【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

文字の大きさ
上 下
36 / 135
第二章 弓使いと学校のアイドル編

第36話 新たな騒乱の予感

しおりを挟む
 ――その日の夜。
 
「はぁ~……」

 食事の後、ソファでぐったりと寝転がっていた俺は、知らず知らずのうちにため息をついていた。
 それが、自分で思っていたよりも大きかったのだろう。

 お皿の片されたテーブルの上に座って、ぶらぶらと両足を振っていた亜利沙が、ケータイをイジりながら聞いてきた。

「どったの、頭ハーレム天国お兄ちゃん」
「……その不名誉な渾名、そろそろやめてくんない?」

 俺はジト目でツッコミを入れる。
 昨日から不機嫌が治らない妹は、ずっとこんな感じだ。
 しかも、毎度毎度不名誉な渾名が更新されていくから、恐ろしい。
 つい五分前は、確か「八方美人(笑)兄貴」だったか。

「やめてと言われても、まだ私はあんたを許していないのだよ、この脳みそショッキングピンク兄上」
「もうやめて。お兄ちゃんのガラスのハートはもう粉々よ」
「だったら溶かして固めて再構築しやがれ」
「ごめんなさい俺が全面的に悪かったからそれ以上刺々しい言葉を放つのはやめて、家族からの罵倒が一番堪える!」

 むくりと起き上がった俺はガクブル震えながら、ソファの柔らかい布地に頭を擦りつけて土下座する。
 それを流し見ていた亜利沙は少しの間無言だったが、一体そこにどんな意味が含まれるのか。

、ね……」
「?」

 どこか憂いを滲ませる表情でため息をついたあと、亜利沙は小さく息を吐いて俺を見た。
 さっきまでの憂いを吐き出したような、いつもの愛らしい表情で。

「いーよ、もう。許す。そんで、なんでお兄ちゃんはまたしなびたキュウリみたいになってたわけ?」
「それが、今日ダンジョン運営委員会から呼び出されまして……プロのダンジョン冒険者になってみないかって誘われたんだよね」
「うっそ、マジ? 凄いじゃん! え、なっちゃいなよ!!」

 亜利沙は興味津々といった様子で、身を乗り出してくる。
 
「うまくいけば、ダンチューバーに生で会えるかもよ?」
「あー、そういえばそんなこと言ってたな、支部長さんも」

 えーっと、誰だっけ。寺島支部長が出した名前は。確か――

「南あさり……とかなんとか言ってたな」
「っ!」
「……? 亜利沙? どした」

 俺は急に押し黙った亜利沙を見て、首を傾げる。

「いや、意外だなって思って。ダンチューバーとか興味ないって言ってたお兄ちゃんから、その名前が出るなんて」
「あー、俺も今日初めて知ったぞ? 支部長さんが「今人気のダンチューバーだ」って太鼓判を押してた。てか、むしろお前が知ってることに驚きを隠せないんだが。だってお前、
「冒険者じゃなくても、知ってるもんは知ってるんだよ。読書好きな人が、全員小説書いてるわけじゃないでしょ? それと一緒」

 まあ、言われて見ればそういうものか。
 しかし、ダンジョンとはまるでの妹も知っているということは、相当有名なんだろうか、その南あさりとやらは。

「まあ、お兄ちゃんがなんでそんな、プロの冒険者になることを渋ってるのかは、わからないけどさ。私は、お兄ちゃんがプロになるかならないかより、誘われたことそのものが嬉しいかな」
「? なんで」
「だってさ、それってお兄ちゃんのことをみんなが認めてくれたってことでしょ? お兄ちゃんを独り占めしたい私からすればちょっとだけ妬けちゃうけど、同じくらい誇らしく思う。最終的にどうするかはお兄ちゃんが悩んで決めればいいけど、私は見てみたいな。お兄ちゃんが、みんなの期待を背負って格好良く活躍するとこ」

 亜利沙は、にこやかに笑ってそう言った。
 いつもそうだ。彼女はいつも、俺の背中を押してくれる。本当に、心から素敵な妹をもったと思う。
 
「亜利沙……」
「ま、その方がハーレム帝王☆息吹翔様(爆笑)らしくてお似合いだし」
「この胸の暖かさを返せこのやろう」

 そんなこんなで、俺はプロのダンジョン冒険者になるか否か、悩み続ける。
 亜利沙の後押しもあり、なることに対して決して後ろ向きというわけではないのだが、やはり最後の一歩が踏み出せないでいた。
 素性を明かすことになれば、夢に前見た普通の学生生活は送れなくなる。
 クラスメイトとの距離感は大きく変わるだろうし、やっかみや嫉妬をぶつけてくる輩も出てくるかもしれない。
 そのリスクを負ってでも、プロになるべきなんだろうか?
 俺としては、その一歩がどうしても踏み出せないでいた。

 しかし――悩む俺は気付いていなかった。
 根本的な問題として、俺は一つミスを犯していたことを。
 そう。よくよく過去を遡れば、俺は乃花や真美さんを助ける気持ちが先行するあまり、バズりまくった弓使いアーチャーの姿で、学校内ダンジョンへ踏み込んだのではなかったか?

 だとしたら、俺の知らないところで何が起きているかも、予想して然るべきだったのである。
 俺の知らないところ。具体的には、学校のホームページ脇にある生徒用掲示板。そこは、休日だというのにまるで大人気ダンチューバーの生配信チャット欄のごとく、盛り上がっていた。

――。

『おい、知ってるか。三年の山田。例の撃強アーチャーに助けられたってよ!』
『は、嘘だろ!? どこで!?』
『昨日誤作動が起きた学校のダンジョンに決まってるだろ!』
『え!? なんでウチの学校にあの人がいんの?』
『な? 不思議だろ? 山田の話じゃ、ウチの学校の制服は着ていなかったらしいんだが。それでもウチのダンジョンに潜り込んでいたのは偶然とは思えねー』
『それってつまり……?』
『ひょっとしたら……?』
『あの弓使いアーチャー??』


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。

椿紅颯
ファンタジー
黒織秋兎(こくしきあきと)は異世界に召喚された人間だったが、危機を救い、英雄となって現実世界へと帰還を果たした。 ほどなくして実力試験を行い、様々な支援を受けられる代わりに『学園』と『特殊部隊』へ所属することを条件として提示され、それを受理することに。 しかし帰還後の世界は、秋兎が知っている場所とは異なっていた。 まさかのまさか、世界にダンジョンができてしまっていたのだ。 そして、オペレーターからの提案によりダンジョンで配信をすることになるのだが……その強さから、人類が未踏破の地を次々に開拓していってしまう! そんな強すぎる彼ら彼女らは身の丈に合った生活を送りながら、ダンジョンの中では今まで通りの異世界と同じダンジョン探索を行っていく!

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...