22 / 135
第二章 弓使いと学校のアイドル編
第22話 始動。高嶺乃花、救出作戦
しおりを挟む
4月の夜の冷たさを肌で感じながら、俺は学校へとひた走る。
やがて学校へ着いた俺は、正門を潜ってすぐのダンジョン入り口までやって来た。
ここまで来て私服だということに気付いたのだが、戻っている余裕はない。もともと、これからダンジョンに突っ込もうとしているのだ。
先生から三時間くらい絞られることは、元々織り込み済みである。
ただ、それ以前に一つ問題があった。
「うわー、先生が見張ってるよ」
俺は、物陰に身を潜めながら、小さく嘆息した。
ダンジョンの入り口の目の前には、2、3人の教師が控えている。
おそらく、ダンジョンに入ろうとする生徒などを止めるためや、ダンジョンから逃げてきた生徒の生存確認をするためだろう。
視線を滑らせると、黒い防護服のようなダボダボの衣装に身を包んだ人間が、十人ほど忙しなく作業をしている。
状況から見て、これからダンジョン内に取り残された生徒達の救出を行う部隊だろう。
見慣れない服装をしているから、ダンジョン運営委員会の関係者だと思われる。
救出のための準備は進んでいるようだが、はっきり言って遅い。緊急事態に際し、情報が錯綜しているのかもしれない。
このペースだと突入まで何分かかるかわかったもんじゃない。
一刻も早く、救出に向かわなければ、手遅れになるかもしれないのだ。
「しかし、どうあのバリケードを越えるかな」
そのまま行っても、確実に止められる。
ここは――一か八か賭に出るしかない!
俺は覚悟を決め、愛用しているゴーグルを取り出し、肩に弓を掛けた。
「――すいません」
見張りの教師の下まで歩いて行った俺は、声をかける。
「はい。なんでしょ――」
振り返った若い女性教師の発言がとまる。
俺の方を見て目を大きく見開き、酸素を求める金魚のように口をパクパクさせていた。
「え、あ……え? あの……うそ!?」
「どうしました、さやか先生。何かあった……って、えぇ!?」
奥にいたガタイのいい教師――磨渋先生(ちなみに、1年の学年主任で、マッシブ先生と呼ばれている)も、こちらにやって来て、同じように驚愕していた。
まあ、無理もない。今の俺は、例のバズりまくった“弓使い”モードなのだから。
「えと……今話題になっている、あの“弓使い”さん、ですよね?」
「どうしてこんなところに?」
2人揃って詰め寄ってくる教師に、俺は告げる。
「ダンジョン運営委員会から特例を受けてやって来ました。今、突入しようとしている方々の代わりに、ダンジョンに入って取り残された生徒達を救出せよとのことですので」
もちろん、清々しいくらいのハッタリである。
黒ずくめの突入部隊も、「そんな命令変更あったか?」と小声で話し合っているのが聞こえた。
ここは、バレる前に押し切ろう。
幸いにも、俺の強さは全国配信されたことでこの場にいるほとんどの人間が周知している。
ダンジョン運営委員会から特例を受けていると言っても、誰しもあまり疑わないだろう。
「とにかく、通してください。事態は一刻を争うんでしょう?」
「は、はい。基本的にはほぼ全ての生徒が戻ってきていますが、15~17階層を攻略中の生徒が、帰還できていない状況です。手遅れになる前に、どうかよろしくお願いします」
さやか先生の言葉に会わせて、マッシブ先生も頭を下げた。
「わかりました!」
俺は勢いよく返事をして、ダンジョンの中に飛び込んだ。
第1階層にある転送陣に飛び乗った。
生徒達が取り残されているのは、15、16、17階層の三つ。
だが、それらの階層は転送陣が消失していて、直接飛ぶことはできない。
故に俺は、14階層に飛んだ。
――。
14階層に飛んだ瞬間、俺は索敵のスキルを起動する。
……ふむ。先生からの報告通り、14階層を攻略中の人間の反応はない。全員避難できていると見て良さそうだ。
それにしても――
「敵のランクが、全体的に上がってるな……」
俺は、思わずそう呟いた。
普通、この階層はランクC~Dのモンスターしかいないのだが、ランクがBに相当するものもちらほら見受けられる。
ダンジョン内全体に異常が起きているようだった。
この程度敵ではないのだが、それでもいちいち相手をしながら突き進むのは、タイムロスになる。ここは、一気に下へ進むとしよう。
俺は索敵スキルで直下に人がいないことと、崩落する危険が無いことをしっかり調べた上で、肩に掛けた弓を手に持った。
弦を強く引き絞ると同時に、光の魔法スキルで起動した矢が形成される。
そのまま地面へ向けて、光の矢を解き放った。
ズゥウウン! という低い音とともに足下の岩盤が崩れ、俺の身体は下の階層に吸い込まれていった。
ここからは――時間との勝負だ。
やがて学校へ着いた俺は、正門を潜ってすぐのダンジョン入り口までやって来た。
ここまで来て私服だということに気付いたのだが、戻っている余裕はない。もともと、これからダンジョンに突っ込もうとしているのだ。
先生から三時間くらい絞られることは、元々織り込み済みである。
ただ、それ以前に一つ問題があった。
「うわー、先生が見張ってるよ」
俺は、物陰に身を潜めながら、小さく嘆息した。
ダンジョンの入り口の目の前には、2、3人の教師が控えている。
おそらく、ダンジョンに入ろうとする生徒などを止めるためや、ダンジョンから逃げてきた生徒の生存確認をするためだろう。
視線を滑らせると、黒い防護服のようなダボダボの衣装に身を包んだ人間が、十人ほど忙しなく作業をしている。
状況から見て、これからダンジョン内に取り残された生徒達の救出を行う部隊だろう。
見慣れない服装をしているから、ダンジョン運営委員会の関係者だと思われる。
救出のための準備は進んでいるようだが、はっきり言って遅い。緊急事態に際し、情報が錯綜しているのかもしれない。
このペースだと突入まで何分かかるかわかったもんじゃない。
一刻も早く、救出に向かわなければ、手遅れになるかもしれないのだ。
「しかし、どうあのバリケードを越えるかな」
そのまま行っても、確実に止められる。
ここは――一か八か賭に出るしかない!
