【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

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第二章 弓使いと学校のアイドル編

第30話 すれ違いの終わり

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 ……終わったか。
 しばらく虚空を凝視していた俺だったが、ゴーレムが復活してくる様子がないことを確認すると、手にした弓矢を肩にかけ直す。

 同時に、空中に漂っていた光の弓矢が、光の粒子になって霧散していく。
 脅威は去ったと思っていいだろう。
 俺は踵を返して、かのんの元へと近寄って行った。

「無事でよかった」
「う、うん……ありが、とう……っ! ぐすっ、うわぁああん」

 安心したからだろうか?
 その場でへたり込んだまま、かのんは泣き出してしまう。
 あんな怪物と戦っていたのだ。怖くないわけがない。
 だから俺は今一度、労うように優しく告げた。

「ほんと、よく耐えたよ。お陰で、こうしてまた話ができる」

 もし彼女を泣かせたまま、最悪の状況になっていたらと想像するだけで、ゾッとする。
 だから、そんなことにならなくて心からよかったと思う。
 泣きじゃくる幼馴染みの苦労を労いつつ、俺は彼女が落ち着くのを待った。

――。

「あの……その。私のこと、覚えててくれたの?」

 しばらくの後、落ち着いたかのんは(ただし目はウサギのように真っ赤だが)、そう聞いてきた。

「覚えてたよ、もちろん。ただ、記憶の中にある“かのん”と“高嶺乃花《たかみねのんか》を繋げる材料がなくて、最初は気付かなかった。だから……ごめん」

 俺は、正直にそう謝罪した。
 言い訳なんてできない。例え勘違いからすれ違い、泣かせるようなことを言ってしまっただけだとしても。
 彼女がかのんであると、すぐに気付けなかったのは事実なのだから。
 対してかのんは、申し訳なさそうに答えた。

「私の方こそ、ごめん。昔とはその……髪型とか違うし、お互い住んでいた場所も遠くだし、伝えていた名前まで違う。だから、本当なら覚えてろって言う方が無茶なのに、私ときたら自分勝手に覚えていることを期待して、勝手に傷付いて困らせた。だから、ほんとにごめん」

 かのんは、素直に頭を下げた。
 彼女に言われて気付いたが、確かに気付くための条件はハードだ。
 それでも。たとえハードでも、一週間も燻る前にやれることがあったのではないかと思う。何もできなかったのは、俺の失態だ。
 だからこそ――その分を取り返すために、ここでしっかり、彼女の真意を知っておく必要がある。

「一つ、聞いて良いかな」
「うん」
「なぜ名前を偽っていたのか、高嶺さんがかのんだと気付いた時から、それがずっと気がかりだったんだ」
「それは……」

 かのんは、少し言い淀む。
 が、こちらが「嫌なら言わなくていい」と言う前に、意を決したように口を開いた。

「私、その……キラキラネームに見えるっていうか、調子に乗った名前って思われることが多くて。それで昔から、苛められてたの。荒太あらた――昔、かっくんが追い払ってくれた子も、同じ理由で苛めてきてたりして。だから、かっくんに名前を伝える勇気がなかったの」
「そっか」

 それでなんとなくわかった。
 自分の名前を伝えるのが、怖くなったわけか。
 俺は、小さく息を吐いてから、かのんの頭にぽんと手をのせた。

「え、ちょ、かかか、かっくん!?」

 驚いて慌てふためくかのんの目をしっかり見据えて、俺は思っている気持ちを素直に吐き出した。

「別に、自分の名前に負い目を感じる必要なんてない。名前がどうとか、容姿がどうとか、関係ない。俺は、君だったから仲良くなれたと思ってる」

 名前なんて些細な問題だ。
 一生付き合っていくことになる名前は、親が与えた祈りであり、願いだ。でも、それがときにその人の人生を縛る呪いと化してしまうこともある。
 でも。
 たとえそうだとしても、その人のことを大切に思うやつが現れれば、きっとそいつは名前も含めてその人を好きになるだろう。

 だから俺も、かのんと――高嶺乃花という1人の少女と仲良くなりたいと思ったから、たとえどんな名前だって好きになれる。

「だから、別に今後は偽る必要はないよ、乃花のんか
「う、うん……」

 かのん……いや、乃花《のんか》は、なぜだか少し顔を赤くして頷く。
 と、そのとき。

「はは。無事、仲直りできたみたいで幸いなんだけどさ」

 近くにいた少女が、弱々しく言葉を放っていた。
 さっき、俺の正体に気付いていたっぽい子だ。とりあえず、彼女に俺の正体については黙っておくよう伝えないと。

 そんなことを考えていたが、それどころじゃなかった。
 さっきは偶然、有名人を見た興奮? みたいなもので叫んでいたのだろうが、軽く失血のショックで気絶してもいいレベルで出血している。
 だから、こうなることは必然だったのかもしれない。

「流石にちょっと、私がのけ者すぎな、い……?」

 呆れたように呟くのと同時。
 少女の意識がぷつんと途切れ、華奢な身体から力が抜けて、ドサリとその場に倒れ込んでしまった。

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