【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一

文字の大きさ
上 下
2 / 135
第一章 最弱最強の弓使い編

第2話 学校のアイドル

しおりを挟む
 その日の休み時間。
 トイレへ行こうと廊下に出た俺は、廊下の一角が騒がしいことに気付いた。
 見やれば豪気が、一人の女子生徒に絡んでいた。

「なああんた、ダンジョン攻略とか興味ある?」
「え? わ、私ですか?」
「ああ!」
「ごめんなさい。私……あんまりそういうの、わからなくて」

 女子生徒は、苦笑いしながら一歩下がる。

 ああ、これ完全に迷惑がられているな。
 ていうか、あの子めっちゃ可愛くないか?

 そんな風に思った、そのとき。
 不意に、遠巻きに見守る男子生徒達の会話が聞こえてきた。

「おい、豪気に絡まれてる子誰だ? めっちゃ可愛くね?」
「バカお前知らねぇのかよ! 高嶺乃花たかみねのんかって言や、内部進学組じゃ知らねぇ人はいねぇ山台のアイドルだぞ!」
「山台のアイドル?」
「ああ。去年の“ミス☆山台コンテスト”でミス山台に選ばれた、超絶ウルトラ美少女ださ。しかも親は県議会議員で実家も金持ち! もちろんスポーツ万能で頭脳明晰。あまりにもハイスペックすぎて、ついた二つ名は“高嶺の花”!」

 いや、そのまんまじゃねぇか。
 俺は思わず心の中で突っ込んでしまった。
 名が体を表すとはまさにこのことだな。

 しかし――学園のアイドルか。
 改めて見ても目が離せないくらいの美人だ。
 艶やかな長い金髪に、海のように深い青い瞳。雪も欺く白い肌。
 女性らしい身体のラインを誇りながら、顔にはどこかあどけなさすら感じる可憐さがあり、見る者の心を掴んで離さない。

「しっかし、豪気のヤツも強引に誘ってんな。高嶺さんがダンジョンに興味あるわけねぇのに」
「あー、それはそうかもね。なんというか、あんなお淑やかな人がモンスターを倒す姿は、想像できないかも」

 そんなことを言い合っていた男子生徒だったが、その声が聞こえたのだろう。
 不意に振り返った豪気が、男子生徒達を鋭い瞳で睨みつけた。

「げっ、やっべ聞こえてた! 行くぞ」
「う、うん」

 男子生徒は頬を引きつらせ、一目散に逃げていく。
 豪気と高嶺さんのやり取りを見ていた他の生徒達も、巻き込まれてはかなわないとばかりに、そそくさと立ち去った。

「けっ。外野どもが。見せもんじゃねぇぞ」
「あ、あの豪気……くん? 私、このあと行くところあるから、そろそろ行っちゃダメかな?」
「待て。まだ話は終わってないんだ。あんたがウチのパーティーに参加してくれたら、士気が上がる。特に、今日の夜で行われる“ダンジョン攻略タイムアタック大会”に欠員が出るのは避けてぇんだよ。それだけでペナルティになるからな」
「だったら、私なんかより適任の子がいると思うけど。ほら、ここは豪気くんみたいにダンジョン冒険者がたくさん集まる学校でしょ?」
「へっ、癪だがもう何人も声をかけたさ。けど、どいつもこいつもてんで話にならないザコばかり。むしろ足を引っ張られるだけだ。だったらあんたみたいな守られ役ヒロインがいた方がメンバーの士気が上がんだよ」
「っ……そ、そうなんだ」

 アイツ、自分がめちゃくちゃ失礼なこと言った自覚あんのか?
 いや、無いんだろうな。なんせ、人の顔面にガム吐きかけてくるヤツだもんな。
 
 そんな風に思っていた、そのときだった。
 俺は、一瞬自分の目を疑った。
 
「だから、あんたに協力して欲しいんだ! 悪いようにはしないからさ、なあ!」
 
 ずいっと身を乗り出して、しつこく勧誘する豪気。
 そんな彼の右手にはスマホが握られていて――次の瞬間、あろうことか高嶺さんのスカートの真下に差し込まれた。

「なっ!?」

 コイツ、よりによって盗撮してやがる!
 普通に犯罪だぞ!

 しかも、本人は気付かれていないつもりでやっているみたいだが、高嶺さんは頬を引きつらせて一歩後ずさっていた。
 けれど、それを指摘できないのは、周りにたくさんの人がいるからだろうか。

「くそっ、あのゲス野郎が!」

 なにが、「悪いようにはしない」だ。現在進行形で悪いようにしてるじゃねぇか!
 俺は一瞬にして頭に血が上った。
 なるべくコイツと関わりたくない、とは言ったがこれは見過ごせない。
 
「おい、お前!」

 俺は思わずそう叫んで豪気を問い詰めようとして――思わず立ち止まった。
 普通に話しかけに言っても、スマホをサッと隠された上で、暴言を吐かれるだけだ。それでは、なんか勝ち逃げされたみたいで癪である。
 直接盗撮を指摘したら、大勢の前でそれをバラされる高嶺さんは恥ずかしい思いをするだろう。
 だから、ここは豪気だけ恥ずかしい思いをして貰うように仕向けるのがベストだ。

 俺はポケットからあるものを取り出した。
 それは、プラスチックと弾性の高いゴム紐を組み合わせて作った、掌サイズの“なんちゃって弓矢”である。
 まあ、見た目は弓矢だが実質的にはパチンコだ。

 そのパチンコに、弾の代わりにさっき吐きかけられたガムをセットし、ゆっくりと狙いを定める。
 狙う先は、スマホ本体とスカートの間。
 この角度から僅かに見える、スマホのカメラレンズだ。

 右手の人差し指と中指で弓幹ゆがらを固定し、薬指でゆっくりとゴム紐を引き絞る。
 ゴムが十分に力を貯めたところで、薬指を放し、力を一気に解放した。

「当たれ!」

 パヒュンと風を切る音が鳴り、ガムの弾が一直線に飛び、スマホのレンズにべったりと張り付いた。
 
 これでよし。
 あとは、豪気を退散させるだけだ。
 俺は、何食わぬ顔をして豪気の方へ近寄った。

「なあ、お前」
「っ!」

 声をかけた瞬間、豪気はビクリと肩を振るわせてサッとスマホを引っ込める。
 それから、首がねじ切れんばかりの勢いで俺の方を振り返った。

「はい! ……って、なんだよ。誰かと思ったらクソザコアーチャーくん(爆笑)じゃないか。俺に何の用だよ」
「その子が困ってるだろ? その辺にしといたら?」
「は? 何? お前、ひょっとしてナイト気取り? 女子の前で格好付けたいからって、身の程を弁えた方がいいんじゃねぇの、無能くん?」

 ちっ、相変わらずウザいヤツだ。
 が、この反応は想定内。だからこそ、俺はわざわざスマホのカメラを狙ったのだ。

「わかったら俺等の会話の邪魔すんな――」
「ん? ねぇ、そのスマホ……」
「っ! す、スマホがなんだよ……!」
「いや、カメラのレンズに何かがひっついてるよ」
「は?」

 豪気は眉根をよせて、スマホを確認する。

「あ!? なんじゃこりゃ! ガム!?」
「うわ汚。お前、食べかけのガムをスマホにくっつける趣味あんの? バッチイな」
「あん!? ふざけんなテメェ、嘗めてんのかゴラァ! つーかよ、このガム俺がさっき吐き捨てたヤツだろ! テメェがくっつけたんじゃねぇのかよ!」
「は? 言いがかりはよしてよ。くっつけるにしても、いつくっつけるんだよ。さっき話しかけられてから今まで、一度もお前と接触してないだろうが」
「ぐっ……」

 当然のように俺を疑う豪気だが、まさか弓矢でガムをひっつけたなどとは思うまい。
 言い返せない豪気に、俺は更に追い打ちを掛ける。

「でも、ガムがひっついてると、写真撮ったときにどう映るんだろうね? 試しに撮ってみてもいい? スマホ貸してよ」
「あ? 貸せるわけねぇだろ!」
「ふ~ん、さてはエッチな画像とか保存してんな? それとも、?」
「っ!! あるわけねぇだろ!」

 豪気は顔を真っ赤にして叫び、乱暴にスマホをしまうと、逃げるようにその場を去って行く。
 とりあえず、成敗は完了だな。

 これ以上この場にいる理由もないため、俺も踵を返して立ち去ろうとして――高嶺さんに呼び止められた。

「あ、あの……ありがとうございました」
「ん? ああ、別にお礼を言われる筋合いはないよ。俺はなんもしてないから」
「いえ、助けてくださったじゃないですか。百発百中の弓使いさん」
「……え?」

 俺は一瞬呆気にとられた。
 まさか、俺がガムを飛ばしたのを見ていた……?
 
 が、それを確認する前に、彼女は深くお辞儀をして去って行った。
 そして――一人取り残された俺の耳に休み時間の終了を告げるチャイムが届く。

「……あ! トイレ行ってねぇ!」

 その日。
 俺は、次の休み時間までトイレを我慢する地獄の1時間を過ごすことになった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く

ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。 人里離れた温泉旅館を買い取り。 宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。 世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。 だが主人公はボッチで誰にも告げず。 主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。 宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。 主人公は生き残れるのか。 主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。 タイトルを変更しました

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...