシャン》か。まあ、どんな役職だろうがそんなの関係ないけど。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! 使、今ここで、俺がテメェを葬り去ってやるよ!!」

 杖の先にある球体の正面に、炎の塊が生じる。
 十分な溜時間を使い、それはみるみる大きくなっていき――最終的には、若奥様がストレッチで使うバランスボールくらいの大きさになっていた。

 何か引っかかりのある言葉を言っていたが、今の俺は、そんな言葉にも、ましてや目の前の炎にすら興味が無かった。
ヤツの放った別の言葉に固執していたのだ。

……ねぇ」
「弾けて死ねや! “フレア・エクスプロージョン”!」

 刹那、炎の塊が俺めがけて肉薄する。
 
「――お前さ、何か勘違いしてるだろうが……」
「ひゃはははははははは! 言い訳なら、救護室のベッドの上で言いやがれ! あっはははははは――」

 高笑いと共に迫り来る炎の塊に向け、俺は無造作に火の「魔法矢」を放った。
 はたった一秒。たったそれだけで――

 パンッ! と音を立てて、炎の塊がシャボン玉みたいに弾けて消えた。
 オレンジ色の残滓だけが、花火大会の後の余韻のように侘《わび》しく光って消えていく。

「はっはははははは――、……は?」

 高笑いをしていた君塚は、目の前の光景に理解が追いつかなかったらしく、呆けたような声を漏らす。

「え、いや……は? 何、が起きて、……ふ、不発?」

 そんな風に困惑する君塚へ、俺は宣告を言い渡す。

「……許さないのは、俺の方だ」
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