俺は覚悟を決め、愛用しているゴーグルを取り出し、肩に弓を掛けた。
「――すいません」
見張りの教師の下まで歩いて行った俺は、声をかける。
「はい。なんでしょ――」
振り返った若い女性教師の発言がとまる。
俺の方を見て目を大きく見開き、酸素を求める金魚のように口をパクパクさせていた。
「え、あ……え? あの……うそ!?」
「どうしました、さやか先生。何かあった……って、えぇ!?」
奥にいたガタイのいい教師――磨渋先生(ちなみに、1年の学年主任で、マッシブ先生と呼ばれている)も、こちらにやって来て、同じように驚愕していた。
まあ、無理もない。今の俺は、例のバズりまくった“弓使い”モードなのだから。
「えと……今話題になっている、あの“弓使い”さん、ですよね?」
「どうしてこんなところに?」
2人揃って詰め寄ってくる教師に、俺は告げる。
「ダンジョン運営委員会から特例を受けてやって来ました。今、突入しようとしている方々の代わりに、ダンジョンに入って取り残された生徒達を救出せよとのことですので」
もちろん、清々しいくらいのハッタリである。
黒ずくめの突入部隊も、「そんな命令変更あったか?」と小声で話し合っているのが聞こえた。
ここは、バレる前に押し切ろう。
幸いにも、俺の強さは全国配信されたことでこの場にいるほとんどの人間が周知している。
ダンジョン運営委員会から特例を受けていると言っても、誰しもあまり疑わないだろう。
「とにかく、通してください。事態は一刻を争うんでしょう?」
「は、はい。基本的にはほぼ全ての生徒が戻ってきていますが、15~17階層を攻略中の生徒が、帰還できていない状況です。手遅れになる前に、どうかよろしくお願いします」
さやか先生の言葉に会わせて、マッシブ先生も頭を下げた。
「わかりました!」
俺は勢いよく返事をして、ダンジョンの中に飛び込んだ。
第1階層にある転送陣に飛び乗った。
生徒達が取り残されているのは、15、16、17階層の三つ。
だが、それらの階層は転送陣が消失していて、直接飛ぶことはできない。
故に俺は、14階層に飛んだ。
――。
14階層に飛んだ瞬間、俺は索敵のスキルを起動する。
……ふむ。先生からの報告通り、14階層を攻略中の人間の反応はない。全員避難できていると見て良さそうだ。
それにしても――
「敵のランクが、全体的に上がってるな……」
俺は、思わずそう呟いた。
普通、この階層はランクC~Dのモンスターしかいないのだが、ランクがBに相当するものもちらほら見受けられる。
ダンジョン内全体に異常が起きているようだった。
この程度敵ではないのだが、それでもいちいち相手をしながら突き進むのは、タイムロスになる。ここは、一気に下へ進むとしよう。
俺は索敵スキルで直下に人がいないことと、崩落する危険が無いことをしっかり調べた上で、肩に掛けた弓を手に持った。
弦を強く引き絞ると同時に、光の魔法スキルで起動した矢が形成される。
そのまま地面へ向けて、光の矢を解き放った。
ズゥウウン! という低い音とともに足下の岩盤が崩れ、俺の身体は下の階層に吸い込まれていった。
ここからは――時間との勝負だ。
251
お気に入りに追加
596
あなたにおすすめの小説

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?
果 一
ファンタジー
リクスには、最強の姉がいる。
王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。
類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。
『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』
何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。
そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。
「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」
その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。
英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?
これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。
※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる