【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

文字の大きさ
上 下
5 / 135
第一章 最弱最強の弓使い編

第5話 豪気達の所業

しおりを挟む
《三人称視点》

 ――ここで時間は少し遡る。
 翔が38階層の最奥でモンスターを狩っている頃。
 同じく38階層において、Sランクパーティーの【ボーン・クラッシャー】が暴れ回っていた。

「ひゃっはー! 邪魔だどけザコどもぉ!!」

 豪気は狂気に満ちた笑みを浮かべ、迫り来る大量のカマキリ型モンスターを迎え撃つ。
 彼のジョブは“剣士フェンサー”。

 個人ランクAに相当することもあり、両刃の剣を凄まじい速度で振り抜いて、片っ端からカマキリを斬り捨てていく。
が、カマキリ型モンスターは仲間がやられても突撃の勢いを緩めない。

 一匹のカマキリのカマが豪気の頬を掠め、パッと血が迸った。

「クソ! 虫ケラ風情が、調子に乗りやがって!」

 豪気が苛立ち混じりに吐き捨てた、そのときだった。

「きゃははははは! やられてるじゃないの、弱っちいわねぇ」

 哄笑とともに、轟! と炎の塊が駆け抜ける。
 その赤い渦は豪気の周りを飛び回るカマキリの大群をまとめて焼き尽くした。

「っぶねぇ! 俺まで焼き尽くすつもりか瀬奈せな!」
「っさいわね。前に出すぎるあんたが悪いんでしょ? それに、“生還の指輪”があるんだから死んだりしないわよ。せいぜい火傷して、そのブサイクな顔が更にキモくなるくらいじゃない?」

 瀬奈と呼ばれた、赤髪にそばかすが特徴的な少女が、せせら笑いながら答える。
 彼女のジョブは“魔術師マジシャン”。
 高威力の魔法スキルを使った後方支援や殲滅戦を得意とする役職で、個人ランクは豪気に並ぶAだ。

「はぁ! うっせぇこの阿婆擦あばずれ女!」
「なによ! あたしと殺り合う気?」

 たちまち睨み合う二人。
 が、そんな二人の間に割って入る人物がいた。

「やめろテメェ等。こんなとこで無駄な体力使ってんじゃねぇ」

 筋骨隆々で、見るからにレスリングでもやっていそうな大学生くらいの男だった。

「うっせぇよリーダー!」
「そうよ。あんたには関係ないでしょ?」
「あ? 何を寝ぼけたこと言ってやがる。テメェらのくだらないお遊びのせいで、今日の大会に優勝できなきゃ、俺の株が落ちるだろうが。そんときは首かっ斬って死にやがれこの木偶でくの坊どもが」

 額に青筋を浮かべ、リーダー――弥彦やひこは忌々しそうに吐き捨てた。
 彼が、Sランクパーティー【ボーン・クラッシャー】のリーダーにして、個人ランクSの“闘士ファイター”である。

 個人ランクがSということもあり、単騎でドラゴンと対等に渡り合う猛者ではあるが、とにかく性格に難がありすぎる。

 豪気に瀬奈に弥彦。
 その他数名のメンバーも、性格が捻くれている者ばかり。

 そんな、一癖も二癖もあるメンバーしかいないせいで――この一部始終を生中継しているダンジョン攻略動画配信サイト、通称“ダンチューブ”では、絶賛炎上中であった。

《あの女、味方を巻き込む攻撃してんだけど、頭大丈夫か?》
《いつものことだろ。つーか、マジでどいつもこいつも口悪すぎね?》
《それな。リーダーがアレな時点でお里が知れるわ》
《「俺の株が落ちるだろうが」←落ちるほど株なくね?》
《自己中すぎんだろ。この前も、平気で他の冒険者の獲ったアイテム横取りしてたしよぉ》
《マジか。運営はやくBANしろよ》

 全国生中継という形で【ボーン・クラッシャー】の悪評が加速度的に広まっているが、等の本人達は知るよしもない。
 そんな中、彼等は火に油を注ぐ行動に出たのだった。

――。

「ちっ、後ろに別のパーティーが迫ってる。俺達がモンスターの討伐に手こずってる間に、追い上げてきやがったな」
「競輪で言う風よけに使われたってことねぇ。あんなザコにいいように使われたなんて思うと、なんか癪だわ」

 豪気と瀬奈は、後ろを振り返って同時に舌打ちをした。

「落ち着け。やられたならやり返せばいい。それも、百倍返しでな」

 弥彦は豪気を冷たい目で見据え、一言「わかっているな?」と言った。

「へーいへい、わかってるよ」

 豪気は面倒くさそうに返事をした後、無造作に空を見上げた。
 それから、空を優雅に飛んでいる黒い塊を見つけると、迷わず“挑発”のスキルを起動した。
 刹那、ワイバーンの目が赤く輝き、首がぐるんと回転して豪気の方を向く。
 それを確認した豪気は、ニヤリと嗤い……方向転換して後ろから迫ってくるパーティーに近づいた。

「なあ、あんたら。俺達に追いすがるなんて大したもんだな」
「え? あ、ああ。ありがとう」

 パーティーのリーダーと思われる中年の男性が、少し警戒しつつも朗らかに答える。

「ここまで追い込まれるとは思わなかった。すげぇよあんたら。だからさ、お前等には特別に報酬をやるよ」

 そう言って、豪気は懐からレアアイテムの“魂喰の腕輪”を取り出した。

「! そ、そんなレアアイテムを? いいのか?」
「ん? ああ、勘違いさせて悪かったな。俺があげる報酬ってのは――これじゃねぇんだ」
「?」

 豪気が白い歯を見せて笑い、男性が訝しむように眉根をよせたそのとき。

「ゴォアアアアアアアァッ!」

 直情で咆哮が轟き、大気を揺らした。
 そして、牙の生えそろった口の正面に巨大な炎の塊が生まれる。
 怒りに満ちたその瞳は、間違い無く豪気達に向けられていて――

「ば、バカな! ワイバーン!? こちらから攻撃を仕掛けない限り、襲ってくることはないはずなのに――!?」

 男性が狼狽えた瞬間、ワイバーンは巨大な火球を放った。

「おっと、あぶね!」

 豪気は軽々とその場から飛び下がり、その場から離脱する。
 が、不意を突かれた男性のいるパーティーが、満足に防御することなどできるはずもない。
 
「「「「ぐぁあああああああああああ!!」」」」

 灼熱の業火に身を焼かれながら、規定超過のダメージを負ったことでまとめて救護室へ転送されてしまった。

「はっ、ここまでお疲れさまでしたぁ~☆」

 豪気は舌を出し、親指を下に向けて煽る。
 そんな豪気の挑発を受けているワイバーンが豪気に迫るが、今度は素早く壁際に移動し、攻撃を誘った。
 再びワイバーンの口から放たれる灼熱の火球。

 それをギリギリで躱した豪気の背後で、壁が大爆発する。
 辺りがグラグラと揺れ、あちこちで崩落する音が聞こえた。

(ひゅー! やっぱ、Aランクのモンスターの必殺攻撃ともなると、一撃で壁が破壊できるんだなぁ!)

 豪気は、大穴が空いて通れるようになった壁を見ながら、歓喜に打ち震える。
 壁を貫通させたことで、ゴールまでの近道ができるようになった。

「ふん、ザコにしては及第点だ。囮としての価値は認めてやる」
「きゃはは! 無様に逃げ回って滑稽だったわよぉ」
「ああ!? うっせぇよ!」

 弥彦と瀬奈の挑発を受けつつも、豪気は彼等に続いて大穴に入っていった。
 ――と、これだけのことをやらかして、外野が黙っているはずもない。
 ダンチューブの配信チャットは、今や大炎上では収まらないレベルで燃えあがっていた。

《はぁ!? こいつ今ワイバーンにわざと攻撃させたよな!》
《大会のルール上、他参加者への直接攻撃は禁止になってるからって、頭使ったつもりかよ! ただのグリッチじゃねぇか!》
《マジでおもんな。不愉快なんだけど》
《こんなんがSランクパーティーとか、世も末だわ》
《つーか、さっき別の場所で崩落起きたよね? 誰か巻き込まれてたらどうすんだよ》
《今時のガキはマナーも知らんの? 親の顔が見てみたいわ》
《早くこいつらBANしろよ。使えない運営委員会だな!》

 今やヘイトは高まり続け、視聴者のフラストレーションは頂点に達していた。
 そんな中、【ボーン・クラッシャー】は一人の少年と出会う。いや、出会ってしまう。

「豪気、もうワイバーンは用済みだから、片付けるわよ……“ウィンド・ブラスト”!」

 瀬奈は手に持った杖を振るい、風魔法の“ウィンド・ブラスト”を放つ。
 突風の戦鎚がワイバーンの胴体を穿ち、ワイバーンは苦しそうに呻き声を上げた。

「ちっ、わーってるよ! クロス・インパクト!」

 豪気は、落下してくるワイバーンに飛び乗り、剣で腹を切りつけトドメを刺した。
 そして――絶命したワイバーンと共に地面へ降り立った豪気は、不意に自分の名を呼ぶ声を聞いた。

「……豪気?」
「あ?」

 見慣れない少年だった。
 白い髪に、目を覆う大きなゴーグルをかけた、自分と同じぐらいの年齢の少年……いや、少女だろうか?

「テメェ、ナニモンだ。俺様を呼び捨てたぁ、良い度胸だな」

 苛立ち混じりに豪気は吐き捨てる。
 運命は、ただ無慈悲に。あるいはあるべき定めだとでも言うように、二人を引き合わせたのだった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...