50 / 59
第二章 《友好舞踏会》の騒乱編
第50話 主人公との相対
しおりを挟む
「えぇい!」
フロルは刀を振り抜き、勇者アリスの斬撃を弾き返す。
「っ!」
アリスは後ろに跳躍して距離をとると、剣を正眼に構えた。
「ここは私に任せて。大仕事を終えてきた主様の手は患わせないから」
フロルは、油断なく相手を見据え、刀の柄を握り直す。
「いや。あいつは俺が相手をするよ」
「! そんな……だって、主様は四天王との決戦を終えた直後で」
「あの頑固っ子ちゃんの狙いは俺だろ。だったら俺が相手をするべきだよ」
「で、でも……」
「大丈夫だ。どのみち、組織の頭を張るってことは、責任が付きまとう。クレーマーの対応は、俺自らが引き受けるさ」
俺は、心配そうに表情を曇らせるフロルの肩を、ぽんと叩く。
本当なら、フロルやリーナ達に任せたいところだが、生憎と相手は本作品の主人公。
ここで対応を蔑ろにすれば、今後の活動に支障が出るかも知れない。
何より、王国と敵対する意志はないのだ。
そのことを、はっきりとわかってもらわねばならない。
「お前達は、新規メンバーを連れて先に帰っていてくれ。ここおに残るのは俺だけでいい」
俺は、フロルも含めた全員にそう指示を出す。
「わかったのじゃ」
「うん。先に撤退してる」
リーナとシリカは口々にそう言い、撤退を始める。
「武運を」
フロルもまた刀を収め、俺に小さくお辞儀をしてから身を引いた。
――。
「さて、と……待っていてくれてありがとな」
フロル達がこの場を離れるまで、ご丁寧に待ってくれたアリスに顔を向ける。
「ふん。私とて、貴様等の力が推し量れぬほどバカではない。あのまま押し切っていても、桃色の小娘や、黒い幼女に阻まれて、逆に返り討ちにされていただろう。貴様一人が残ってくれるなら、それまで待った方が、勝率が上がると判断したまでだ」
「なるほど。短気かと思ったが、存外考えてるみたいだな。まあ、俺を倒すこと前提というのは、正直理解できないが。一体、何が目的なんだ?」
俺は、アリスに問う。
アリスは、鋭い眼光をこちらに向けながら答えた。
「王女様を返してもらおう」
「……はぁ?」
俺は、思わず変な声を上げてしまった。
「ちょっと待て。その件は、騎士団長と話して解決してるはずだ。必ずそちらに送り届けると約束したはずだけど?」
「そうだな。確かに、その通りだ」
「じゃあ、なぜ――」
「だが!」
アリスは、カッと目を見開く。
アニメなら、集中線付きのドアップで描かれそうなほど、真に迫る表情で叫んだ。
「団長が納得しても、私は納得していない!!」
「理不尽!?」
俺は、思わず頭を抱えた。
ああ、そうだ。
この主人公はそういうタイプだった。
頑固で直情的。正義感が強く、バカが付くほど真面目だった。
だからこそ、過酷なストーリーの中で、主人公として折れることなく突き進むことができたのかもしれないが。
「あなたの言い分は、まあ不本意だけど理解した。ただ……その言い分を貫き通せるだけの実力があるかどうか」
「なんだと?」
アリスは、不服そうに眉をひそめる。
「それはつまり、私が取るに足らない雑魚だと言いたいのか?」
「そうだ。悪いけど、今のあなたと戦っても勝つのは100%俺だ。俺に敗北したツォーンにあしらわれている時点で、相対評価は既に出ている」
「っ!」
的確な意見だと理解したらしく、アリスは苦々しく顔を歪める。
ツォーンとの決戦前でさえ戦闘力に開きがあるのに、俺はツォーンに勝利したことで膨大な量の経験値をゲットし、レベルアップしている。
倒し切れていないのに、なぜ?
そう思うかもしれないが、この世界には経験値アップには絶対的な二つのルールがある。
それは。
1:相手を倒すことで経験値が入る
2:相手が敗北を認めることで、倒した場合の1/2に相当する経験値が入る
というもの。
《解放の試練》においてリーナと戦った際、大幅にレベルが上昇したのも、彼女が敗北を認めたからに他ならない。
要するに、先の戦闘で経験値が入ったということは。
ツォーンは俺との圧倒的な力量差に恐れおののき、完全な敗北を認めたのだと、逆説的に言うことができるのだ。
「俺とあなたの力量差は、火を見るよりも明らかだ。その上で、この戦いには何のメリットもない。恥じに恥じを塗り重ねるだけだ。できれば、帰ってくれるとありがたいんだけど」
「うるさい! この戦いに意味があるかどうかは、私が決める!」
半ば激高して、アリスが吠えた。
ああ~、マジで俺の話を聞く気ないな、この頑固っ子ちゃんは。
もう何を言っても無駄らしい。
「わかった、好きにしてくれ」
俺は、この無駄な決闘を承諾することにした。
早く、アジトに帰って寝たいんだけど。
フロルは刀を振り抜き、勇者アリスの斬撃を弾き返す。
「っ!」
アリスは後ろに跳躍して距離をとると、剣を正眼に構えた。
「ここは私に任せて。大仕事を終えてきた主様の手は患わせないから」
フロルは、油断なく相手を見据え、刀の柄を握り直す。
「いや。あいつは俺が相手をするよ」
「! そんな……だって、主様は四天王との決戦を終えた直後で」
「あの頑固っ子ちゃんの狙いは俺だろ。だったら俺が相手をするべきだよ」
「で、でも……」
「大丈夫だ。どのみち、組織の頭を張るってことは、責任が付きまとう。クレーマーの対応は、俺自らが引き受けるさ」
俺は、心配そうに表情を曇らせるフロルの肩を、ぽんと叩く。
本当なら、フロルやリーナ達に任せたいところだが、生憎と相手は本作品の主人公。
ここで対応を蔑ろにすれば、今後の活動に支障が出るかも知れない。
何より、王国と敵対する意志はないのだ。
そのことを、はっきりとわかってもらわねばならない。
「お前達は、新規メンバーを連れて先に帰っていてくれ。ここおに残るのは俺だけでいい」
俺は、フロルも含めた全員にそう指示を出す。
「わかったのじゃ」
「うん。先に撤退してる」
リーナとシリカは口々にそう言い、撤退を始める。
「武運を」
フロルもまた刀を収め、俺に小さくお辞儀をしてから身を引いた。
――。
「さて、と……待っていてくれてありがとな」
フロル達がこの場を離れるまで、ご丁寧に待ってくれたアリスに顔を向ける。
「ふん。私とて、貴様等の力が推し量れぬほどバカではない。あのまま押し切っていても、桃色の小娘や、黒い幼女に阻まれて、逆に返り討ちにされていただろう。貴様一人が残ってくれるなら、それまで待った方が、勝率が上がると判断したまでだ」
「なるほど。短気かと思ったが、存外考えてるみたいだな。まあ、俺を倒すこと前提というのは、正直理解できないが。一体、何が目的なんだ?」
俺は、アリスに問う。
アリスは、鋭い眼光をこちらに向けながら答えた。
「王女様を返してもらおう」
「……はぁ?」
俺は、思わず変な声を上げてしまった。
「ちょっと待て。その件は、騎士団長と話して解決してるはずだ。必ずそちらに送り届けると約束したはずだけど?」
「そうだな。確かに、その通りだ」
「じゃあ、なぜ――」
「だが!」
アリスは、カッと目を見開く。
アニメなら、集中線付きのドアップで描かれそうなほど、真に迫る表情で叫んだ。
「団長が納得しても、私は納得していない!!」
「理不尽!?」
俺は、思わず頭を抱えた。
ああ、そうだ。
この主人公はそういうタイプだった。
頑固で直情的。正義感が強く、バカが付くほど真面目だった。
だからこそ、過酷なストーリーの中で、主人公として折れることなく突き進むことができたのかもしれないが。
「あなたの言い分は、まあ不本意だけど理解した。ただ……その言い分を貫き通せるだけの実力があるかどうか」
「なんだと?」
アリスは、不服そうに眉をひそめる。
「それはつまり、私が取るに足らない雑魚だと言いたいのか?」
「そうだ。悪いけど、今のあなたと戦っても勝つのは100%俺だ。俺に敗北したツォーンにあしらわれている時点で、相対評価は既に出ている」
「っ!」
的確な意見だと理解したらしく、アリスは苦々しく顔を歪める。
ツォーンとの決戦前でさえ戦闘力に開きがあるのに、俺はツォーンに勝利したことで膨大な量の経験値をゲットし、レベルアップしている。
倒し切れていないのに、なぜ?
そう思うかもしれないが、この世界には経験値アップには絶対的な二つのルールがある。
それは。
1:相手を倒すことで経験値が入る
2:相手が敗北を認めることで、倒した場合の1/2に相当する経験値が入る
というもの。
《解放の試練》においてリーナと戦った際、大幅にレベルが上昇したのも、彼女が敗北を認めたからに他ならない。
要するに、先の戦闘で経験値が入ったということは。
ツォーンは俺との圧倒的な力量差に恐れおののき、完全な敗北を認めたのだと、逆説的に言うことができるのだ。
「俺とあなたの力量差は、火を見るよりも明らかだ。その上で、この戦いには何のメリットもない。恥じに恥じを塗り重ねるだけだ。できれば、帰ってくれるとありがたいんだけど」
「うるさい! この戦いに意味があるかどうかは、私が決める!」
半ば激高して、アリスが吠えた。
ああ~、マジで俺の話を聞く気ないな、この頑固っ子ちゃんは。
もう何を言っても無駄らしい。
「わかった、好きにしてくれ」
俺は、この無駄な決闘を承諾することにした。
早く、アジトに帰って寝たいんだけど。
65
お気に入りに追加
701
あなたにおすすめの小説

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?
果 一
ファンタジー
リクスには、最強の姉がいる。
王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。
類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。
『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』
何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。
そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。
「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」
その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。
英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?
これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。
※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる